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【書き直し中】好きな子を追いかけたら、着いたのは異世界でした。  作者: 縁側の主
一部 二章 森を護りし一族と亜人の勇者
43/146

41話 『奴隷村』

少々、不愉快な表現が含まれております。

かなり、甘口で書いておりますがお許しください。


あと、8000文字超えてます。

まとめきれませんでした…。すいません。



 ゴトゴト…。ゴトン!!


 痛てぇ!


 悪路を行く馬車の床に転がされて居るためギャップ(段差や石を踏んだ時など)を踏む度叩きつけられ体が痛む。


 拉致されてから1時間位経った。

 詳しくは確認できていないが【魔力の波】で確認した所どこかの山道に居るみたいだ。

 馬車は、御者が1人と車内に2人。荷物はエリンシア姫と俺だけというVIP待遇だった。


 しっかし、コイツら感じ悪いな。

 俺がゴロゴロ床を転がっているのを楽しそうに笑っていやがる。

 エレンシア姫の扱いも調べたが、俺よりも丁重に扱われており快適な人攫いライフを夢見心地で満喫中だった。


 とっても落としてやりたい。

 と言う気持ちをグッと抑えて考える。

 …さぁて、何処に連れて行かれるのやら。


 更に揺られる事、数十分…


 馬車の揺れが『ゴトゴト』から『トコトコ』に変わる。

 目的地付近まで来たのだろう、改めて【魔力の波】を使って確認すると頭に映ったのは何処かの村の様な場所だった。


「ブルルルルルル…」


 馬車が止まると馬が鳴いた。やはりココが目的地らしい。


「おいおい。今日はもう積み荷の連絡は無かったぞ?」

「あぁ。急に荷が出来たんだ。2つだ」

「予定外の荷物だな。中の荷は何だ? 上玉でも入ったか?」

「人族のガキにエルフ族のガキだ。エルフのガキはターゲットだ」

「!? おっ、そいつはいい報告だ。って言うわりにお前は不機嫌じゃねーか」

「あぁ。王都に放ってた部下が2人帰ってこねーんだ。ったく使えねー」

「まぁ、まぁ。久しぶりの王都で羽目でも外してるんだろ。お前も休めよ。

 おい。お前ら積荷降ろしとけ」

「「うえ~い」」


 俺たちを連れてきた男は、別の男と談笑しながら何処かへ行った。

 あの2人はこの人の部下だったのか。いやぁ、不幸な事故でしたね。

 もう二度と帰って来ないですけど。


「おい。お前そのガキを持てよ」

「何でだよ。俺がエルフの女の子だろ」

「あん。それは俺だろ」

「いや、俺だ」


 エリンシア姫様を持つ持たないで喧嘩を人攫いのおっさんどもガキを持つだけなのに興奮しすぎだろ…。

 男の俺でも嫌悪感を持つ反応だった。


「バカどもうっさいんだよ!」

「「あ、姉御」」

「気持ち悪いバカどもだねガキを運ぶだけでそんなに興奮してんじゃないよ。コイツら2人ともアタシが運ぶからお前らは他の片付けとかやっときな」

「「へ、へい」」


 ダカダカと気持ちの悪いおっさん2人は出ていった。


「ったく、気持ちの悪い奴等だ。悪いねアンタ達、運が悪かったと思って諦めてくれよ」


 女戦士っぽい人は俺と姫を両肩に抱き上げると馬車を出た。

 運ばれる際、【魔力の波】を使い周囲状況を確認すると、魔力の波が辺り一面広がり頭の中でマッピングされる。住人の人数、建物の形、村の広さ、人が入っている檻…。


 何と言うかここが何の場所なのか再度理解させられる。


「出してくれ!!」

「お家に帰して」

「…ごふっ。…ひゅ…ひゅ」

「…………」


 魔力で可視化した人達が檻の中で様々なアクションを起こしている。

 開放を訴える人、泣き叫ぶ人、痛めつけられたのか虫の息の人、心が病んでしまった人と様々だ。

 因みに【魔力の波】で見た人達はフルカラーで見える訳ではなく『サーモ化』したような感じで視えるので表情や細かな部分までは分からない。だが、先程も言ったように中には弱っている人や既に虫の息の人も居る。サーモの動きや叫ぶ声は俺の心に突き刺さった。

 今直ぐ助ければ望みがある人も居ると思うが、スマン。助けられそうもない。


 悔しさで口を噛みしめる。

 しかし、その悔しさも直ぐに隠さなければいけない。ここで俺が起きているのがバレれば姫様に危害が及ぶ可能性が高い。更に姫様が何処かに連れ去られる様な事が起こればエルフ族と人族の戦争も不可避だ。なので俺はこの場から何事も無かった事にして姫様をジャングルポケットにお連れする。それが最優先事項だ。


