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128話 ソフィーのお願いと有能な部下ですか?

「イッセイ=ル=シェルバルト。面をあげよ」

「はっ。」


 左右のステンドガラスから差し込む光が神々しい。

 そして、左右に立つ騎士の皆さんが槍を地面に打ち付け俺を讃えてくれる。


 ここは王城の謁見の間である。

 スライム討伐した功績を讃えて勲章授与を受けていた。

 俺の他にもソフィー、エリー、ベネも表彰の対象だ。この後、皆も壇上に呼ばれる。

 一応、ビルも授与対象だったが、やろう(・・・)逃げやがった。

 因みに何でか分からないが貴族という貴族が集まっていた。

 更にその他、レイモンドお兄様とカレン姉様もそこに居た。良かった。保護されていたみたいだ。安心したけどこんな状況でなんでこんな事してるんだ? もっと他にやることあるだろ貴族。


 顔を上げると王様(叔父さん)と女王様が俺の前に立ち声を放つ。


「イッセイ=ル=シェルバルト。そなたに王国守護騎士名誉勲章を授ける」

「はっ。ありがとうございます」


 叔父さんの手から俺の胸に勲章が付けられる。


「協力者の者にも後に勲章を授けよう」


 叔父さんが閉幕の言葉を述べると兵士さんがラッパで讃えてくれた。慣れないので恥ずかしい。叔父さんと女王様が俺の背後に立ち肩に手を乗せてきて小声で話す。


「ありがとうイッセイ君。君達が来なければ王都は壊滅していた。詳しくはこの後で」

「ワシからも礼を言うぞ。よく王都を救ってくれた。では、もう良いだろう」


 一応、形式的な形で俺達を表彰してくれる事になった様だ。

 2人からも早く終わらせたい感が口から出ていた。


 だったら何故今やる?


 ・・・


「まったく、あの爺さん何故このタイミングで意味のない勲章の授与式などやらせるのだ・・・。貴族として他にやることがあるだろうが!!」


 部屋を移動するや否や叔父さんは拳を掌にぶつけて、愚痴をこぼした。

 何でも古参の貴族がこういった形式は行わないと士気に影響するとゴリ押して来たそうだ。相手が老舗の貴族でこの王国でも功績を上げている貴族のため皆が従ったそうだ。


「しかし、このタイミングってのが妙に気になりますね」

「まぁな。あの狸の事だからなにか裏はあるんだろう。まぁ今は良い。何度も言うが助かった」

「えぇ。ソフィーにエリーとベネッタも助かったわ」


 頭を下げるトップ2+アレックスさん。

 って、アレックスさんもですか?


「や、止めてください」

「スライムの件も含めてだ。我々も何故か兵を出すのにごたついてな。初動が遅くなったのだよ」


 叔父さんは腕を組み何かを考えるような仕草で言う。


「何はともあれ。被害が大きい商人街。下街には何かしら補助を考えないとね」


 王女様も何か考えていた。

 ここで、ソフィーが手を上げ発言する。


「私の私兵団を作らせてください。既に人員は確保してあります」


 ソフィーの言葉に目を丸くする一同。

 その中に俺が混じっていたのは言うまでもない。


「ソフィア? どうしたの急に」


 女王様が動揺していた。

 そこにベネが割って入る。


「女王様。失礼をソフィア姫は先日城下に入都する前に逃げた下街の人々と生活基盤の安定に務められました。既に城下外にて一つの集落が出来上がりつつあります」


 ベネの報告に再度皆目を丸くした。

『ソフィーいつの間に』皆がそう思っていた事だろう。

 更にベネの報告は続く。


「姫様は、私ともう一名を副官に任命しており。下街の人間を臨時の兵と有志の貴族殿より預かった私兵を持っております。数は500名」

「「「「500!?」」」」


 俺だけじゃない。叔父さん、女王様、アレックスさんも目を剥いていた。

 だって、人数が半端ないんだよ。一個小隊が10人とすれば、50小隊。

 中隊が50名となるため約10中隊持っている計算だ。

 これって、王国でも正規兵は2000人前後しか居なくて、非常勤兵士を合わせても5000は居ない。今回の件でどれだけ減ったか分からない。

 それなのに、王国の全盛期の10分の1の勢力を持った。と、言えばおわかり頂けるだろうか? ソフィーは国を興すつもりなのだろうか? 王家の姫でも乗っ取りとかを疑われるぞ。


