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「部長が戻ったわー!」


部長こと、黒帝院紅愛がしっかりと結われた蜜柑色のツインテールを振りかざしながら堂々と螺旋階段を降りて現れた。


「おかえりしょーぐん!」

「えぇただいま薙沙。どう、新入りとは話せたかしら?」

「まねー!」


薙沙はやってやったぜ。という風に親指を立ててウインクを放つ。


そう。と満足げに紅愛は微笑むと、呆然としている希一を見やった。


「自己紹介の時間を設ける手間は省けたわね。……希一、改めてあなたを歓迎するわ。魔術部へようこそ」

「あぁ。紅愛」


紅愛が片手をタクシーを呼ぶようにあげると、彼女の後ろからダンボールを両手に抱えた湊と買い物袋を手首に下げた凛が現れた。


「2人ともお疲れ。よくやったわ」

「……たく。相変わらず人使いの荒い部長だぜ」

「紅愛ちゃん。とりあえず、シャンメリー1ダースとお菓子適当に買ってきたよー」


凛の言葉に紅愛は頷く。


「ありがとう。凛。シャンメリーは最初の1本以外は良く冷やしといてね。湊も手伝って」

「うん」

「あいよ」


彼女の言葉に二人はテキパキと動く。


「紅愛ー!わたしなんかやることある?」

「薙沙はそうね、場を盛り上げて」

「ハードル高っ。がんばりまーす」

「あとグラス準備も」

「はーいしょーぐん」


「……いったいなんだこれ」


突然始まった準備に困惑する希一に、紅愛は嘆息する。


「言ったでしょ。歓迎会するって」


聞いてなかったの。と呆れる彼女だが、彼にしてみればまさかここまで大掛かりだと思わず度肝を抜かれていた。


ものの数分で準備は完了した。

テーブルはパーティのように連結され大きな大テーブルとなり、その上には更に盛られた数々のお菓子の数々。


皆はそれぞれの席の前に立つ中、対する紅愛はお立ち台を出してその上に乗っていた。


彼女の指示で、みな一様にシャンメリーの入ったグラスを手に持っている。


「みんなご苦労様。湊は調子乗って魔人にやられそうになったらしいけど。……まぁ今日はいいわ」


紅愛の言葉に湊はバツが悪そうに視線を逸らす。横の薙沙はケラケラと笑う。


「私たちの魔術部に新たな仲間が加わったわ。しかも神器をもつ超有能よ。まだ魔術士になったばかりで魔術のまの字も知らないけど、確実にこの部が更に強力になることに違いないわ」



希一。と彼女は名指しで呼ぶ。


「私たちは、魔術部としてこの地域に発生し街を脅かす魔人を退治することを活動内容としているの。あなたには特にその意義がよくわかると思う」


あぁ。と彼は頷く。過去の記憶と、今日の出来事で強く実感していた。


「前にもいったけど、魔人という悪の勢力によってこの世の安全は脅かされている。この国は表面上他より平和に見えるだけで、確実にね。だからこそ平和を守るために、この部の一員としてあなたには魔術を鍛えてもらうわ」

「もちろん、そのつもりだ」


紅愛は唇を歪めた。


「それじゃーもうここからは細かい事はなしね!お酒じゃないけど一杯飲んで存分に歓迎するわよ!」


はい乾杯!という高らかな紅愛の音頭と共に希一の入部歓迎会はスタートした。


冗談と笑顔に包まれる魔術部部室。


高校1年生だ。

学校のことや趣味のこと、最近の流行りや出来事。話題は尽きなかった。


ここで自分の中の後悔、哀しみを晴らしていこうとより心に決めた一方、彼は時々寂しそうな顔を浮かべる紅愛に気づいた。


誰も気づかない中でひっそりと。


彼に視線を向ける時だけ、わずかに彼女は見せていた。


まるで散歩中に親から置いていかれた小さな子供のように、泣きそうな少女の顔を。

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