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黒帝院紅愛。
日本を代表する魔術一族、黒帝院家の1人娘として産まれた彼女は生まれついての魔術の天才だった。
4歳で50冊以上の魔術書を読破し、5歳で高等と称される空間移動魔術を会得した。
屋敷の執事やメイドたちはよく紅愛を可愛がり、彼女はそんな彼らを驚かせようと、いつも新しく覚えた魔術を披露してみせた。
そんなお天馬で明るい彼女が6歳になる頃には、自分の内に神器ゼウスがいることに気づき、発動に成功していた。
両親は、やはり神に愛された子だ。と彼女を誇らしく思いよく褒めた。
『こんな歳で神器なんて、制御できるのかしら』
『暴走して誰かを殺しかねんぞ』
『その前に、いっそ協会で保護したらどうか』
だが、他の大人たちは違った。
6歳という、あまりに幼い頃合いに伝説の魔術兵器を持ったてしまった彼女に、大きな不信感と不安感、そして嫉妬心を感じていたのだ。
世紀の天才と呼ばれたミセス・エリザベスでも神器の発動は12歳。
それに対してあまりに幼すぎた紅愛は、その小さな身体では到底力を抑えきれないと思われた。
そしてついに動きだした魔術協会は、永田町にある東京支部で議会を開き、紅愛の身柄を一定期間協会内で保護する決議を採択した。
大義名分は、神器を狙う魔人から彼女を護るため。まだ己の身を十分に護れないと判断されたからだ。
だが、本音は彼女を野放しにして民衆を襲うのを防ぐため。さらには力を管理しておきたいという協会の狙いもあった。
事実、彼女と同い年で神器を持つ名家、天華院家の御曹司は彼の父の意向もあって発動した瞬間から協会の管理下に置かれていた。
まるで、化け物。いや、魔人のような扱いだった。
『娘のことは私が責任をもつ。だから、彼女を協会へ送ることはやめてくれ』
だが彼女の父親、黒帝院零士は拒んだ。愛する娘を守るために。
それに対し魔術協会東京支部の支部長である天華院武蔵はいずれ事故が起きると断固として彼の意見を否定した。
しかし、当時ロンドン支部長として議会に参加していたミセス・エリザベスが黒帝院側に同調したため、結果的には零士の意向に沿う形となった。
エリザベスの神器発動時より歳上の13歳を迎えるまでは、愛娘を決して外の世界に出さない。という条件つきだったが。




