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139話 父の教え

 --ジャララララ

 ブシュ…。


 --ジャララララ

 ザシュ…。


 俺を囲んで一斉に掛かってくる地底の兵士やモンスター共を蹂躙する。

 右手に具現化させた剣。腕を振ると剣は腕の軌道に沿って動くので敵に浴びせる。


 元々は俺を殺そうとしていたアンデットモンスター。

 その一撃を弾き返し、追撃を掛けたら奴は高台へと逃げた。

 流石は父様をベースとしているだけはある…。自分の旗色が悪いと悟ると直ぐに場を変える。

 それで、距離が離れれば怨嗟の呪いを掛けてくるのだ。遠距離攻撃と近距離攻撃の使い分けが上手い。敵としては厄介だ。最もその攻撃が効けば、だが。


 俺は、涼しい顔で呪いを追い打ちを狙っていく。

 これもヴィシュと魂合したお陰だ。

 ヴィシュのお陰で呪いに対する耐性が付いたのだ。


 俺に呪いが効かないと分かるとアンデットモンスターは雄叫びを上げた。耳の中を虫が『ガサゴソ』這いずり回っている様な気味の悪い呪いの言葉で凄く耳障りだった。

 こんな事は無駄だと思いながらアンデットモンスターの距離を詰めようとしたが、白目を剥きヨダレを垂らしながら半狂乱して襲いかかってくる冒険者やモンスターが一斉に俺に襲いかかってきた。


 要は質より量で来た訳だ。

 で、今に至る訳である。


 鎖が擦れた様な音をさせてモンスターを蹂躙していたのは、右手に具現化された剣。ヴィルだ。

 半透明化し魔力の剣となって、具現化させる度に鎖を擦った音が鳴る。(任意)

 敵に気付かれると思い消音モードをお願いしたが、「ロマンの分かんねえ奴だな。チ○チ○付いてんのか!?」って何故か叱られた。チ○チ○って…。

 戦いにロマンもクソも無いと思うが、折角異世界に来ていて現地民(?)より現実的な考えの自分にもショックだった。

 こんな風にふざけてはいるが、ヴィルの威力はもちろん。聖剣としての効果も残っている。

 一々音が鳴るのは五月蝿いし、敵が反応するのは面倒くさいが出し入れ自由となった事、俺の魔力の一部になった事はメリットとしてデカイ。(形もある程度自由に変えられる)


 更にもう一つの力が追加された。


(あのクソ聖剣だけじゃねえって所を見せてやろうぜ。)


 ヴィルを仕舞って、両手を翳す(かざ(す))

 手から生みでたダチョウの卵位の魔力の塊を空中に放ち右手を握ると魔力の玉は俺の行動に反応して空で弾けた。

 降り注ぐ魔力の塊が冒険者やモンスター達に多数刺さっていった。

 一瞬にして俺の周りには死体の山が築かれた。


 もう一つの力とは、『もう一人の俺』ことヴィシュと言う。名前は呼びにくいからと言う事で金○様が命名した。

 こいつも俺の魔力の一部となったため。俺は自在に能力を使えるようになった。


 あの時、俺の意識の中で行われた儀式とは、


 魂合(こんごう) と言う儀式らしい。


 詳しい事はわからないが、俺達は魂を融合する事でそれぞれの力を使えるようになった。


(ふむ。このままだと拉致があかないな。イッセイ俺を地面に突き立てろ。)

(おっ。俺の力も貸してやるぞ。)


 ヴィルとヴィシュが頭の中で声を上げた。

 黒く吹き出た衣を纏い、言われたとおりにヴィルを具現化し地面に突き刺す。


 −−ジャララララ

 −−ジャッ


 黒い衣と同化したヴィルが地面に突き刺さり。ヴィルが地面に沈んでいく。

 俺の魔力を注ぐため柏手を打って地面を叩く。某錬金術師と行動が似ているとかツッコんではいけない。


「ギョアアアアアア」


 アンデットモンスターが断末魔をあげる。

 俺の魔力によって地面から突き出る無数の槍と杭に変化したヴィルが、地面からアンデットモンスターを串刺しにし、そのまま貼り付けにしていた。手、足、そして体と各パーツ毎に突き刺さり宙に浮いた。

 その姿は塗装待ちのプラモデルみたいになっていた。


(これで逃げられねえぜ。)


 頭の中で自慢げに語るヴィル。少女が一生懸命胸を張っている姿が送られてきた。


(っ)


 その想像を直ぐにかき消すとアンデットモンスターの近くに行くことにした。

 横槍が入って危険かと思ったがメイヤード様はブラフマをボールズはエリーとベネがそれぞれ食い止めてくれていた。


 止めを刺そう。と、アンデットモンスターに近付く。

 既に虫の息のアンデットモンスターがヴィルから逃れようと微妙に動きながら怨嗟を吐き続けていた。


「家族の顔で何時までも叫ぶな!」


 俺がヴィルを具現化し叩き斬ろうとした所。


「…止めろ」


 アンデットモンスターから父様の声がした。

 まだ俺を惑わそうとしているのか!


