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29話 謎のゴブリン肉

「ギュエエエエエエエエエエエエエエエ!!」


 俺が投げたナイフがマザーゴブリンに突き刺さった。

 そして、あの複数の声の重なった断末魔が聞こえてくる。

 マザーゴブリンが苦しそうに藻掻いていた。連動して藻掻く触手がウネウネと気持ち悪い。

 暫くするとその動きも弱くなり触手も地面に落ちると動かなくなった。


「殺ったのかな?」

「がはは。まぁ、強い気配はまだ残っておるし、生きておる可能性はあるな」


 マザーゴブリンの下で輝き続ける魔法陣。

 そのせい(存在)…かは分からない。で、生きているのか、死んでいるのか判断が難しい。それにモンスターは死ぬと存在が霞となって消えるのだが、件のモンスターは消えずに存在が残っていた。


「うーーーん。触手なんかは細くなっているのでそのうち消えそうですが、今の所消えてないってのが益々怪しいですね…」


 プロメテとニ人で唸っていると、


「では、今のうちにこの場を片付けましょう。ここは些か不潔です…」

「そうだね…。僕もここに居たくないからアクアを手伝うよ」


 鼻を布で縛って隠したアクアといつの間にか戻ってきたセティ。

 きっちり風の力で自分を防御していた。


 確かに…。

 辺りを見渡すと、ゴブリンの死体、死体、死体、死体。

 ここは地獄の何丁目ですか? って、俺も聞きたくなる位気味の悪い場所になっている。よくよく考えれば、ここの死体って全部残ってるよね…。


 これも魔法陣の影響か?


 マーリーンとカズハにも手伝って貰おうとしたら、ニ人には臭いから行きたくないと断られた。まぁ、仕方ないか。

 

「ウォータードロップ」

「ソニックウェーブ」


 ニ人は早々にフロアに転がるゴブリンを片付けに行った。

 通路から放り出すと死体は霞に戻っていく。


「皆。怪我とかしてない? 大丈夫ですか?」

「…イッセイ。きゅ、急にどうした…? ワ、ワシ等が…あんな雑魚共に…遅れを取ると、…お、おぇ。…お、思う…たか? うおぉぉ…ぇえ」


 青い顔をしたバッカスが俺の言葉に反応していた。


 そう、お爺さんの事が心配だったんだよ…完全に使いもんにならなくなってるじゃねーか。


「がはは。イッセイ歯応えが無さすぎて、一寸手を抜いて戦っていたくらいだ」

「あー。いや。女性陣にならって傷ついていたら治療しようと思ってね」

「「全く必要ない(…のう。ウプッ)」」


 二日酔いで死にかけているバッカスを見ながら不安しかよぎらなかった。


「さて、残るあいつですが…!?」


 残ったマザーゴブリンの死体から家宝のナイフを回収しようとした所。


 --ブシュー!!


 マザーゴブリンから怪しげな煙が吹き出し、その体を包み込んだ。



 ・・・


 少し待ってみても一向に煙が止む気配が無く寧ろこの部屋全体に広がり始めていた。

 埒が明かないと判断した俺はやむおえず精霊の力を借りることにした。


「…セティさん。お願いします」

「はいはい~。…私の体の一部である皆、私に力を貸して……」


 セティの魔法によって発生した風はまたたく間に激しい風に変わり柱となってマザーゴブリンの周りに出ている煙を散らす。


「「「「おぉー」」」」


 セティがこちらを向いて一礼すると、そのパフォーマンスに合わせて一瞬でスッカリ消えた煙を見て一同が歓声を上げる。


「おや?」


 そのスッカリと消えた霧の跡には本来あるべきマザーゴブリンの姿は無く、そこには床に描かれた魔方陣とマザーゴブリンだったと思われる物の謎の塊と緑色の謎の液体と、


 …宙に浮いている剣があった。


 俺は宙に浮く剣を指差す。

 剣の長さが3mはありそうな大きな黒いバスターソード蒼白い(あおじろい)波動を発現(?)させながらそこにいた。

 特に動くことも無く、そこに存在している。が、正しい…のか? 『フワフワ』と、浮いていてよくあるRPGのゲット前のアイテムみたいな演習になっていた。


「…あれはどうすれば良いと思います?」


 黒い剣に指を指して皆に意見を聞いてみるが、精霊の皆からは返答は無かった。


 え? シカト…。いや、皆はあの黒い剣から目を離せないみたいだ。

 仕方がない自分で考えるか…。えぇっと、まずは我が家の家宝のナイフを探すか。


 さてナイフはどこ行ったのだろう?