「因みにそのもう一人の副官とは?」


 叔父さんが聞いた。それをソフィーが答える。


「ドン・コルニーオ様です」


 −−バタン


 大きな音を立てて倒れたのは、女王様と宰相のアレックスさんだった。叔父さんも若干引きつった顔をしている。


 ドン・コルニーオってどなた? 俺だけが訳が分からないって顔をしていた。あっ、兄様達も分かんねー。って顔をしている。


「ど、どどど。どうしてそうなったの?」


 女王様がかなり取り乱した声を出していた。


「それをこれから説明します」


 ベネが前に出た。


「と、言う訳なんです」

「なるほどな・・・」


 微妙な顔をして口を開いたのは叔父さんだ。


「既に城下の外で仕切っている訳だな」

「はい。コルニーオ卿には、一時的に男爵位を与えて集落の長として統治をお願いしてあります」

「そうか、では仕方がないな」


 叔父さんは女王様を見る。

 女王様は頷いた。



 ・・・・



 早速、叔父さんと俺達の5人はソフィーが作った集落へと出かけた。

 やたらとこういう事には行動の早いのがこの王国の王様である。

 しかし、流石その両親の娘。見事なサラブレッドだった。

 たどり着くや否や叔父さんと俺、エリーは本日三度目の驚きをする事になった。


「町が出来ている・・・」


 公爵家からスライム討伐まで10日あったかどうかで、町が形成されていた。

 主な店は食堂であったり商店だったりだった。他にもギルドの出張所が出来てたり。簡易的な宿屋出来ていたりとある程度の生活基盤が出来つつあった。


 ソフィーとベネが足早にひときわ大きなテントに入っていく。恐らくあそこにコルニーオ卿が居るのだろう。

 テント内から大きな声が上がると中にいた兵士? の格好をした厳つい人達が数名兵士と一緒に出てきた。


「王様。こんな所に来てくださるなんて、ささっ入って入って」


 何とも気さくな厳つい人達。『俺達は誰にも縛られねえ王様にだってフランクにいくぜ。』って感じだ。ここで怒るのは三下なんだろう。

 叔父さんは誘われるがままテントに進んでいった。叔父さんの後に続いて俺達も付いていく。


 厳つい人達が俺を見て、どこのガキだ? って顔をされたが笑顔を返しておいた。

 そうしたら引きつった顔を返してくれた。


「!?」


 テントの中に入るなり顔を引きつった叔父さんが立っていた。

 叔父さんを躱して奥を見て俺も顔がひきつった。


「あの、もう大丈夫ですから」


 ソフィーが王様の様な扱いを受けていた。

 真ん中の椅子に座らせられ周りに居る人がお世話していた。

 ただ、ソフィーはそんなに嬉しそうじゃなかった。


「おぉー。王よ。この様な狭い所にわざわざ起こしいただけれるとは」

「本当にドン・コルオーネ・・・なのか?」

「そうじゃ。ただ、お主等王国の者が恐れた下街のドンは死んだ」

「へ? 何だと」

「今は、姫様に忠誠を誓っておる」

「何故、お主をそこまで変えた?」

「ふむ。今後のことも話したい。王はイケる口か?」


 コルオーネ爺さんは酒を飲むジェスチャーを叔父さんにしたら、叔父さんは指で○を作った。しかも満面の笑みで・・・。更に俺の方を向いて笑顔を見せてきた。


 ・・・はいはい


 あの顔は『黙ってろ』ってのもあるけど、『酒の肴、取ってきて』って、意味合いのほうが強いね。


 仕方ない適当なツマミでも取ってきますかね。