 出来上がったマップで何となくの脱出方法と経路を頭に描く。

 どうせならこの施設を潰せる位まで追い込めれば良いんだけど…。


 このまま運良く建物の扉も開かないかな~。


 実は、【魔力の波】だが中性子の様に建物の中を通り抜ける事は出来ないのだ。どちらかと言えば音波に近い。だから、扉が開いていれば中まで網羅出来るのだ…ん? ラッキー、建物の扉を開けて何人か出てきた。


「わー」

「また新しい…どれい?」

「しょうひんだろ」

()はん、()はん」


「…」


 恐ろしいものを見てしまった。

 俺と同じ位の歳の子やそれ以下の年齢の子が俺たちを見るなり騒ぎ出したのだ。


「アンタ等いい子にしてな。これは買い手が付いてる商品だからアンタ等のおもちゃじゃないよ。その辺で遊んでな」

「「「はーい」」」「あーい」


 子供達は、走っていくと檻の中にいる人を棒で突付いて遊んでいた。

 当然、檻の中の人はされるがままだった。いや、抵抗した人もいたが大人が出てきて棒でボコボコに殴っていた。


 あれは無いわ…。


 先程、『村』と言ったのは廃村がアジトになっているのでない。

 老若男女が普通に生活している。まさに『村』なのだ。

 普通の村と違うのは、生業が『農業』から『奴隷市場』と変わっている事だ。だから、子供達は罪悪感など抱かずに自然と奴隷は家で飼って(・・・)いる家畜と同じ扱いをするのだ。

 さしずめここは、『奴隷村』っていう所だろう。当然、ここに倫理観などは無く、何かが崩壊している場所だった。


「…うっ」


 あまりのショックに吐き気を催すがグッと堪える。

 もうあまりここに居たくないが『もう少しの我慢だ』と、自分に言い聞かせた。


「うん? 起きたのか」


 女戦士が一瞬気づい様な素振りを見せたが、俺が狸寝入り+気配を薄くすると何事も無かったように歩き出してくれた。


 ふー。セーフ…。


「これが、例のやつか?」


 お爺さんの声がする。


「あぁ、そうらしいね。

 村長。まだ便は間に合うかい?」

「…あの方に先程お聞きした。なんでもエルフは特別急ぎらしいから出荷を急いで欲しいのだと。お得意様だ仕方あるまい」


 この爺さん、どうやら村の村長らしい。

 しかも、俺たちを連れてきた男とはちょっと組織が違うのか?


