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【書き直し中】好きな子を追いかけたら、着いたのは異世界でした。  作者: 縁側の主
一部 二章 森を護りし一族と亜人の勇者
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40話 世界樹の麓

 馬車に揺られ旅を続けること1週間。俺達は、世界樹の麓にある街まで来ていた。


「くぁーー。や~っと着いた。お前たちもよく頑張ってくれたな」

「「ブルルルルルル」」


 今まで馬車を引いてくれていた2頭の馬に労いの言葉を掛ける。

 俺は身体を伸ばしストレッチしたら、体のあちこちから”ボキボキ”と音が鳴った。


「ん~~~~~」


 お尻と背中に鉄板が入っているかのようにガッチガチに凝り固まっていたので、”ミチミチ”と体の筋肉が伸びるのを感じる。痛気持ちいい…

 まぁ、基本的に馬車の中は国王妃とお姫様専用とし、俺と叔父さんはお供の兵士さん2人と交代する形で御者席と徒歩を繰り返して移動していたからなぁ。

 凝り固まるのも仕方がないもんだ。


「…着"い"たの"~?」


 馬車が止まったことで気づいたんだろう。

 エリンシア姫様が馬車から出てくる。


「ぷふー。今日の"ミートキメラはどう"や"って食べる"の"かしら"」


 すっかりハマったのか、馬車から出るなりミートキメラ(ご飯)の心配をしていた。


 事の発端は先日捕まえたミートキメラ。

 エルフ界隈では(出現場所の植物を食べ尽くすモンスターの為)『プラントデビル』と呼ばれており。エルフ界のルールでは見つけ次第、殺して炭にするのが定石とされていたようだ。


 何という勿体ない事を……


 と、言うことで実際に食べるまでのエルフ族の4人は、目の前でミートキメラをモリモリと食す俺と叔父さんを真っ青な顔で気味の悪いモノでも見るような目で見ていた。

 だが、味を覚えた今では…


「皆で食べ尽くしましたからね。また、捕まえないと今晩は食べれませんよ」

「え"ぇ"ー。も"う"食べる"のが無くな"っちゃ"った"の"ー。早く次、捕ま"え"てよ"ーーー」


『ごっちゃんです』って聞こえてきそうな恰幅の良い見た目になった姫さんが野太い声で話す。

 よほど食べたいのか地団駄を踏んで喚いており、地面は”ドシン。ドシン”と地響きが起きている。その振動は地面に生息する生物やモンスターが逃げ出すほどだった。

 止めてください。この世界が割れてしまいます…。


 しかし、初めて肉を食べた4人はあまりの旨さに放心…しながら無心で食べてたもんなぁ。こんなに美味いなんて知らなかったんだろうな。

 目は何処か遠くを見つめつつもフォークを持つ手だけは規則的に動いていた。仮に工場のマッスィーン(マシーン)に『口に料理を運ぶだけのマッスィーン(マシーン)』ってのがあればあんな感じに動くんだろう。


 最もステーキに焼き肉、冷しゃぶ、そして、ハンバーグ。

 ほぼフルに近い食べ方を堪能してもらったのだ、癖にならない訳がない。衣が作れれば揚げ物も挑戦したい。卵はモンスターなどで存在を確認しているので、質のいいパン粉と小麦。それと炭酸水も探したい。


