③
全ての音が止んだ。
まるで、時が止まってしまったかのように。
「……!」
少年はゆっくりと、その青みがかった瞳を開く。
「ぐはぁ……」
悲痛の音を奏でたのは、女の方だった。
血を吐き、投げられたようにコンクリートの地面へ倒れ込む。
刃先は、彼の首を切り裂いてはいなかったのだ。
彼には何が起こったかわからなかった。
気づいた時には、その左手に大きな刀を握っていた。
刀身と柄に幾何学模様が刻み込まれた、鋭く立派な刀を。
「なんだこれ……おれ、いまなにを」
「見事だ」
「っ!!なんで……」
振り向くと、先ほど血を吐いて倒れたはずの女が漆黒のレザージャケットに塵1つつけず立っていた。
「これは返そう」
乱雑にバッグを投げられ、少年は慌てて受け取る。
バッグは戻ったが、彼の怒りは収まらなかった。
あの少女の大切なものは、消えたのだ。
「お前!」
刀を握りしめ1歩踏み出した。
「フラッシュトラベル」
しかし、それ以上前へ進むことができない。
女のつぶやきの直後、彼の周りに透明な壁が現れたのだ。
「十分だ……」
「は?おい、なんだこれ、出せよ!!」
女の姿は歪みだし、ただの黒い物体と化すると瞬く間に消えた。
いや、周りの景色じたいが真っ黒に歪みだしたのだ。
地下歩道は完全に消え、闇の世界となると。
「っ!」
脳髄をつんざく痛みが走り、やがて少年はしばし目を閉じた。




