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20.ドラゴンゾンビを倒せ


「ここを根城にして近くの村や町を襲っていると聞いたけど……本当なの? ハアハア」

『ククク、いかにも。配下の者どもにやらせている。女どもの恐怖に歪む表情や悲鳴は我にとって何よりの御馳走! これだけは死んでもやめられぬなあ! おっと、我は既に死んでいたか? フハハハハ!』

「女ども? 男は?」

『男は死ね! この世から消え失せろ!』


 死神魔人と似たような事を言っているな。こっちは女限定みたいだが。

 まあ、コイツがターゲットのドラゴンゾンビで間違いないのならそれでいい。

 倒した後で、本物は別にいた、なんて事になったら面倒だもんな。


 皆とうなずき合い、臨戦態勢を取る。敵はたったの一匹で、こっちは四人。

 雑魚のゾンビよりは強いのかもしれないが、このメンバーなら楽勝だろう。


『んん? なんだ貴様ら、我と戦うつもりか? どうも変だと思ったが、我にエロいサービスをするために来たのではないのか?』 

「当たり前だ馬鹿! 脳が腐ってんのかてめえ!」

『ゾンビをなめるなよ、小僧! 我の脳は腐るどころか既に風化しており頭の中は空っぽよ! おっといかん、男と会話を交わしてしまったではないか! 耳が腐るわ! そんなもの既にないがな! フハハハハ!』


 コイツとのやり取りって異様に疲れるな……。

 そこでノイズィが、誰とはなしに呟いた。


「なあなあ、ずっと疑問に思ってたんだがー……ここにいる連中って、ゾンビじゃなくてスケルトンなんじゃないのか?」


 ノイズィの何気ない言葉に、あたりが静まり返る。

 うんまあ、俺もそんな気はしていた。骨だけならスケルトンじゃないのかってな。

 ただ、そのへんの基準がどこにあるのかよく分からないし、ゾンビと呼ばれてるんならゾンビでいいだろと思ったんだが。


『フッ、そこに気付くとはな。さては貴様、ただのロリではないな?』

「ロリ言うな! 失敬だぞ!」

『知っての通り、ゾンビとは動く死体だ。生命活動を停止しているのになぜか動く不思議な化け物、それがゾンビなわけだが……死んでいるので、いずれ体細胞は腐り、風化してしまう。そうすると骨だけが残り、スケルトン状態となるわけだな』

「なるほど! つまり、ゾンビだったけどスケルトンになっちゃったのか。あれ、じゃあ、やっぱりスケルトンなんだろ?」

『いや。たとえ身体はスケルトンであっても心はゾンビ……そういう方向性で行きたいと思っている』


 なんだかしみじみと語るゾンビに、感心したようにうなずくノイズィ。

 ……いや、だからなんだよ? はてしなくどうでもいいわ。


『さて、我がゾンビであるという事で落ち着いたところで……不死の我に挑む愚かな人間ども、覚悟はいいか? 女どもはじっくりいたぶって悲鳴を上げさせてくれようぞ! グヘヘヘ!』

「なんてゲスいヤツだ……じゃあ、男の俺は?」

『男は死ね! 我の視界から消えろ見苦しい!』

「わ、私もいやらしい事をされちゃうのか?」

『いや、ロリはちょっと……君は見逃してあげるから帰りなさい』


 俺には死ねと吐き捨て、ノイズィには妙に紳士的な態度を取るドラゴンゾンビ。

 随分と余裕だな、この野郎。俺達をナメてるのか?

 それとも……自分の力に絶対の自信を持っているのか。


「あなたのようなエロゾンビは我が神の信者に相応しくありません! よって、処刑します!」


 最初に仕掛けたのはサリアだった。杖を振り上げ、呪文を唱える。


「ホーリー・ライトニングボム!」


 白く輝く球体が出現、射出される。

 光球は小山の上に伏したドラゴンゾンビにぶち当たり、大爆発を起こした。

 爆風が吹き荒れ、白骨化したドラゴンが粉々のバラバラに吹き飛んだのが確認できた。


 一撃かよ。すごい威力だな。

 しかし、あれだけ大口を叩いたくせにあっさりやられたな。やはり俺達を侮って……。


『ほう、やるではないか。我の愛人にしてやってもよいぞ?』

「!?」


 ドラゴンゾンビの声があたりに響き、ギョッとする。

 馬鹿な。あいつは間違いなく粉々に吹き飛んだぞ。俺の足下に欠片が落ちてるし、この状態で生きているとはとても……。


『どこを見ている。我はずっと、貴様らの前にいるのだが?』

「なっ……!」


 まさか。あの白骨死体は……ドラゴンゾンビ本体じゃなかったのか?

