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そのまま時は流れ、5年。
約束の13歳を迎えて晴れて外界へと出る事を許された日、紅愛は黒帝院家の当主を継いだ。
律や執事長の仲瀬からのサポートを受けながらも実質的な一族の業務は全て彼女が行い、名家を取り仕切った。
普通になりたいと願っていた彼女だったが、彼女自身は天性のカリスマ性を持ち合わせた、まさに天才であった。
相変わらず、神器との対話は叶わないが。
彼女は神器を取り戻すため懸命にリハビリを続けるが、一向に効果は上がらない。
彼女の心は明るさを取り戻せないままでいた。
毎晩寝る前に殺される寸前の両親の顔が出てきて、彼女の心を苦しめた。
そんな折、律は紅愛に生前の父親と魔術協会の彼女を巡るやりとり、そしてあの時の詳細を話した。
話の終わりに彼女が感じたことは、協会への怒りと不信感だった。
あの時私の居場所が魔人にバレてパパとママが殺され、家をめちゃくちゃにされたのは協会のせいではないか。と。
この事が紅愛をさらに変える。
魔術一族の名家は魔術協会に所属することが通例とされており名誉なことと捉えられる。現に黒帝院家も協会のスポンサーだった。
だが、彼女は協会に反発して別組織を作ることを決めた。
リーダーとなり、自分の選んだ者だけで構成した組織で魔人から民衆を守る、と。
成果を上げれば周りからも認められ、父を苦しめた協会への仕返しになると考えた。
だが何より、両親を守れなかった分誰かを守りたかった。
その提案に律も同意した。
彼としては、魔術を扱う仲間ができることで彼らが彼女を守り、また魔力の低下し自分の力に自信をなくしつつある彼女の励みになると考えたからだった。
そこからの3年間。
黒帝院家は、新組織の設立に向け当主たる紅愛の仲間探しに奔走する。
律を中心に、情報収集力に長けた執事たちは黒帝院家のコネと独自のネットワークを使い協会との関係が希薄な魔術士を探し始めた。
彼女の意向で、対象は同年代のみとし、かつ高度な魔力コントロールを有するものに限定した。
これが、後の魔術部設立に向けたリクルート活動であった。




