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ーー東京、田園調布


「皆さま、ようこそいらっしゃいました」


紅愛を除く魔術部一行が駅に到着すると、ロータリーで漆黒のロールスロイスが待ち構えていた。


車体の横には、同じくらい黒い燕尾服を身に纏った長身の男が曇りない微笑みを浮かべている。


「……紅愛の専属執事」


希一の言葉に、男はなおもその瞳に一点の曇りさえつけず微笑む。


「希一様。藤枝律でございます。……前にも申したかと思いますので、覚えてください」


ニコッと最後だけ口角を吊り上げてみせる彼に、希一は苦笑する。


「……うわ、腹黒」

「ちょっと薙沙ちゃん!」


うっかり呟いた薙沙の口元に、凛が手を持っていき制止する。

湊は2人の背後で薙沙の言葉に同調するように頷いている。


「……はは。とりあえず、向かいましょうか。さぁお乗りください」


少し固くなった笑みで、律は客席の扉を開けた。



上品なクラシックミュージックが流れる車に揺られること数分。


ロールスロイスは黒帝院邸の門に到着した。


「……律だ。一行をお連れした」


車内無線での彼の声で、ゆっくりとその巨大な門が開かれる。


「すごーい!なにこれ、すごーい!」


広大で豪勢な敷地に入った瞬間、最初に興奮の声をあげたのは薙沙だった。

その後を追うように湊や凛も感動している。


敷地の中心には巨大な噴水があり、その周りには色とりどりの花壇。建物を外界から隠すようい生い茂る無数の木々。その上から顔を覗かせる監視塔。


まさに、絵に描いたような豪邸である。


「希一の話以上だぜ」


湊の言葉に、希一は頷く。

強制連行された希一以外は初めての訪問だったが、彼も2回目ながら改めてその凄さに驚いていた。


「ねぇ律さん!ここってどれくらい広さあるんですかー?」


薙沙の問いに、律は、えぇ。と答えて口を開く。


「道路を挟んだ向こう側にも敷地があるので多少開きはありますが、こちらだけでだいたい5000坪くらいですね」

「5000……大きすぎてわからない」

「星江様。サッカーはお好きですか?」

「え、あーはい。かなり」

「……国際基準のサッカーグラウンドが約2160坪なので、2個はまるまる入ります」

「おぉ。それはすごい」


薙沙と湊は感心しているが、対して凛はピンときていないようで首を傾げる。


「……この街は、昔は畑だったところを20世紀初頭にとある実業家が開拓し、英国をモデルに新たに作り上げた日本初の庭園都市なんです」

「国直属の名家である黒帝院邸は元々現在の皇居近辺にありましたが、知り合いだった紅愛様のひいお爺様に実業家が話を持ちかけ、知名度アップのために黒帝院家をこの街に誘致しました」

「長きに渡る交渉の末、結局一定区間を黒帝院家の敷地とすることを条件に本邸を移したのですが。それが、こちらです」


ほら、着きましたよ。と律は屋敷の入り口に横付けした。


「……紅愛。ほんとにほんとに。雲の上にいるみたいに凄いとこのお嬢様だったんだねー」


薙沙は、異国感漂う屋敷を見上げ更に感心の息を漏らした。

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