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127話 薬の使い方を間違えたんじゃないんですか?

『激 スライムコロリの使用上の注意』

 1つ、決してそのまま投げつけてはいけない。

 1つ、この容器内の成分は非常に濃いので薄めて使う事。


 以上の二点を守ればいい。ねっ、簡単でしょ。



 俺はマニュアルに書いてある内容を声に出して読んだ。

 読み聞かせした相手はビルだ。


「お前・・・・。僕が今読んだマニュアルの内容って把握してたか?」

「さぁ~。俺そんなの見ないで進めるし、インスピレーションを大切にするし~」

「ふざけんな!!!!!!」

「あ~。ウルサイ。ウルサイ」


 --ウジュル、ウジュル。


 何で開幕でこんなにキレているかと言えば理由は簡単。

 このビル(バカ)がミサキさんの説明書を読まずに始まりの泉に向かって『激 スライムコロリ』を原液のママ、投げ入れやがったんだ。


 --ウジュル。ウジュル。


 え? 分裂して増殖しただって? いやいや。逆ですよ。

 イヤネ。かなりの効果はあったんですよ。

 まぁ、もともとスライム専用の猛毒なのでイチコロと言っても過言では無かったですからね。

 実際、スライム共が一瞬もがいたと思うと、そのまま『ジュワー』とか言いながら茶色のヘドロ状に変わっていく姿を見た時は、思わず『オォー』などと声を上げて興奮してしまいましたよ。

「ビルの行動は称賛を受ける」そう思ってました。


 ぶっちゃけ、俺もビルの事を讃えようとした。

 そう思って近づきましたともビルの元にね。


 --ウジュル。ウジュル。


 ウジュル。ウジュル。うっせーな!! 今俺が話ししてんだろ!!


 --ジュル。


 ゴホン。失礼。

 この様な状況になるまでは俺も上手くいったと思っていた。なので、そのへんの話からせねばならないだろう。


 話はミサキさんに会いに行った後から話さねばならない。



 俺はミサキさんの所から戻って直ぐに、ビルの案内でスライムの発生源と思われる『始まりの泉』まで行った。

 色々調査を勧め、スライムが湧き出ている事が分かった為、予想通りそこ(・・)がスライムの発生源だということに気付いた俺達は『激 スライムコロリ』を使う事にした。

 だが、どこに使えばいいか検討もつかない。なにせ、この辺一帯にはスライムの海・・。いや、沼が出来上がり隆起したりしている。ブクブクと音を立てつつまだ、増え続けている様だ。


 ビルが、


「ガブリエル様の石像まで行ってくれ」


 自信満々で言ってきた。


「何か考えがあるのか?」

「まぁ、任せてくれ」


 むぅ。そこまで言うなら信じて行くしかない。・・・ですよね?

 だから俺は何とかスライムのいない所を、安全な足場を探し中心地に進む。

 街灯の上とか、建物の壁とか、とにかく足場になりそうな所を魔力で張り付き全部通った。何とか中心地に着いてその凄さに驚いた。


 −−ウジャ。ウジャ。


 ビルの言うとおりガブリエル様の石像を見てみると現在進行系で石像のあちらこちらからからスライムが生まれていた。石像が持っている壺とか首筋や手首、服の切れ目など穴という穴からだ。

 スライム達が溢れすぎて辺り一面スライムで沈んだ土地みたい日なっている。


「うわぁー。ああやって見ると石像もただのホラー素材にしかならないな・・・。」


 ビルがポツリと呟いた。

 確かに石像の目や口から液体が出るって何か怖い。


「ビル。さっき渡した説明書は見たか?」

「あぁ。任せろバッチリだ」


 そう言ってビルは荷物入れから『激 スライムコロリ』を取り出し。おもむろに中心地に投げ込んだ。


 --ビチビチビチビチ・・・・


 スライムコロリが着弾すると、スライムは一瞬動きを止め。そして、何か引きちぎる音をさせながら一気に茶色のヘドロへと姿を変えていった。

 腐敗臭が漂い始め、茶色くなったスライムは徐々に萎んでいく。


「ビル。やる・・・な」

 ・・・・・ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。


「な、なんだ?」


 --ウジュル。ウジュル。


 ビルを褒めようとした瞬間、地響きが起こった。

 体に感じる強い縦揺れがビリビリと振動していた。

 そして、何かが這いずるような音。


 地響き、石像が壊れる、嫌な音・・・嫌な予感しかしない。


『パキン、パキン。』と、何かが割れるような音がする。と、思ったらガブリエル様の石像にクラックが入り今にも壊れそうな感じになっていた。


「おい。何か可怪しくないか? 何をしたらこうなる?」

「知らねぇよ。説明書通り・・だろ?」

「・・・お前、今なんて言った? 何で間が空いた? それに語尾が「?」で終わってんだ」

「やべぇ。バレた」

「おいっ」


 こいつ。さては取説見てないな。

 俺は急いで取説を見てる。そして、ビルに読んで聞かせてやる。


 それが冒頭で読んだ内容だ。しかも、説明書には続きがあった。ついでにそいつも読んで聞かせてやった。


『この薬、劇薬すぎるの。勘の良いモンスターなら本体を逃がすと思うから絶対薄めて使ってね♡』


 おい。完全にフラグの塊じゃねーか。しかも皆綺麗に実施しているじゃねーか!!