 兎に角、ミートキメラの味を覚えたエルフ族の皆さんは連日ミートキメラを狩ってくる様になり。姫様と兵士さん達は大分こってりとした体型になってしまった。


「エリー。鍛え方が足りないわよ」

「え"ぇ"っ、ごめん"。体力馬鹿の"母様に"だけは言わ"れたく"な"いわ"ー」


 同じものを同じだけ食べて、片方は今まで通りで、

 もう片方は『ごっちゃんです』になっちゃうのか…


 エレンハイム様は、娘である姫さんに向かって、


「ははは。痩せるまで鍛えてやって良いんだよ?」

「ごめん"な"さい"」


 姫さんは、アッサリと謝った。

 と、言うのもエレンハイム様も元冒険者でクラスは6と上級冒険者だったらしい。

 そして、訓練には一切手を抜かない人だった。

 実際に俺は叔父さんの提案もあってこの一週間動きを見てもらったりしたのだ。


 もっとも、内容は本当にスパルタだった。

 どこら辺がと聞かれれば……

 気絶するまで走らせられたり。

 右手と右足、左手と左足をそれぞれロープで結んだ後にモンスターの狩りに行かせられたり。

 登り坂で馬車を馬代わりに引かせられたり。


 なかなかにハードだった。

 叔父さんの頭を使う戦い方とは一風違って、エレンハイム様の教育は心で戦う戦い方を養っているんだとか。どちらにせよ魔道士寄りの姫さんには辛そうな内容だと思った。


 最もその訓練に付いていけた俺をエルフの3人は白い目で見てきたのだが。余裕でしょ。


 こってりした3人を見て頭をひねるエレンハイム様は、『このままだといけないわね。』っと言って姫さんと兵士さんを(半ば強制的に)連れて何処かへ行ってしまった。

 3人が連れて行かれる際、売られていく仔羊の様な目でこっちを見ており目が合った俺はソっと目を逸らした。



 ・・・



 兎に角お目当ての世界樹までは目と鼻の先だ。

 と、言うかたった今着いた街から繋がる【ウッドマウンテン】と呼ばれる自然のダンジョンを通過すれば、エルフの里まで行ける。

『後はこの街で適当に過ごしてれば良いから』と、エレンハイム様から言われたのだが、適当にと言っても何も思いつかなかったので叔父さんと話して街では自由時間とする事にした。


 入場するには手続きが必要なのだが、この街は取り分けて特殊だった。通常門の下で入場の手続きを取ればそのまま入れる事が多いのだが、ここは違った。

 まず、第一の門を潜るとそこは天井の無い円形の広場だった。当然奥にも門があって今は閉まっている。

 中央に厳重な囲いのついた建物があり受付の兵士さんが身を乗り出してこちらを睨んでいた。


「ネクスト〜」


 どっかの国の入国審査の様に適当に手招きしてくるが俺を見る目は鋭い。

 先程、旅をしてきた兵士さんの片方に入国の手続きの際はこの『木札』を出してくれと言われている。花のような形で加工された札のようだが、札というより彫刻品に近い。こんなの見せて大丈夫かよって思うくらい場違いな芸術品だった。


 一歩踏み出し広場に出ると無数の殺気に囲まれた。

 感じる視線の先(上)を見ると弓を構えた兵士さん達がスタンバっていた。と、言っても威嚇しているだけの様でこちらも警戒しつつ受付の兵士さんに木札を見せる。

 すると俺と木札を2、3回見返し、上で殺気立っている兵士さん達に向かって合図を送っていた。

 俺への警戒心を緩める合図だったのだろう。

 こちらに向けていた殺気が無くなると同時に兵士さん達の気配が一斉に消えた


「大変失礼した。まさか『国賓』でいらっしゃったとは……」


 こっちが恐縮してしまう程、低姿勢になった兵士さん。

 見せた札が『国賓』を示すアイテムだったらしく、先程と180°打って変わった丁寧な対応を取ってくれている。

 街の中に入ったら違う人に引き継いで貰い宿まで連れていってもらえる旨を伝えられた。


「イッセイ様。数々のご無礼をお許しを我らの街の『ジャングルシティ』にようこそ」

「ありがとうございます!!」


 お礼を言って引き継いだ人と叔父さんを待つ。

 すると、入場門の方から。


「貴様、怪しい人相だな」

「待て…ワシは」

「怪しい奴めひっ捕らえろ!」

「イッセイ…イッセイ…!」


 叔父さんはトラブルに巻き込まれていた。

 先程受けた歓迎ムードが台無しだった。



 ・・・



 その後、無事に保護した叔父さんを連れて宿に送り届けてもらった。叔父さんは不貞腐れたのか部屋で休むと言って出てこないので、俺だけ街に出ることにした。



「うわぁ…。この世の楽園かここは!」



 宿屋の目の前の展望台から街を覗くと絶景が広がっていた。

 世界樹と相対する様に崖に建てられたこの町は緑と調和するように配置され一種のリゾート地のよう、そしてそこから下降に広がる森が【ウッドマウンテン】で、少し霞んで見えるが目の前に堂々とそびえ立つ世界樹の存在感が半端なかった。

 流石は世界樹の(ふもと)の街、恐れ入った。


 街を歩いてみても地面は木でできたタイルが敷き詰められており、建物もレンガでは無く木で出来た四角いレンガの様な部材で建てられていた。


 木でできたレンガか…ウッドレンガかな?


