③
しかし、その幸せは突然終わりを告げる。
それは紅愛が8歳を迎えた時。
恐れていた自体が起きた。
魔人が彼女の神器を狙って黒帝院家を襲撃してきたのだ。
知られるはずはなかった。
父親は協会との約束を守って愛娘を強固なセキュリティを持つ屋敷内から一切出さず、魔術を使うときも外部から遮断された地下闘技場のみにしていた。
だが、皆が危惧した通り魔人に襲撃され、父と母は魔術を駆使して懸命に魔人と戦った。
魔術が飛び交い破壊される屋敷。
護衛隊の断末魔がいくつも響いた。
そしてついに追い詰められた時。
「律、あなたは紅愛を連れて逃げるのよ!」
「できません奥様!私は黒帝院家の執事です!この家に仕える以上、この家のために戦います!」
「なら、娘の専属執事としてこの子のために戦ってくれ」
「ダメです旦那さま!」
「いけ」
逃走を拒む律の肩を押して紅愛共々にフラッシュトラベルを掛けた。
「旦那さま!奥様!!」
「パパ!ママ!!」
透明な箱が2人を覆い、律と紅愛の叫び声ももはや両親には届かない。
その瞬間。彼らは1体の魔人により首を刎ねられ殺された。
フラッシュトラベルが作動し、空間移動するまでのわずか数秒。
彼女は透明な箱越しに事の全てを目にしていた。
不敵に微笑む、シルクハットを被った憎らしき魔人の姿も。
その後、駆けつけた魔術協会の部隊により襲撃した上級魔人を含む連中は傷を負って魔界、ノックスへと帰った。
その後。
亡き父が最後に掛けた空間移動魔術により地下闘技場に飛ばされ生き残った紅愛だったが、両親を亡くした彼女は協会により引き取られようとしていた。
それを止めたのが、彼女の専属執事、藤枝律であった。
彼の尽力で黒帝院邸に残る事が叶った紅愛だったが、彼女はこの頃から魔力が低下するようになっていた。
魔術自体はほとんど使えてはいたが、神器を発動できなくなっていた。




