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131話 目覚め

シャー来いなろー

 あれから、パリピ兵士の話を聞いた。

 シェルバルト領を攻めた理由やその方法だ。

 パリピ兵士がなかなか口を割らない為に少し思い知らせたら渋々話し始めた。


「本当なら冒険者は困ってる人を助けないといけないんじゃないの?」


 ついでに説教もした。

 と言ってもただ恐怖心を植え込みたいだけなので理由なんてどうでもいい。


 --バシン、ババババッ、バン、ブッ…。


「うごごご…」



 ・・・1時間後


 チ、チ、チ、チン。


「………」


 すっかり調教が終わった頃にはパリピ感たっぷりの兵士さんは静かな奴になってしまい、何も喋らなくなってしまった。やりすぎてしまった…。


「剣の勇者さん?」


 俺の声に”ビクッ”っと怯えた反応を返してくる(元)パリピ兵士。

 もはや、抵抗する気力もないって感じだ。


「何でここはこんなになったのか? 教えて貰えます」


 自分は何を言い。何をやっているんだろう。

 体育座りしたまま”カタカタ”震え続けるパリピ兵士。若干白くなっている気がする。

 こんなに追い詰めるつもりは無かったのだが。


「聞いてます?」


 反応が薄いので若干苛立った喋り方をしてしまった。

 だが、パリピ兵士は、


「ううう…何でも話す。もう止めてくれ」


 何年も暗闇に閉じ込められていた人みたいなクネクネして顔や体を隠す行動を取っていた。何ていうか…すまん。


 このままだと俺も病んでしまうので、聞くことを聞いたらとっとと開放しよう。


「あなた達は何を探しているのですか?」

「レ、レジスタンスだ」


 おや。いきなり朗報だ。

 街自体は破壊されているが人はかなり生きている可能性が出てきた。


「次、あなた達はどこの国の兵士ですか?」

「俺達は地底の王国 アーリア王国で集められた兵士だ」

「アーリア王国?」


 はて、聞いたことが無い国が出てきたぞ?


「一番位の高い指揮官は?」

「俺たちの上司は兵士長だ。それ以外は知らんねぇよ。信じてくれ!! 俺達下っ端がそこまで教えられてる訳がねえ。なぁ、もう良いだろ? 助けてくれ」

「分かりました。最後の質問です。ここの領主さん達はどうなりました?」


 1番聞きたくて、耳を塞ぎたい所だ。

 どんな形でもいい生きていてさえくれれば…


 そんな俺の期待いや、希望を込めて言った話だが、自信のある話になったのかパリピ兵士はやけに嬉しそうに話をし始めた。


「あ、あぁ……。そ、それなら俺も参加してたから詳しく話せるぜ。貴族一家は全滅したぜ。」


 俺の表情が凍りついたのを感じた。

 無表情の上に仮面を被ったみたいな感じだ。

 もうこいつの話を聞くのを止めて広場に向かおうかと思ったが、饒舌なってきたこいつが気になることを言い出したのでもう少し聞くことにする。


「貴族連中を中心に馬鹿共が無駄に抵抗してたんでな。兵士長様が街の子供を人質にしてな。女は犯され、男は街の中を引き回した挙げ句見せしめに広場でつるし……へ」


 --ドサリ。


 パリピ兵士の首は胴体と別れて宙を舞っている。俺は無意識の内に持っていた短槍を振っていた。

 サムライ兵士に向かって短槍を投げると一瞬だけ”ビクン”と撥ねた。


 二人を衝動的に殺ってしまったが、目の前の死体共を見ても怒りしか湧いてこない。心的ストレスなどは出ていなさそうだ。むしろ、そんな事より頭の中では『中央広場に行かないと。』それだけが気になっている。


 因みに先程から頭の中で好き勝手騒いでいる声も殺人に対して賛辞などを送ってきているが気にならなくなっていた。



 ・・・


 この街の広場…だった場所にたどり着く。目の前には叩き壊された地面や建物が残っており領内一の美しい街並みの面影は全く無かった。

 逆に街の中心には今まで無かった物『絞首台』(・・・)が建っていた。そして、そこには見覚えのある顔が数名ぶら下がっていた。


「カサリナ…母様。リナ…マリア姉様。それに、ジョシュア兄様……」


 見覚えのある女性が2人とアレン兄様に似た若い男性。恐らくジョシュア兄様だろう。他にも屋敷に仕えてくれた人達が何人かが巻かれた紐の動きに抵抗すること無く揺れている。


