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全ての音が止んだ。

まるで、時が止まってしまったかのように。


「……!」


少年はゆっくりと、その青みがかった瞳を開く。


「ぐはぁ……」


悲痛の音を奏でたのは、女の方だった。

血を吐き、投げられたようにコンクリートの地面へ倒れ込む。


刃先は、彼の首を切り裂いてはいなかったのだ。


彼には何が起こったかわからなかった。


気づいた時には、その左手に大きな刀を握っていた。


刀身と柄に幾何学模様が刻み込まれた、鋭く立派な刀を。


「なんだこれ……おれ、いまなにを」

「見事だ」

「っ!!なんで……」


振り向くと、先ほど血を吐いて倒れたはずの女が漆黒のレザージャケットに塵1つつけず立っていた。


「これは返そう」


乱雑にバッグを投げられ、少年は慌てて受け取る。

バッグは戻ったが、彼の怒りは収まらなかった。


あの少女の大切なものは、消えたのだ。


「お前!」


刀を握りしめ1歩踏み出した。


「フラッシュトラベル」


しかし、それ以上前へ進むことができない。

女のつぶやきの直後、彼の周りに透明な壁が現れたのだ。


「十分だ……」

「は?おい、なんだこれ、出せよ!!」


女の姿は歪みだし、ただの黒い物体と化すると瞬く間に消えた。

いや、周りの景色じたいが真っ黒に歪みだしたのだ。


地下歩道は完全に消え、闇の世界となると。


「っ!」


脳髄をつんざく痛みが走り、やがて少年はしばし目を閉じた。


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