 ずっと俺達の前にあるのは、白骨死体を載せていた台座みたいな小山だが……こっちが本体なのか?


『貴様らは、我の鼻先に向けて話をしていた。人間とは実に愚かでちっぽけな生き物よのう』

「!?」


 地面が揺れ、小山が起き上がる。

 小山だけじゃない。頂上全体が蠢き、巨大な物体が動き出していた。

 これは……コイツがドラゴンゾンビなのか。岩山の頂上全体がドラゴンの頭部だったらしい。

 地面がひび割れ、土が崩れていき、埋まっていた骨が剥き出しになる。

 つまり、俺達が岩山だと思って登っていたのは、コイツの身体だったのか! なんだそりゃ、無茶苦茶な大きさだな。

 振り落とされそうになりながら、適当な突起物にしがみつく。体長はたぶん百メートル以上ある、白骨化した巨大なドラゴン。その鼻先に俺達は乗っていた。


「こ、こんな超大物だなんて聞いてないぞ! 今までに挑んだ連中は一体、誰を相手にしてたんだ?」

『人間どもは我が配下の雑兵どもに手こずっておったわ。頂上までたどり着いた連中も先ほどバラバラにされたヤツに勝てず、逃げ帰っていった。我の姿を暴いたのは、ここ百年の間では貴様らが初めてだ』


 なんてこった。こんなのが本体じゃ誰も勝てないわけだ。

 不気味な気配は、岩山そのものが発していたんだな。道理で強烈な気配なはずだよ。


「でかいからなんだ! お前なんかに負けないぞ!」


 ノイズィが叫び、杖を振りかざす。

 いつもより呪文の詠唱が長い。何か強力な魔法を使うつもりか。


「雷撃魔法、プラズマボールW! えい!」


 電流の塊みたいな球体が二つ出現し、円運動を行いながら絡み合い、回転する。

 ノイズィが杖を振るうと、雷撃球は二つ同時に射出され、白骨化した巨大なドラゴンの目にある空洞に飛び込んでいった。

 ビカッと閃光が轟き、ドラゴンの頭部を青白い光が貫く。


『やるな、小さいの。だが、我には効かぬ。空っぽの頭の中を攻撃されても痛くもかゆくもないわ! フハハハ!』

「むうう……!」


「ならば、私が! アンデッドにとって聖属性の魔法は天敵のはず!」


 サリアが叫び、呪文を唱え、杖の先を足下に向ける。


「ホーリー・バリーウェーブ!」


 聖なる光の波が生じ、ドラゴンゾンビの骨の表面を走り、拡散していく。


『グ、グオオオ、これは……うん、まあまあの攻撃だな』

「なっ……そ、そんな、浄化の光が効かない?」


 愕然としたサリアに、ドラゴンゾンビが言う。


『いや、効いてはいる。だがまあ、その程度の威力では蚊に刺された程度のダメージしかない。我と戦うのは早すぎたな、お嬢ちゃん』

「くっ……!」


 そこでクロムが、ドリル剣を構えて呟いた。


「では、今度は私が……本気でやらせてもらう……!」

『ほう?』


 クロムは背中側に倒れた竜の首を起こして頭にスポッと被せた。

 すると体型そのものが変化し、身体が一回り大きくなり、鎧を装備した白竜の姿になる。

 竜モードに変身したクロムは全身に闘気をみなぎらせ、ドリル剣を構えて猛然と突進した。


「ドラゴントルネード、マックスラン! はあああああ!」


 ドリル剣がギュルルルルと回転し、闘気が渦を巻き、クロムの全身を包み込む。

 自らを巨大なドリルに変え、クロムはドラゴンゾンビの眉間部分へと迫り、重い一撃を叩き込んだ。

 骨が砕け、欠片が飛び散る。尚もドリルを突き立てて貫こうとするクロムに、ドラゴンゾンビが言う。


『うむ、悪くない攻撃だ。だが、それでもせいぜい我の眉間に小さな穴が開く程度。既に朽ちたこの身体、多少の穴を開けられようと風通しがよくなるだけにすぎぬ。無駄だ、小さき同胞よ』

「くうっ、おのれ……!」

『女の姿に戻るがよい。その方がうれしいのでな』

「さ、最低ね、あなた……」


 剣を引き、クロムがうなる。

 なんて化け物なんだ。今のクロムの攻撃は相当な威力と破壊力だったぞ。それが効かないなんて……。

 残るは俺だけだが、こんな馬鹿でかい化け物に勝てる気がしない。どうすりゃいいんだ、こんなの。


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