 怒りと悲しみが混じり兎に角目の前の敵を殺したかったが、俺を見る目が生気に満ちていた。


「…と、父様!?」


 俺の手からヴィルが消えていた。

 特に気を抜いた訳では無かったが、自然と消えた事を考えると、どうやら彼女(・・)には分かっていたのかもしれない。


「イッセイ。お前はこんなにも立派に成長していたのだな…」


 時折、苦しむ姿が惨たらしい。


「父様。意識が戻られたのなら…「無理だ…」」


 俺が何を言おうとしたのか理解した父様が口を挟みキッパリと否定した。


「スマぬ…な。だが、ワシは既に生ける屍だ。今意識が戻ったのはヴィル殿から一時的に魔力を貰っているからだ。もう暫くすれば再びお前に刃を向けるだろう…」


 父様は顔を俯かせ「スマン」と、一言呟いた。

 俺は、俯くしか出来無かった。


 必死にこらえるがこみ上げてくる感情をコントロール出来ない。父様の事を見ている事が出来なかった。

 しかし、父様はそれを許してくれなかった。


「顔を上げろ! シェルバルト家の者が敵を目の前に下を向くな!」


 驚き顔を上げると父様は優しく微笑んでいた。


「ワシはお前に討たれるなら本望だ」


 今度は顔を下げない。俺の顔は涙でグシャグシャだったが父様との約束だ。


「良い顔だ…。お前を止めたのは、ワシを斬れば体に残った家族の皆がより強力な怨嗟を吐くモンスターになり。この世界全部を呪いで覆い尽くす事になるからだ」


 何というリーサルウェポンだろうか、奴らヴィルで斬られた際の保険をかけていやがった。これでは迂闊に倒せない。


「では、どうすれば!」

「先程見せた、魔法を使うのだ…」

「!?」


 先程の魔法とは? ヴィシュの力を使ったアレか…。

 右手の掌に魔力を込める。すると、黒い球体が掌に発生した。


「そう、それだ。その魔法をワシに使え」


 父様にヴィシュの力を見せるとそれを使えと言ってきた。これを使うと父様達を弔うことが出来ない。


「その力は使っちゃだめー!!」


 いつの間にこちらに来ていたのか知らないが、ソフィーが大声を上げた。

 急に声を掛けられてビックリした。


「その力を使ったら本当に消滅してしまうんです。シェルバルト卿お考え直しください」

「姫様!?」


 父様もソフィーが近付いてきた事に驚いた様子だった。


「ぐっ…あまりの時間がない。イッセイ今だ」

「ダメだよイッセイ君。そんな事をしたら一生後悔する事になるよ」


 板挟みになった俺は思考が止まりかけた。

 父様の言い分もソフィーの言い分もどっちも理解出来たからだ。でも、少しだけソフィーの意見が勝った。


 俺は手を下ろしかける。


 しかし、父様はそれを許してくれなかった。


『おおおぉぉぉ』


 父様の体から怨嗟の声が漏れ出す。呪いの言葉だ。

 今は父様が抑えていたはずだが、どう言う事だ!?


「うぅ…」


 ソフィーが苦しみだした。

 俺には効果が薄いがソフィーにはしっかり効いたようだ。


「父様!! 何故このような事を!!?」


 血迷ったのかと思う。

 自分の仕える王国の姫に手をかけるなんてありえない。


「イッセイ、最後の教訓だ。お前は何のために戦っているのだ? そこを理解しなければ悲劇を生むぞ!」


 明らかに父様が呪いのコントロールをしているのが分かった。俺は、咄嗟に魔力を発動させ黒い球体を父様に…いや、アンデットモンスターに向けて放った。


「そうだ…それで良い」

「だ…め……」


 ソフィーが息も絶え絶えになりながら口を開いた。

 まだ、父様を案じてくれている様だ。だが、もう遅い。

 俺の手から離れた魔力は父様に向かって飛んでる。


 それにこれは父様の最後の教訓。俺は全力で取り組む。

 父様の問は『何のために戦うか?』だ…。


 答えは悩むまでもない。

 俺は、ソフィーの為に戦う!!


 魔力の塊は父様を包み込んだ。

 そのタイミングで父様はアンデットモンスターに交互に変わるようになっていた。

 既に限界は近かった様だ。

 アンデットモンスターは塊の中で暴れていた。必死に暴れ外に出ようと藻掻いている。

 確かに手には魔力を撥ね返さんとしているのが伝わってきた。


 俺は右手を握りしめる。こうすると魔力の力を伝達出来るようになり形を変えたり小さくしたり出来るようだ。

 今まさに塊に取り込まれたアンデットモンスターを握りしめる感覚が伝わってくる。


「イッセイ君。止めてお父様でしょ」


 ソフィーが俺の腕にしがみついてくる。これが彼女の優しさだ。

 俺がこれ以上情けなくて済むのはソフィーが近くにいてくれるからかもしれない。


「…ありがとうソフィー。でも、僕がやらないとダメなんだ」


 --ぐぐぐぐっ


 右手に力を込める。

 魔力の塊に包み込まれた父様は最後は笑ってくれた…。

 そして一言。


「姫様。愚臣の愚行死をもって償い致します」

「確かに愚かですが、私の事を思っての事は称賛に値します。シェルバルト卿。ありがとう。」


「イッセイ。シェルバルト領を頼む……」

「父様!」


 父様は俺の魔力に飲み込まれると完全に消滅。

 跡形もなく消え去った。


「父様……。さようなら」


 俺とソフィーは一緒にそのまま外来種共がいる魔法陣へと向かった。



 ・・・


 指揮官クラスのモンスターを倒したことで俺とソフィーの行く手を阻むものは居なかった。

 海が割れた様に地下の兵達やモンスターが道を開けた。


1話づつアップしてます。よろしくお願いします。


一部の最終話で今後の事を書きます。

よろしければそちらも合わせてお読みいただけると幸いです。

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