「えぇ。よっぽどこの娘を何処かにやりたいみたいね」

「ふむ。まぁ、それ以上は儂等にはどうでもいい話じゃな。どれ、荷車の手配を始めようか、それまでは…」


 村長の爺さんは建物の扉を開けると女戦士が中に入った。

 すかさず【魔力の波】発動。どうやらここは捕まえた奴隷を入れておく専用の施設のようだ……遺跡か何かを改造したみたいだ。


「ここへ入れておけ」

「もうじきお迎えが来るからいい子にしてな」


 地下室の檻が無造作に並ぶ部屋。その一箇所に姫様と俺は放り込まれた。床がひんやりしているのは地下だからだろう。


 村長の爺さんと女戦士は地下牢から外へと出ていき。


 --カチャリ


 鍵を掛けた。


 よし。これで動ける。

 セティを出して縄の拘束具を切ってもらった。


 長時間、腕を拘束されていたので体が痛い。硬直したって感じだった。

 メンテナスにストレッチしていると、


「……うっうーん。どこよここ?」


 姫様は床の寒さに目を覚ましたらしい。

 頭を抑えているのは、薬のせいかもしれない。

 もう少し寝ててほしかった。これが素直な考えだったが、起きたものはしょうがない。


「こっ…!?」

「しー」


 思いっきり叫ぼうとした姫様の口を抑えると小声で静かに出来るか確認をした。コクコク頭を揺らす姫様に笑顔を向け、ゆっくりと抑えた手を離す。


「……ここはどこ?」


 小声で話す姫様にアクアメシウマギャグを渡す。

 コクコクと水を飲み干した姫様。それを見てとりあえず一安心。

 体に残っていた毒素はこれで完全に消えた筈。食べたものに遅効性の毒が盛られていたとしてもこれで大丈夫だろう。

 俺は、端折りながらも今までの内容を話す事にした。


 ・・・


「そういう状況なの。助けは? 助けは来るの?」


 明らかに動揺している姫様。不安からか顔色は真っ青だった。


 まぁ、正確な歳は知らないけど(※エルフに歳を聞くのは求婚の合図だから絶対聞かない!!)まだ子供だからな。でも、嘘も付けない。


「助けは来ませんが、僕がなんとかします」

「貴方が? まだ子供でしょ」


 お前が言うな。 今この言葉が凄く言いたい。

 俺は、檻から出ると部屋を出ようとする。


「あれ? どうやって…」


 バッカスに合鍵を作ってもらった。

 なーに、鍵穴に合わせて土を固めてもらえば誰でも出来ますから。


「私も連れて行ってよ」


 はっきり言うと姫様は待っていて欲しい。…邪魔だから。


「ちょっと偵察に出るだけですよ。待っていてもらっても…」


 どうせ俺のドッペル君1号(バッカス作)を置いていくつもりなので、見張りが来ても触られなければ大丈夫。後は姫様が適当に寝たフリしててくれれば、チャチャッとやって帰ってくるつもりだ。

 見張りが来る前に終わると思うけどね。


 だが、このお転婆姫なら…


「嫌よ。私も連れていきなさい」


 って、言うと思った。


「どうしても?」

「どうしても」


「…」

「…」


 有耶無耶にして行こうと思ったら姫様が大きく息を吸い込みはじめた。コイツ…。


「ちょちょちょ。分かった分かりましたよ」


 誰も得しない行動なのに、この人マジでやるからな。

 その辺のガキより質が悪い。


「姫様はこちらへ、バッカス。頼む…」

「……しょうがないのう」


 俺が引き下がったのがよっぽど嬉しかったのか、勝ち誇った顔をする姫様。マジで大人しくしとけよ…。


 バッカスが指を鳴らすと姫様のドッペル君が俺とは反対を向いた形で出来上がった。


「初めて作ったからのう。あんまり近づかれるとバレるぞ」

「どれどれ…」


 バッカスの言葉に姫様が自分のドッペルを見に行った。と、思ったら顔を真赤にして無言で帰ってきた。


 --バシッ!!


 アイタ!? え? 何で叩いたし。


「アンタ。私をどういう目で見てるわけ?」

「は?」

「はっ、じゃないわ。あの人形よ」


 ドッペル君……を指差して睨んできた。こっちからでは特に何がどうなっているのかは分からない。だが、姫様の体から魔力が赤くキラキラしながら漏れていた。

(あっ、この人感情が溢れるとその色の魔力が粒子になって漏れるんですよ。私は勝手にこの現象を『ペンライト現象』って呼んでますけどね)


「何?」

「いや…。

 ドッペル君はバッカスの主観ですけど…」


 気になるので見に行こうとしたら、思いっきり腕を掴まれた。


「行かなくて良いわ」


 えぇ…。めっちゃ気になる~。

 やきもきした気持ちになったが、近寄ることは許されなかった。


「ほっほ。会心の出来じゃろ?」


 何でそんなにドヤ顔なの? どうなっているのかめっちゃ気になる。

 因みに俺のドッペル君は微妙に似てないブサイク君だったけどな。

 まぁ、どうでも良いけど。


「バッカスに講義する手前、僕も一応確認しておかないと…」

「行かなくてい・い・わ」


 腕を抓られた。 理不尽!!



 ・・・



「で、どこに行くのよ」


 姫様は俺を後ろから覗き込んで聞いてきた。


「この村の本当のボスに会いに行くんですよ。その後、2人で脱出しましょう」


 恐らく村長の爺さんはあくまで(・・・・)この村の村長なんだろう。恐らくここは奴隷を保管する為の中継地点『デポ』なのだ。で、この村の役割はデポの管理と配送先の手配。すると、見えてくるのは別で供給元が居るはずだ。それが『あの方』なんだろう。

 言い方は名探偵をパク…リスペクトしている訳じゃねーぞ。バーロー。


「このまま、出る訳に行かないわ」


 ここで捕まっている人を指しているのだろう。


「それは容認出来ません。ジャングルポケットに戻り、叔父さんから軍を動かしてもらいます」

「それじゃ…」

「えぇ。助からない人も出るでしょう」

「だからそれが…っ」


 俺は準備終わったアイテムを壁に叩きつけていた。

『ドンッ』という音と共に壁にはくぼみが出来る。

 姫様はその音と衝撃に驚き言葉を失ったのだ。


「そんな事、100も承知ですよ…。今ので外には気づかれました行きますよ」


 使った精霊は、カズハ、マーリーンとアクアの3人。

 光と闇を調整しながら水蒸気を体に纏う。すると、あら不思議。

 光の屈折率を調整し周りから不可視となるのだ。

 前の世界のSFを魔法と言うか精霊の力を借りて再現してみたのだ。(幼少期実家の庭やソフィ様との脱出で検証済み)