 それを見て頬から冷たい涙が流れ、口がカサカサに乾いていくのが分かった。

 ここには絶望しかない。


 そして、一番見たくないものを見てしまった。


「…と、……父様?」


 首だけが台の上に乗せられていた。

 横に付けれられている札によれば、『反逆の領主を見せしめの為さらし首にした。』と書いてある。顔を確かめようと台に近づこうとしたがいつの間にか囲まれていた。


「おいおい。随分かわいいレジスタンスの兵士が居たもんだぜ」

「ウヘヘ。どれオネエさんが可愛がってやろうカシラ?」

「おいっ。この変態カマ野郎をどっかに連れて行け。気味悪くて仕方ねえ」

「良いじゃナイ。ちょっと味見しても減るもんでもナイデショ」

「お前そうやってガキを壊したじゃねーか」


 下品な笑い声がこだまする。ざっと感じた気配は20人。

 ここに誰か来るのを張っていたんだろうが、今はどうでもいい。

 あそこにあるもの()が本当に父様なのかそれが知りたいんだ。


 フラフラと台座に乗せられた頭部に近づく。


「おいおい。俺らは無視だってよ」

「けっ。こんな奴の何が知りたいんだか。っと」


 俺が台座に触れようとした瞬間にオーク位に太った冒険者が台座を蹴った。


 --ボトン


 父様が地面に落ちる。

 ゴロゴロと転がるとこちらを向いた。


 あぁ…。間違いない父様だ。


 拾い上げようとしたが、


 --ゴリィ


 豚が父様の首を踏む。


(殺せ。殺せ…。)


 先程との戦闘(二人の兵士達)から頭の中でずっと響いていた。

 ずっと否定していた言葉だが今は共感すら覚える。結局のところこいつ等の言う通りさっさと殺しておけば良かった。


(なぁに、今からでも遅くねえぜ。目を瞑っていれば後は俺達がやっておく。なぁに辛い時はお互い様だろ?)


 俺にとって都合のいい言葉が並べられ、よりその言葉に耳を傾けてしまう。

 まだだ…。これは悪魔のささやき。耐えることに成功していた。


 のだが…


「こんな首の何が良いんだ?」


「うわぁ~兵士長エグいですね。多分その首子供の関係者ですぜ」

「あぁ~。ってことは貴族の生き残りか……?」


 父様の首を何度も踏みつける豚がいて、ひどく醜い口で何かほざいていた。

 こいつが兵士長か…部下の兵士と何かをネタに喋っているがよく聞こえなくなってきた。


(殺しは任せろ)


 あぁ、そうだな。この声の言う通り後は全て任せればいいか……

 そう思った瞬間にブレーカーが落ちたように頭の中が真っ暗になった。



 ・・・


「ふふふっ…」


「なんだ? こいつ壊れたか?」

「アタシは一向にかまわないワヨ」


「…あはははははは」


「兵士長こいつ壊れましたよ」

「ま、動けば売れるからな。生きているなら問題ない。俺はちょっと奥に戻るから後はお前たちでやっておけ。興味の無いやつも適当に戻って良いぞ」


 一同「「「うぇ~い」」」


 崩れ落ちた俺を見て兵士達が囲むように寄ってきた。

 3人ほど残ったようだな。俺を抑え込んで色々やるためだろう。


 だが、これは今までの俺とは違う俺だ。


「きしし……」

「なに? このコ…!?」


 --ドシュッ


「きししっ」


 もう一人のおれは躊躇する事無く近寄ってきた3人の兵達を八つ裂きにした。

 驚くべきはバッカスなど精霊達の使い所の旨さだ。一瞬で数体の精霊達を発現させる。


「……ちょ…な」「ぐあぁ…」


 兵士達は(ろく)に口も聞けないうちに塵や肉片へと姿を変えた。


「きしししし…どいつもこいつも大したことねーな。あの豚はこれよりマシなのかな…きしししし」


 出会った雑魚(兵士)達を殺しながら豚を探す。

 何匹か雑魚に聞いたら広場の奥の大きな建物に居るらしいので、行ってみるとたしかに豚がいた。何やら報告書らしき物を作っていたようだ。意外に真面目なのか?