 ・・・


 小一時間ほど森ではしゃいで来た。

 リンさんとモッブさんが居たのでちょっとお喋りしてきたのもあるが、エリーと見つけた森の小屋に行ったりもしてた。

 ソフィーとベネも付いてきたので、4人とユキマルとで行ってきた。ソフィーとユキマルが、随分懐かしそうにしてたな。


 と、いう感じにエンジョイしてテントに戻った。


 テントを開けた瞬間相当酒臭い。匂いだけで酔ってしまいそうだ。そして、中はカオスと化していた。

 数人の人の山とその隣で笑いながら酒を煽っているおっさんと爺さんの二人。チョイチョイ握手してはガブガブと酒を飲んでいた。


 どんだけ飲んでんだ?


 俺達がボーゼンと立ち尽くしていると俺達に気づいたコルニーオさんが、


「おぉー、姫。戻られましたか」


 手を振って迎えてくれた。

 随分懐かれているなぁ〜。


「ちょっと、ツマミを作ってくるから待っててください」


 そう言うと俺は酒臭いテントから逃げるようにして出た。


 さて、何を作ろうか?


 取ってきた素材は、ボア。ニードルベック(鶏肉)。リバークラブ(沢蟹)。あとはキノコ類などなどだ。

 リンさんとモッブさんに聞いて食べられる物を取ってきた。モッブさんがやたら詳しいんだよ。

 何でも生きてたときはサバイバルして食いつないだ時期があるんだとか、話を聞いたら思わず涙がチョチョ切れた。だって、悲惨すぎるんだもん。


 で、生息地や生えてる場所に連れて行って貰ったのだが、やたらとリビングアーマーやワイルドウルフ等に襲われてうっとおしかった。

 モッブさん曰く『ワシ。ちょっとネガティブ系幽霊だからエンカウント率高いかも』って言ってた。


 早く言ってよー。もぉー。




 そうしたら 絶 対 に置いていったのに。




 まぁ、血抜きなんかは手伝ってもらったから良いけどね。えっ、霊体でどうやって捌くんだって? はははっ、モッブさんとリンさんはそのまま生気を吸うんだぜ。そうすると何故か血が枯れてるんだ。何でかは俺も知らん。


 でだ。その生気を抜かれた食材達は血が消えてカラカラになっているが、革を剥ぐと綺麗な肉が出てくる。


 こいつを適当な棒にぶっ刺して・・・

 火を焚き、地面に棒を突き立て、横に棒を流しクランクを付けたら丸焼き機の出来上がり。ボアは丸焼きにする。


 ニードルベックはももと胸、手羽先、レバー、ココロと手頃な大きさに解体し、2つに割ったリバークラブは一緒に鍋へ投入。キノコは別皿でちょっと休憩。これで下ごしらえは完了。後は油を足すだけ。

 なのだが、オリーブオイルなんてのは無いので、適当な動物性油を貰ってきて薬草を突っ込んだ鍋に弱火で火をかける。ちょっと温まって油湯気立ったところで、バッカスの力を使った土のザルに油を通して濾した(こ(した))。これで薬草の香りが写った油が出来上がった。


 下ごしらえした鍋に流し込むと黄色に近いが若干茶色い綺麗な油が鍋に注がれる。


 ポイントは油を入れ過ぎない。最初は肉やリバークラブを焼きたいので、少なすぎず注ぐ。これを更に弱火で温めるとバチバチいい音がしてきた。肉やリバークラブが炒められた音だ。芳ばしい匂いがしてきたら油を徐々に足していく。適当にキノコを投入して温まって来たら。ニオイ消しに適当な薬草をみじん切りにして入れて、即席アヒージョの完成だ。俺の好みはキノコが固くならないのが良いのだが、カリカリに焼いても美味い。