 全く見えなくなるのは良いのだが敵味方関係なしに不可視になるので、手を繋いだりしないと危険だ。


「さて、これでOKだ」

「イッセイ。何処に行った? 何が起こっているの?」


 姫様は初体験のため戸惑っている様だ。と言っても姿が見えないので声だけを頼りに読み取っている。


「まぁ、僕からも姫様が見えないので手を繋ぎましょう」

「うひゃぁ…」

「な!? 何です? 敵ですか? 罠ですか?」

「い、いゃ…何でも……ない…です(手、握られた…)」

「えーっと…」


 最後の方がよく聞こえなかったんですが。

 しかも、姫様 俺が手に触れると驚いて引っ込めやがった。

 やべぇ。ロストしそう。


「姫。もう時間がありません。手を繋げないならここで留守番しててください」

「お、おおお、驚いただけです。置いていったら大声出すからね」


 何という理不尽な奴だ。獅子身中の虫とはこういう奴を言うのだろうか?


「はぁ、じゃあ。鉄格子の扉に手を置いてください」

「お、おおお、置いたぞ」


 俺はゆっくりと鉄格子に手を置くと柔らかいものに触れた。


「あっ…」


 そして、姫の声が出たので握ると向こうも手を握り返してきた。

 よし。第一関門突破。


 俺は、内心ため息を付いた。

 すると、そのタイミングを待っていたかのように入り口の扉が乱暴に開けられた。


「何だ!? 今の音は調べろ。エルフの娘は無事か? 最悪、人族の小僧は死んでていいがエルフは生かせ」

「「「はっ」」」


 おいおい。俺は死んでも良いのかよ…。

 俺と姫様は階段の下で適当に息を殺して隠れていた。

 俺たちに気づかずにここの村人かな? ゾロゾロと入ってきた。


「大丈夫なの?」

「シッ」


 不安なのか姫様の手の握りが強くなってきた。


「おい。ガキどもは寝んねしてるぞ」

「一応、中も確認しろ…って、鍵が合わねえじゃねぇか」


 おっさん共が鉄格子でモタモタしている合間に俺と姫は外へと急ぐ。

 鍵穴の形状をこっそり変えておきました。

 いやー。流石、バッカスパイセンマジリスペクト~。


 外に繋がる扉をこっそり閉めると当然、鍵は再加工。

 鍵穴は埋めておきました。(ついでに土壁で防音加工済み)


 時間は更に稼げるだろう。

 そして、そして。更におまけ。


 さっき、壁に打ち込んだモノを起動する。

 マーリーンとアクアの幻影+幻惑コンボ+じわじわ広がる。

 この効果は、自分の心理状態に作用して見たいもの見せてくれる優れ技だ。性欲にまみれたい人はそういう夢を見るし、誰かに追われる夢を見たりと、人それぞれだ。奴隷の皆さんも夢を見るとと思うが良い夢を見てくれることを期待しよう。

 ボスのところに着く頃にはこの村は装置の効果に包まれているだろう。


「では、行きましょう」


 姫の手を引いて遠回りして貴族の館みたいな建物に入る。

 ここが、最初に馬車が着いて偉そうな奴等が入っていった場所だ。

 建物の裏から入る。人が居てもここからなら気絶させて方が早いだろう。数人、1人で行動している人は寝かせて片付けて(仕舞って)おいた。

 階段をのぼり2Fに上がると、とある部屋の前に姫様を運ぶので揉めてたロリコンのおっさんA・Bが立っていた。どうやら番をさせられている様だ。持っている魔石に下で使った力を封印したので、足元に投げておく。


 後は、物陰で数分待っていれば良いだろう。


「アイツラは?」


 姫様が小声でつぶやく。さっきの話から姫様は警戒している様だ。

 疲れるからそんなに気を張らなくてもいいと思う。

 ま、ボーッとしてるよりはマシか…


「大丈夫です。彼等は今は味方ですから。」

「どういう事?」

「先程、足元に投げた魔石には下で使った『気持ちよくなる』魔力が込められているんですよ。しかも今回は僕たちがボスに視えるように細工してあります」


 こういう時、精霊が居ると楽だ。

 催眠効果を付与したいって言っただけで、魔力を調合してくれるのだ。だから、


「こう命令するんです。おい、ボスのところへ案内してくれ」

「…了解です。ボス」


 ボスがボスの場所を聞く。矛盾しているが、目の前を歩くロリコンおっさんは目が虚ろで涎を垂らして歩いている。

 昔、酩酊寸前のおっさんが前に進もうとして、目の前にある駅の看板に向かって頭を何度も頭を打ち付けていた事を思い出す。

 今風に言うならゾンビが歩いているみたいだ。

 ヨタヨタした足取りのおっさんAとBは、ふらふらしながら先頭を歩く。

 その後を俺が先頭でその後ろをエリーが俺の服を掴みながら警戒して付いてきた。


 ヨタヨタが遅くて5分も掛かったが、この村の本当のボスのところへと案内された。



 ・・・


 --ドンドンドン!!