 街の人も富裕層的な人が多いのか、王国でも割と地位の高い人の格好が目立ち紳士的な服装をしている人達が多かった。(変態的な意味では、ないです。)


 見渡す限り人族はほとんど居ない。入場があれだけ頑丈な警備であれば入るだけでも苦労しそうだ。

 ただ、全く居ないわけではない。少なくてもガブリエル国以外の人は俺の目には珍しく映った。


 だが、どこの商人さんもやってる事は、一緒だね。

 地元の商人相手に熱を持って交渉(バトル)していた。


 住民はやはり、多いのは獣人や昆虫みたいな種族、それに樹木みたいな種族が多かった。

 更にビックリしたのはエルフが軽装で闊歩していた所だ。

 人族に見つかればものの数秒で拉致される事から武器を手放さないエルフが多い。それが巷では普通なのだが、この街では武器を携帯しているのは兵士さん位なもので、一般市民のエルフは軽装で安全で自由に動く事が出来るようだった。


 露店を覗くと珍しい物が多かった。

 金銀で加工された装飾品とかはあまりない。

 どちらかというと民芸品だ木で作った籠や魚を噛ったクマの置物など一見すれば呆れそうな物だった。だが、品物から妙に魔力を感じる物が多かったのだ。


「すいません。これ、何ですか?」


 試しに目の前にあったカゴを手に定員さんに聞いてみた。


「これかい? これは中に入ってるものの鮮度を保つアイテムだよ。まぁ、鮮度って言っても……分かんないか」


 何と魔道具だった様だ。


 しかも、鮮度を保つだと!?

 これがあれば、肉や野草など鮮度が命のものも持ち運べるではないか。


「いえ、知っています。これに入れておけば魚を持って遠くまで行けるって事ですね」

「おぉー。そうだよ賢いな坊主」


 店員のおじさんが褒めてくれた。

 これ、機能によっては欲しいな…。


「おじさん。こんな物って売ってますか……」



 ・・・



 俺は、ホクホク顔で街を歩いていた。

 何というか先程買った魔道具屋さんのおかげで今後やることが増えそうなのだ色々新しいことが出来そうだ。


「ふふふっ…ん?」


 魔道具を抱え宿に戻ろうとしたのだが、目の前にお姫様が居た。

 何を見ているかと思えば、肉料理屋のお店を物陰から覗いている。

 まだ、トレーニングの最中なのか他の人は見かけない。因みに姫の体型は戻っている。(まるで漫画みたいだぁ)


 本人は隠れているつもりなのだろうが、それは店の中の人に対してであり。店の前でコソコソしているのは逆に目立つんだよなぁ…。


「エリンシアひ…」

「お父さんかお母さんは一緒じゃないの?」


 姫様に声を掛けようとしたが俺より先に声を掛けた人が居た。

 シルクハットにタキシード。頭から角が出ていて目は左右対称だが、人間のコメカミの辺りに付いている。服装は紳士だが目はギラついていてどこか怪しげな雰囲気をまとった。クワガタみたいな姿の腹がちょっと出たおっさんだった。


 年取った…◯面ライダーみたいだ。


 明らかに怪しいが少し様子を見てみる事にする。


「母様は今頃兵士の2人を鍛えていると思うわ、父様は屋敷で跡継ぎを作ってると思うわ…」

「ず、随分元気なお父さんとお母さんだね……。」


 意外とエルフ族ってファンキーというかヒッピーというかやりたいことを実直でやっているだな。俺と◯面ライダーのおじさんは同じ意見だったらしく苦笑いする。

 しかし、おじさんは直ぐに動いた。


「…じゃあ。今君は一人なわけだ?」


 キラリと光った鋭い目から微弱な殺気を感知する。

 この辺は人間と一緒なのか欲望が出ると気配が変わる。例えば、力づくで何かしようと考えている場合は、大抵殺気が出る。という感じだ。


 所詮、チンピラレベルだけどね。こういう奴等は群れをなして行動するので、魔力で周辺を探索する。すると、やはり既に3人位がスタンバッていた。

 このおっさんは声掛け役で集まっている他のやつが攫い役なんだろう。

 今は、おっさんの合図を待っているのか一定の距離を離れて待機している様だ。


「まぁ、そうですが止めておいたほうが良いですよ」

「な、何の話かな?」

「私を何処に連れて行こうと言うのですか?」


 媚びるわけでも怯えるわけでもない。フラットに話をする姫様にたじろぐ年取った◯面ライダーのおじさん。流石、姫さん。この程度の殺気では動じない。


 そろそろ潮時なので出ていこうとしたが、おじさんは諦めなかった。


「美味しい店があるから教えてあげようか?」


 完全に捨て身技である。今どきそんな手に引っかかる子供は居るのだろうか?