 ビルは見事に説明書(破ってはいけないこと)通りに全て実施した。


 と、言うのが冒頭の出来事だ。

 あっ、もう動いて頂いて良いですよ。



 ・・・・ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ


 先程より強い揺れが起こり、地面が揺れる。

 バキン、バキンと地面が割れる音がする。


 いよいよお出ましの予感。


 --バキン。バキン・・・。


 地面に亀裂を起こしガブリエル像は砕けながら亀裂の中に沈んでいった・・・。

 何となく怒られそうなので、俺は暫く協会にお祈りに行くのをやめることにした。


 地割れが起こりガブリエル像があった場所にポッカリと大穴が空いていた。


 --ジュル。ウジュル。


 パックリと割れた地面から現れたスライムの触手がビタン。ビタン。と、地面に貼り付いた。


 --ウジュル。ウジュル・・・。


 壊れた穴の中からそいつ(・・・)は現れた。

 ゆっくりと本体が顔を出したその姿はスライムの塊ででっかいミートボールみたいだった。


 どうやら地下で『ウジュル。ウジュル。』言ってるのが、このミートボールみたいなスライムだった様だ。


 −−ウジュル。ウジュル。


 しかし、煩いな。何だかウジュウジュしているだけで全く動かない。

 お互いに見つめ合ったまま暫し時間が流れた。


 襲いかかってくるかと思っただけに拍子抜けしてしまった。

 で、ミートボールスライムが地上に現れて何を始めたかというと、触手を伸ばし地面に転がって(?)いる死んだスライムをジュルジュル啜っている。

 結構来る(気持ち悪い)絵面だ。

 このまま、床掃除をお願いしたいところだが、見ていると不愉快だし吐き気もする。それに変に吸収して力を付けられると大変なのでここらで一発当てておきたい。


 ポケットから取り出した弾丸を構えた。しかし、俺の殺気が感じ取られたのか、次の瞬間。


「っ!?」


 スライムの塊の真ん中がパカッと見開き目ん玉が一つパチパチと瞬きした後、ギョロ、ギョロ。左右を見渡すと直ぐにこちらを睨んだ。どうやら殺気に反応する敵のようだ。

 しかし、何処かで見たことがある絵になってしまった。

 妖怪であんな形のやつを見たことがある気がする。


 ・・・たしか、ロリコンに非常に厳しい妖怪だった筈だ。


「な、なんだ!? あのロリコンに厳しそうな奴は!?」


 ビルが慌てた様に叫ぶ。お前は何故そのネタを知っている?

 なんて思っていたが、逃げようとして背中でジタバタされる。


「おい。落ちるから動くな」

「うるさい。あんなヤバイやつ聞いてねぇ。俺は逃げるぞ!!」

「あの程度なら問題ないから暴れるな!! 暴れられたほうが何が起こるかわかんねぇ」

「お前の戦闘を見てないのに信じれるかよ!!」


 こいつ!!


 ビルの言動にイラッとしたが、『グラグラ』と、揺れる足場をバランスを取りつつもロリコンに厳しいスライムに警戒を続ける。

 しかし、名前が長いな・・・ロリコンに厳しいスライム・・・ロリ(コンに厳しいスラ)イムとかで良いか。うん。ロリイムと呼ぼう。

 ロリイムの奴を見ていたら、


 バアオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!


 ロリイムが叫んだ。

 口も無いのにどうやって叫んだのかは考えてはいけない。

 事実として、叫び声と衝撃波がこちらに飛んできた。


「うぉ!」

「くぁああああ」


 俺は両腕で衝撃波等を防いだが、ビルにはキツかった様だ。ふっ飛ばされて少し離れたスライムの死骸の上にボシャンという音とともに落ちた。


「ビル!!」


 返事がない。

 気絶でもしているのかもしれないが、敵も前だし仰向けで浮いてるので取り敢えずはそのままで・・・。

 白目向いてキモい顔をしているから大丈夫死んでない。お約束ってやつだね。



 バオオオオオオオオオオオオオオオオオ


 ロリイムが再度叫ぶとシュルシュルと触手を伸ばしてきた。


 結構早い!!