「…ボス。お客人ですよ」


 返事がない。


「……ボス?」


 --キィ…。


 おっさんAが扉に触れるとあっさりと扉が開いた。

 意識が朦朧としているから仕方ないが、モタモタしすぎだろ!


 おっさんを押しのけ部屋に入る。


 …ちっ。中には誰も居ない。逃げられたか。


 この騒ぎに気づくとは…。なかなかやるな。

 黒幕は相当な警戒心の持ち主のようだ。

 机を探ってみるが証拠になりそうな物は持ち出されていた。


「…『ボス』は逃げたようです。ボス」


 虚ろな目をして俺に報告を上げてくるおっさんA。


 いや。見たから知ってるし。


 と、言っても操っている最中の彼等の知性はあんまり高くない。

 まぁ、受けごたえしてくれるだけでも大したもんか・・・。


「やられたな…。既に逃げられた」

「じゃのう。魔術にも精通しておるようじゃ。そっちの痕跡も綺麗に消されておるわ」


 俺の言葉にバッカスも意見を重ねてくる。

 と言うかいつの間に出てきたんだ?


「何かあったの?」


 こっちから召喚していないのに勝手に出てくるのは珍しい。


「いや…。勘違いなら良いんじゃ…が」

「バッカス!」

「ホワーーッ、何じゃ。爺の耳の近くで大声出したら逝っちまうだろうが…」


 いやいや、ボーッとして話しかけても反応なかったから既に死んだのかと思ったっての。

 しかし、何か考え事をしていたようだったが…。


 と、今はそれどころでは無い。

 頭を切り替えておっさんA、Bに指示を出す。


「じゃあ、残ってる幹部の皆を呼んでくれない?」

「…はい。ボス」


 おっさんAとBはのっそりと部屋を出ていった。


 …もうチョット早く動けるようにお薬改良しよっと。

 まだ、部屋から出ていっていないおっさんA,Bを見ながらそう思った。


 さて、時間もありそうだしおっさん共が戻ってくるまでに部屋に残っている情報でも集めますか。




 ・・・



「ボス。連れてきました~」


 おせぇ……。

 部屋はすっかり片付いて、姫様と俺はうたた寝して待っていた。

 と、言うか姫様は横で寝息を立てている。


 因みに収穫は、資料の中に入っていた『クリスタル』だった。

 前にマーリーンと契約した時に使ったクリスタルと同じ物に見える。

 もしも、そうならまた新しい精霊と混合魔法が使えるようになるのだろう。


 クリスタルを見ていると、やっと(・・・)おっさんA,Bが戻ってきた。連れてきたのは村長と思しき爺さんと俺達を運んだと思われる女戦士だった。


「ほいほい。入ってもいいよ」

「…お逃げにならず、まだいらしたのですか? って、お前は!?」


 連れてこられた爺さんは俺たちを見て驚いた声を出した。

 爺さんの後ろ、女戦士も口を開く。


「ア、アンタ達…。なるほど嫌な気配がしたけど納得だよ」


 村長の爺さんは憤慨しており女戦士は諦めている様だった。

 普通に考えれば子供の俺たちが生きていてもそんなに驚異では無いのだが、姫を狙っていただけあって狼狽えている。

 だから知っている事を洗いざらい話して貰おうか。


「あなた方に聞きたいことがあります」

「‥な、何を…じゃ。ワシ等は何も知らんぞ」


 この期に及んで白々しい。

 こういう往生際の悪い態度を取る人にはいつも腹立たしさを感じる。


「……何でエルフの皇族の身柄を狙っているですか?」

「!? しらん。ワシは何も知らんぞ!!」


 素直に話すとは思っていなかったが、仕方ない。

 家には白をきる人に対して、吐かせるのが楽しみな娘が居るからね。

 せいぜい楽しむと良いよ。


 パチンと指を鳴らすと村長のお爺さんは目を虚ろにさせた。





イメージは、戦争時にあった収容キャンプをイメージしておりますが必要以上に衛生面は書かないように配慮してあります。

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