「本当!! 是非連れて行って」


 --ガクッ。

 どうやらここにアホの子が居たらしい。


「ちょっと待った!!」


 俺はアホの子とおじさんの間に割って入った。


「何だお前は!!?」


 当然、おじさんは俺に警戒する。

 なので、予め考えていた言い訳を言う。


「僕は、お嬢様の従者です」


 場に白けた空気が広がるが仕方ない。

 って、言うかアホ姫お前まで変な顔すんな。大体お前が変な奴に付いていかなければこんな事言わなくて良いんだよ!!


「なんでしたらここで大声を挙げても宜しいのですが、おぉ…」

「分かった。分かったよ」


 年の取った◯面ライダーのおじさんは、俺の行動を抑制しようと口を封じてきた。

 チラチラ辺りを見回しているのは、付いてきてると思われている取り巻き達に合図を送っているのだろう。

 残念だが囲もうとしていた人達3人は既に眠って貰ってる。さっき、こっそり夢の中に行ってもらった。


「じゃあ、こっちだ」


 納得しないおじさんは渋々先頭を歩いていった。

 姫さんはおじさんの後を疑いもせずに付いていこうとするので腕をつかんだ。


「姫。一体何をやっているんですか?」

「何って? 虫人のおじさんがご飯を奢ってくれるって」


 はぁ? マジで信じてんの?

 どう考えったて詐欺紛いだって言うのにこの人何を言っているんだろうか?


 正直、俺はほっておいて帰ろうかと思った。

 だが、一応(・・)クライアントの関係者なので、無下には出来ないと思いとどまったのだ。


「…あの。考え直しませんか?」

「大丈夫。大丈夫。虫人は嘘つかないから」


 何そのインディアン嘘つかないみたいな言い方。


「ほら。イッセイ行くよーー!!」


 ダッシュでおじさんに付いていった姫さんにため息を付きながら追いかけていった。



 ・・・



 オジサンが案内してくれた店は高級なお店に見えた。

 なにせ、結構人が居る通りにあったし、店もめちゃくちゃ綺麗だ。


 辺りを警戒するおじさんに続いて俺たちも中に入る。すると直ぐに違和感に気づいた。


 ここはおじさんの息が掛かっているお店なんだろう。

 おじさんが通った後で俺たちを見る店員の態度が少し怪しかった。


 値踏みされた感が半端なかった。

 そして、案内された部屋が怪しい。狭い部屋で、周りは鏡張りだった。

 個室にしては落ち着かない。と、言うよりは周囲からは視線を感じる。


 少し食事をするとおじさんが、


「ちょっと席を外すからユックリしててくれ」


 と、言ってこの場を去った。

 おじさんが部屋を出ると同時に見られている気配が濃くなった。


「美味しー」


 どうやら、敵の腹の中に入ってしまった様だが、直ぐに殺される事はなさそうだ。

 しかし、この人は大物なんだな…。出された料理を堂々と美味そうに食べていた。

 俺も怪しまれない程度には食事をしたが、何となく舌がビリビリした。


 あっ、これ毒入ってるわ。恐らく睡眠効果か麻痺系だろう。

 俺はペンダントの効果で毒は効かなくしている。


 俺が食べ物の毒を吟味している内に姫さんが食べ終わった。


「はぁぁー。色々満足したわ。お腹いっぱいだしね。ふぁぁ~。なんだか眠くなってきたね…カクン」


 おい、おい、おいおい。速攻効いてんじゃん!


 椅子に座り頭だけ前に倒して眠ってしまった。

 まずい。俺も今は効いたフリをしないと怪しまれる。


「う、うーーーん…」


 俺は出来るだけ自然に見えるようにテーブルの上で寝たふりをした。


 --どたどたどた…。


 マジ寝している姫とは違い、寝たフリを決めた俺は薄目を開けて一部始終を見ていた。◯面ライダーのオジサンが仕切る中、屈強な男たちが4~5人やってきて俺達を運び出そうとする。


「おい。そのガキは念の為弱らせておけ」


 クワガタのオジサンが叫んでいた。

 従者だし、商品価値が無かったんだな。と理解した。 


 --ドガッ!!


「ぐっ!! なんだ。このガキ結構硬いぞ」


 腹を蹴ってきたやつがぼやいていた。

 特に何もしてないんですけどね…。


「何遊んでんだ。早く縛って運べ」

「うぃ~っす」


 その後、馬車に乗せられ彼等の拠点へと連れて行かれた。


宜しければ、マイリスト登録、感想、評価をお願いします。


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