おまけ
メゾン・ド・セレマから焼け出され、さらに待避場所の公民館も追い出されたおれは、あてどなく【ノア】を彷徨った。
なに? 仕事を探せ?
ハロワ?
ぷぷ……。何それおいしいの?
だいたいおれはちまちました仕事なんて性に合わない。
やるなら、ノーリスクハイリターンだ。
見てろよ、あいつら! 絶対ビッグになって、アパートの1つや2つポケットマネーで買えるぐらいの金持ちになってやるからな。
すでにそのための秘策はおれのポケットの中に入っている。
あとはどうやって実行に移すかだ。
しかし、その前に深刻な問題があった。
ぐぎゅるるるるぐあごごごごごごご……。
腹の虫は激しく唸り声を上げた。
「腹減った……」
公園のベンチで寝そべっていたおれは、空を見上げた。
流れていく魔法陣が、ドーナツに見えた。
いよいよ、おれもヤバいらしい。
しかも、暑い。
今すぐ文明の利器の恩恵を受けるか、魔術によって氷漬けになりたい気分だった。
ふと、そんなおれに影が覆い被さる。
「こんなところにいたのか、カルマ。……ニャン」
女性の声はやたらと威厳めいているのに、可愛らしい語尾によってすべてが台無しになっていた。
黒髪に、巫女装束。やたらとキツい眼光をおれに向けている。
しかし何故かその頭には、猫耳がついたカチューシャが乗っかっていた。
「なんだよ。理音かよ。金ならないぞ」
「そんなことは見ればわかる。……ニャン」
「じゃあ、なんだよ。部屋まで追い出されたおれを笑いに来たのか?」
「それもあるが……。元部下に、飯でもおごってやろうかと思ってな。ニャン」
「ああ。そうかよ。それは…………ご……苦………………ろう……」
はあ?
「マジか!」
おれは撥ね起きた。
反応に驚きながら、理音はこほんと咳払いをする。
「何が食べたい?」
「じゃあ、アレ!」
おれは指さす。
公園のすぐ外にあるファミレスだった。
「あれでいいのか?」
「おうよ」
「そ、そうか」
(てっきり、高級寿司とかステーキとかねだられると思ったが……)
何故か、理音は頭を抱えている。
「行こうぜ! 理音!」
「わかったわかった」
我ながら、子供みたいにはしゃぎながら、歩いていく。
後で振り返ってみて思ったが……。
理音が無償で奢ってくれるなんて、あり得ない話だった。
けれど、まあ……。
それはまた……。別の話――――。
【 了 】