「アブな!!」


 ブンブンと振り回された触手は俺の体をかすめたが致命傷にはならない。

 だが、かすめた時に付いたスライムが気持ち悪い。


 その後も俺めがけて触手をドンドン飛ばしてくる。なかなか早い速度だ。しかし、単調なので読みやすい。右・左・右・右・左・右・・・。


 触手を躱して本体に近づく。


 シュルシュル。


 警戒しているのか触手が激しく動いていた。


 触手が無尽蔵に飛んでくる。

 オレはそれを躱しながら炎の力を込めた弾を投げる。

 狙うのは真ん中の目ン玉だ。


 ボシュ。ボシュ。


 スライムの体に入ると炎は消え、弾は真ん中まで進まず体の途中で止まってしまう。ちゃっかり目ん玉を何処かに逃していた。あれが本体だって言ってるようなもんだぞ。

 その後も触手を躱しながら弾を投げていたが結果は同じだった。


 もう一度、今度はグングニルを試す。

 魔力を集中させ・・・魔力を集中させられない?

 どころか体も動かなくなってきた。

 体に沢山の付いたスライム共が俺の体をホールドしていた。魔力も吸い取るみたいでグングニル分の魔力も溜めれない。使わなければ減りもしないが。


 んぁ。こんなのどうやって倒せばいいんだ?


 貼り付いたスライムを倒そうとするが上手くいかない。

 ロリイムは、俺が動けないのを見るとシカトして地面の死骸を食べ始めた。

 死体の海に浮かんでいるビルの事もあるので一度撤退を考えたが、いつの間にかプロメテが出てきていた。


「久しぶりにオレに殺らせてくれないか?」

「うん?」


 ボキボキと手を鳴らしているプロメテ。

 姿はこの前見た神格化した衣を着たリアル系の姿だ。

 プリメテがロリイムを睨みつけていた。

 ロリイムも殺気に反応し、プロメテをジッと見つめていた。


 プロメテの顔は相変わらずの凶悪なのだが、何処か楽しそうな顔をしている。

 どうやら強敵(玩具)に出会った事に、テンションが上っていたようだ。


 モチロン。俺は断る理由も無いので、


「プロメテに任せるよ」


 そう言った。



 ・・・



 妖怪対戦とはうまい表現だとオレは思った。

 今、俺の目の前で繰り広げられている戦いはまさに妖怪対戦だった。

 さっきの俺と同じくプロメテは、触手を躱すだけだったが、


「ふはははははっ。中々面白い動きではないか」


 高速で迫る触手を高速で避けている。プロメテは、それだけで楽しそうだった。


 --ジュルジュル。


 それに引き換えロリイムは、必死そうだった。

 ただ、避けるだけで近寄っても来ないうす気味の悪い相手に戸惑っているとも言える。


 暫くヤラセっぽいスパーを終えた後にロリイムがプロメテに仕掛けていく。


 何と、触手を地面から生えさせたのだ。

 予め地面に何本か埋めていたのかもしれない。意外としたたかな奴だ。


 プロメテは、触手に雁字搦めにされてしまう。

 ロリイムが勝ち誇ったように目を細めた。


 だが、プロメテは驚く様子もなく触手に体全体を巻き付かれていった。


 --ボッ、ボッ、ボッ・・・。


 プロメテに巻き付いたスライムに火が付いた。


 グギョオオオオオオオオ


 熱かったのか叫ぶロリイム。

 って、言うか痛覚があったのか? そっちの方がビックリだわ。


 プロメテはロリイムの攻撃を受けたが、全く効いていないかった。寧ろ焼いていた。


「効かん。効かんな〜。次はオレの攻撃を受けてみろ」


 ドシン。バシン。ズドン!

 プロメテのワンツー・ヒザがロリイムに炸裂した。


 --ジュウ。ジュウ。


 えげつない炎の追加ダメージがロリイムを燃やす。


 --ギャアアアアアアアアアアアア


 プロメテの攻撃はずっと続く。ラッシュ。ラッシュ。

 右に左に繰り出すパンチを見ていると、場外から「幕○内。幕○内」って、聞こえてきそうだ。


 プロメテのラッシュを受けてロリイムはグロッキー気味だった。

 目をクルクルと回して触手の足が千鳥足になっていた。


 畳み掛けるプロメテ。


「ガハハッ。これで終わりだ」


 プロメテ選手。豪快な右アッパー・・・からのバイセップ!!! 

 プロメテ。はっきり言ってウザイです。



 とは言え

 プロメテの手にあるのはロリイムのコアっぽいものだった。


 --ドチャ。


 コアを失ったロリイムは地面に落下し、茶色く変化した。お亡くなりになった様だ。

 辺り一面にいたスライムもブクブクと音を立てて消えていった。


 どうやらスライム問題は、解決したようだ。



お薬は用法・用量を守って正しくお使いください。

適当にぶっかけると悪化する場合もあるので皆も気をつけてね。(かぶれ経験あり)


次話投稿は火曜日予定ですが、1部が書き終わった段階で一挙公開します。

タイミングはTwitter、活動報告にアップします。

宜しければ、マイリス登録、感想、評価をお願いいたします。

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