 丸焼きのボアとアヒージョをテント用に分けてソフィー達に渡した。3人はそれ等を持ってテントの中に消えていった。アヒージョでわざと時間を掛けて作ったので、丸焼きも良い感じに焼けている。


 エリーは待ってる間ヨダレが凄かった。


 こんな感じの即席料理は叔父さんやエリー達と旅をした時にツマミを作っていたので慣れている。

 本当なら米や小麦があれば麺作るのだが・・・


 ベネの実家の古代米もアレスさんの所で品種改良中の為、市場に出回るのはまだまだ先だろう。

 サンプルでも良いから貰いたい。


 適当に盛り付けてテントに持っていって貰う。

 残ったのはここで食べちゃおう。


 −−グー。キュルキュル・・・・


 ん? 何だ。腹の音が聞こえてきた戸思ったら俺の後には人だかりができていた。


「うわぁ!? ビックリした」


 いつの間に集まったのか人がどんどん集まってきていた。


「兄ちゃん。美味そうな匂いだな」


 先頭の子供が指をくわえながらそう言った。

 その後、腹の虫の音を鳴らして。


 こうなったらあげない訳にいかないし、後に居る人たちにも分ける必要がある。

 その後、ものの5分で作ったボアの丸焼きと特製アヒージョは空になった。


 はぁーそうなるよな。


 って言うのは、ここが野営地だと言う事。味付きの肉なんて露天にしか無いのだ。そして、避難民にそんな物が買える余裕はない。精々、ボアの丸焼き(血抜き怪しい)やボアの煮込み(アクが出て臭い)とかがメインだろうな。ここは王族の名前で薬草類のクエストでも出すか。

 で、簡単な奴の作り方を教えよう(血抜き等も含めて)。


 そんな事を思っていたらユキマルが近くに来た。

 そして、俺の袖をグイグイ引っ張る。


 うん。一人になれって事か?


 ユキマルは表立っては喋らない。(非公式なのだ)

 俺や数人の事情を知っている人の前でなければ決して口を開かない。それは、契約者の生まれ変わりであるソフィーの前でも一緒だった。


 今は皆も居ないしちょうどいいか。少し離れた木陰に行くとユキマルが、


「鳥から呼び出しだぞ」

「ふーん。って、どうやって連絡取ったんだよ?」

「奴め我に聞こえるようおかしな音を作ったようだ」

「は? 音?」

「何だかザワザワするでなあまり聞きたくないが、ボソボソ声も聞こえる」


 うわー。ミサキさん遂にケータイの走りを作っちゃったかー。

 当然、電話も電波も基地局も無いので遠距離のやり取りは手紙が主だ。

 ある程度近ければ、狼煙や魔法と言った手段も無きにしもあらず。だが、言葉は伝わらない。

 俺も無理に文明を壊したくないし、そもそも電話の原理なんて知らない。

 電波とか言われたって通学の電車内でいきなり変なことを喋りだし、踊ってたおっさんしか思い浮かばなかった。


「ふむ。何でもスライムのコアを解析していたら物凄いことが分かったらしい。だからすぐ来てほしいんだそうだ」


 ふーん。何だろう? 皆に一言言ったら出かけるか。



 テントに顔を出してミサキさんの所に行くことを伝えるとソフィーとベネが一緒に来ることになった。

 エリーはと言うと既にお酒の飲める年齢(未公表)のため、叔父さんとコルオーネさんと一緒に飲んでいた。


 あー。ちょっと表現出来ない位凄い事になってるな・・・。

 よし。置いていこう。


「ミサキさん何でしょうね?」

「うん。何でも急ぎの用らしいよ」

「ふーん。イッセイ君が倒したスライムのコアで何か分かったんでしょ? それって、スライムの生成のしかたとか?」

「その可能性もあるけど、今そんなの急ぐかな?」

「まぁ、行けば分かるんですよね?」

「そうだね。向こうに行ってからのお楽しみにしようか」


 この後、ミサキさんの所で衝撃の話を聞くことになるのだが、この時は想像もつかなかった。

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