 取り敢えず、浮かんでる剣の近くの床を探す。這いつくばって探しているのだが、床は所々ベトベトしている。

 更には、謎の塊が『ピクピク』動くし、謎の液体は変な臭いがする。

 はっきり言って気分は最悪だ。


「何を探しているんだ?」

「あっ、家宝のナイフです。勝手に探すんでお構いなく」


 『何か』から話しかけられたが、それどころではない。

 俺は、家宝のナイフを探すのに一生懸命だ。投げた軌道、刺さった角度、落ちたであろう位置を計算しその辺りを探していた。

 って、いくら探しても見つからない。


 …これってヤバいんじゃないか? 初代からの家宝でしょ。

 俺は血の気が引いていくのを感じた。


「お、おい…」

「ちょっと、静かにしててもらえます? こっちは忙しいので」

「お、おう…」


 …!? ま、まさか。


 俺は、『ピクピク』と時々動く怪しい塊を見る。

 長方形にきっちりと整形された物だが、突き破ろうと時々ピクピク動く。


 うげぇ…。


 俺がイメージしたのは、こいつの中(・・・・・)にナイフが居るんじゃないか? そして、それを取るためにコイツに俺は手を突っ込む羽目になるのか…


 手を伸ばすけど、動く度に引っ込めてしまう。

 無くしたなんて事になれば父上の悲しむ顔をするのは容易に想像出来る。

 いや、悲しい顔で済めばいい…。下手すると勘当されるかもしれない。

 いや、勘当なら冒険者に成ればいい。だが、処刑されるかもしれん…。


 それは困る。

 だから、俺は必死になって探していた。


 触りたくもない謎の肉に手を突っ込む。その前にこれ大丈夫か?

 クンクン臭いを嗅ぐのはやはり習性なのだろうか? 臭くても嗅がずにはいられない。何と言うか無臭だった。これが、ゴブリンの臭いと言われると正直戸惑う。


 次は触ってみる。微妙に動きがあるので警戒する。

 指先でツンツンしてみると、『ビクッ』っと反応があった。


 俺も警戒して指を離す。プルン。プルン。と少し跳ねただけで形は元に戻った…。

 その後も、2~3回指で触ってみた後に指を突き刺す。


 何となく薄くなっている場所があったためそこから突いたのだ。


 すると、ビンゴ!!

 薄かった場所は簡単に貫通し奥へと入っていった。

 どうも肉の接合点だったらしく意外と規則的に貫通し、穴は順調に作れていた。


「良し…。こんなもんか」


 取り敢えず確認はOK。指で簡単に確認出来る場所は弄ってみた。

 次は腕を入れてみる。やはり指と違って太くなる分中を調べるにも時間が掛かる。

 こんにゃくの様に弾力が有るくせに、奥に進むに連れカップラーメンの麺の様なものが引っ絡まってきた。そして、やたらと奥の方からキュウキュウ吸い付いてくる感じで、ドンドン奥に吸われていく。その際、所々がザラザラしていて妙に生暖かかった…。


「う”っ…くっ…」


 狭いくせにザラザラしてて手が痛え。ゴムの中を推し進めている感じだった。


 俺は手をツッコみナイフを探す。本来こんな所に手をツッコんでは危険だ。

 ナイフが手に突き刺さるかも知れないからな。(皆、刃物を探す時中の見えない箱に手をツッコんじゃだめだ。)


「あのぉ…」


 イラッ!