 --ギギギッ


「おう。何か用か?」


 手が離せないらしくこちらに振り向きもしない。

 試しにあちら(・・・)側の言葉で話しかけてみる。


「■✕△【□◎●』」

「あぁん? 何を言ってるか分かんね…ぶっ」


 --ブシャ……


 理解出来なかったか…、という事はまだ間に合うって事だな。

 俺にとって価値がなくなったので腕を振り抜いた。豚は首が消え去り血を吹き上げた。

 しかし、言葉を聞き取れなかったと言う理由で振り返るのもどうかと思うが、俺が来た時点で気づけ無いだけ問題だろう。ただのカスだったな。


 しかしこれであいつ(もう一人の俺)の義理は果たしたな。


「クククッ。アハハハ。やっと自由になれたな…うん? 獲物か?」


 外からこの建物に走り込んでくる気配が15~20くらいか?


「ヤロウ!! おい。囲め」

「誰か他の奴も呼んでこい」


 うん? 豚が死んだのがバレてしまったか? 


 恐らく殺した時に吹き出した血が多かったので、匂いとかでバレたのだろう。

 ドタドタと駆け込んできた兵士達がこの部屋を取り囲む。


 ま、囲む事態は別に良いんだけど、この程度の量で俺を捕まえようとは…

 俺様に対して何て舐めた態度だ。…よし。皆殺そう。


「五月蝿いぞ。虫共が」


 俺が打ち出したのはただの魔力の塊だ。もっとも俺が使える魔法で唯一にして最高の魔法だ。


 着弾した瞬間、相手は俺の魔力に存在を喰われていた。


「ヤメロ…やめ」

「グアアアアアアアアアア」


 魔力の塊に飲み込まれた兵士達。俺の魔力は『重力』なので球体の中の層を重くしたり軽くしたりすることで反作用を起こしミリ単位で引っ張り合ったり潰し合ったり動かす事が可能な全自動処刑道具となるのだ。

 黒い球体の中が薄く見えるのがイヤラシイ。中身(・・)が”ブチンブチン”音を立てて千切れていく様子をじっくりと見ることの出来るスグレモノだ。


 …面白い。正に中に入った羽虫共が羽をもがれている様だった。


 ・・・


 もう一人の俺が体を預けてからは片っ端から出会った奴らを殺しまくっていた。

 しかし、出てくる。出てくる。ゴミ共が殺しても殺してもな。だが、情報は持ってない。ただの雑魚共だ。そんな奴ばかり小一時間は経っただろうか? 流石に飽きてきた。


 ここは精霊を使うか。


「バッカス。プロメテ。コイツラは任せて良いか?」

「あぁ。任せるが良いぞ」

「オウ。こんな雑魚でも居ないよりだからな」


 もう一人の俺がよく使っていたのかもしれない。この二人は他の精霊に比べると熟練度が高い。力も与え易かった。


「俺のチカラを与えてやる」


「おぉー。何と禍々しい力だ」

「そうじゃの俺等はこれでも神に等しい者なのじゃが?」


「なんだ? 俺に逆らうのか?」


「い、いやそういう訳では…」

「おう。儂はその力に興味あるぞ」


「そういうことだバッカス。プロメテの様に素直に受け入れろ」


「…ううむ」

「ぬお。何だこの力は!?」


「分かるか? これが新しい主の力だ」


「ぬがああ。この力は…」

「うががががががが」


 俺のチカラを受け入れた2人。黒い煙が地面から吹き出し体に吸収されていく。

 神々しい光を放っていた2人はなかなかどうして俺好みの黒く禍々しい衣装に身を包んだ厳つい奴になった。


「よし。試しに目の前の兵士たちを皆殺しだ」

「おおぉぉぉぉぉ」

「儂等に任せておけモノの数分で片付けてくれる」


 俺の力を受け入れた2人は向かってくる兵士たちに向かっていった。

 なかなかどうして、魔法を駆使して蹂躙していた。

 精霊2人が戦っている間ふと心の奥底にいるもう一人の俺を見ると、俺が用意したゆりかご(拘束具)に揺られて幸せそうに眠っていた。

 因みにコイツには呪いが掛かっている。こいつ自身が願う願いを叶える間は、決して目覚めることの無い呪いだ。

 本人が術者で対象者なので願いさえ叶え続ければ永久機関になるのだ。


 ククッ。お前の望み通り全員殺してやるよ。

 地底も地上もなその後は精霊界、そして神界だ。

1話づつアップしてます。よろしくお願いします。


一部の最終話で今後の事を書きます。

よろしければそちらも合わせてお読みいただけると幸いです。

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