 冷静じゃない、焦っている。こういう時の発言は気をつけた方が良い。

 俺が前に住んでいた世界のお偉いさん達も追い詰められた時、決まって口にしなくていい余計なことを言っていたもんだ。


「うっさいな!! 何!? 今。すっ、ごい忙しいんですけど!! こっちは家宝のナイフを探してて…ね!!」

「い、いや…ワシが、そ…そのナイフだ…一応」


 ふーん。そうなんだ。プロメテ辺りが適当に俺をからかってるのかな?


「プロメテ…。ゴメンな。お前の悪戯に付き合ってる暇はないんだ。後で相手してあげるからチョット待ってて…」

「なんで俺なんだ? 俺はここにいるぞ。って言うか何で悪戯っていうと俺にだけ言うんだ?」


 背後から聞こえてくるプロメテの声。バッカス達と一緒の場所に居た。要はさっきと同じ場所に居るって事だ。

 コチラを向ける顔が何だか悲しそうな顔だった。


 コチラをジッと見つめたままのプロメテからそっと視線を外らす。まだ視線を感じるが俺の良心が気にしているだけだろう。シカトだシカト。平常心だ。

 

 …はぁ、後でちゃんと謝んなきゃな。


 ふむ、ならこの声は誰だ?


「お前は、モンスターの肉を相手に何をやってるんだ?」


 声は正面から。あれ?

 顔を上げてみると俺のすぐ傍まで寄ってきていた宙に浮く剣がいた。


「ぎやああああ。呪われる。」


 この気持ち悪い肉から手を引き抜こうとしたが、先程も言ったとおり全く抜けない。右手を箱にツッコんだままバタバタ振り眼の前の剣に向かって牽制する。


「おい。待て何が呪われるだ。お前ワシが誰だか知らないのか?」

「えっ、いや。マザーゴブリンに取り付いていた。魔剣?」

「マザー・・・あぁ、あの豚か。違う俺は魔剣じゃない。寧ろ逆だ」


 魔剣の逆 = 剣魔? 剣の魔物か!?


「剣の魔物!! 皆気を付けろ。こいつがゴブリンの変質の正体みたいだ」

「お前は馬鹿なの? 薬やってんの? どうして文字を引っくり返すんだよ。普通、属性を逆にするだろ?」


 そうなのか? 妙に強い魔力を感じるし、口調も聖剣っぽくないし、見た目が聖剣ぽくない。


「嘘だ。僕が知っている聖剣はもっと神々しいし、喋らない」

「お前がどの世界のどの聖剣を指しているのかは知らんが、ワシは元からこう言う性格だ。文句があるならワシを掴んでみろ。お前がもしも俺の思っている人間なら俺の力を発揮出来るはずだ」


 ほら来た。俺知ってるんだぜ。

 大抵こう言う事を言う奴は旨い話をして人を騙すんだ。

 やれ【力が欲しいか?】とか、【お前の本当の姿を見せてやる】とか、【俺の力を分けてやる】とか、【守備力が255になる変わりに混乱したり】、【255回戦闘しないと呪いが解けなかったり】兎に角、嘘くさくて話が上手く出来ていてるもんだ。


 気をつけろみんな。これを買えば数年で元が取れますってのはバイヤーが自分の会社の事を言ってるだけで、相手の事なんて知らねーよ。ってのが本音だぜ。

 本当に儲かるなら人に言わねーよ。バーカバーカ。


 っと、話が逸れたな。でもって、


「そう云う、手口なんでしょ?」

「はぁ? 何でワシがお前をあの豚にしなきゃいけないんだ? って言うか別に何にも旨い話なんてしてねーじゃねーか。…はぁダメだな。これじゃあ堂々巡りだ。おい、精霊共お前らがこのバカに話をして説得しろ」

「はぁ、何で精霊の皆にたの…「「「「「「ははぁ。」」」」」」うぇぇ!?」


  皆の方を向くと6人とも空飛ぶ呪いの剣に向かって土下座をしていた。


お読み頂きましてありがとうございます。


表現が一部間違って伝わる可能性がございますが、あくまで肉塊に手をツッコんだお話です。

仮に別の物をイメージされた方は恐らくお疲れの様ですので、そういうお店に行くことをオススメします。


あくまで、15金の小説ですので誤解の無きようよろしくお願いいたします。

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