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4話 - 真っ直ぐ系騎士、再熱

 パンツを掲げるミラの後ろから、エリオットがひょいと顔を出した。


「あれっ、ダニー? 久しぶり」

「エ……エリオット!!? 何おまえ普通にショップの中入って……!?」

「入らないとミラのパンツ選べないじゃん」

「ミラ、の…………――!??」


 ダニーは思考が停止した。

 ね? とミラの腰に手を当て軽く引き寄せるエリオットに、こんなパンツ真剣に吟味する男性多分エリオットだけだと思う、とミラは呆れたように見上げる。


「……??? て、いうか、ミラさん……今までどこに…………というか、その服……――」

「――!?」


 はっ!? と今日身に纏っている慣れないワンピースを思い出し、きゃ!! とパンツで顔を覆う。


「ごごごごめんダニー……! あんまり見ないで……!!!」

「だから何でそれ……!!!」


 恥ずかしがる方向間違ってるだろ……!!! と再び真っ赤な顔を秒で背けるダニーであった。


 さっ、とそのパンツを手に取るエリオット。


「これでいい? とりあえず買ってくるね」

「私も行く! 買ったやつ1つ履きたいから」

「えっ? 何で?」

「今履いてないから」


 パンツパンツ♪ と店内奥へ向かうミラに、ピシ、と固まる男子2人であったという。

 



 3人は店を後にし、あてもなく街をぶらつき始めた。


「どれ履いたの?」

「それは秘密」


 ふふ、とお茶目に笑ってみせるミラに、なにそれかわいい……とエリオットは頬を染める。


 そんなミラの横で、じ……と繋がれた手に視線を落としているダニー。


「……エリオット、お前さ……」


 す……と涼しい目をダニーへ向けるエリオット。


「……何?」

「変態なの?」


 さっきから怖ぇんだけど、と言うダニーに、エリオットは、え? と言葉に詰まる。


「そうだよ」

「ちょっと、ミラ……?」

「やっぱりなー! ミラさん、いいの? そんな人が恋人で」

「え?」


 きょと、とミラは目を瞬いた。


「恋人じゃないけど……」

「えっ!? じゃあ何で手繋いで下着一緒に選んでんの!?」

「……パンツだけ用意してくれなかったから」

「………………????」


 まるで理解できず頭上に疑問符を浮かべながらも、もやあ……とエリオットへドン引きした目を向けるダニーであった。


「……ていうか……ミラさん」

「ミラでいいよ」


 やや気まずそうに眉を下げて笑うミラ。

 え……とダニーは立ち止まる。


「もう年上でもないし、錬金術で自立した大人でもないし」

「……どういう、こと……? いなくなってから……全然見た目変わってない感じするし……――」

「22歳」


 代わりに、エリオットが口にした。


「ミラは今、22歳。いなくなってた10年……ミラは1歳しか年を取ってないから」

「…………え………………どういう…………――!? 22歳……!?」


 しゅん……と気落ちしたミラを、ダニーはどきどきどき……! と見つめる。


「ごめんね、ダニー……! もう私錬金術、使えなくなっちゃって……。すごい、憧れる、って言ってくれてたのに……何にもなくなっちゃった……! 光るけど……」

「ミラさん……――え? 光る?」

「ダニーは、すごいね! ずっと騎士になりたいって言ってたの、叶ったんだ!」


 街ではなく森に住んでいたミラは、友人と呼べる友人はほぼいなかった。

 そんなミラにとっての唯一の友人が、年下だったダニーであった。


 これ守備隊の制服でしょ!? すごいすごい! と自分のことのように喜ぶミラに、きゅ、と口を結ぶダニー。


「……覚えてたんだ」

「私にとっては1年前だもん! ダニーはえっと……もう26くらい!? 何か逞しくなった気がする……! 大きくなったよね……!」

「……じゃあ、何で騎士になりたいって言ったかも、覚えてる?」

「え? えっと、確か――」


 そう言いかけて、段差につまずいたミラを、ダニーは咄嗟に抱き留めた。

 わずかに目を見開くエリオット。


 身体を預けてきたミラの腕をダニーはぎゅ、と掴む。


「ミラさんを守れるくらい強くなるって。騎士になって、絶対ミラさんを守るからって」

「ダニー」

「俺、多分強くなったよ。あの時言ったこと、今も変わってない――」


 次の瞬間、ミラの首に背後から腕を回すエリオット。


「間に合ってるけど」

「恋人じゃないんだろ? エリオット」

「同じ家に住んで同じベッドで寝ているのを恋人じゃないって言うなら」

「……親子じゃね?」

「…………」


 微妙にずれた2人が微妙に散らす火花を前に、仲いいんだダニーとエリオット……いい……! とミラは1人頬を染めていた。


「ていうかエリオット、おまえ知ってたな?」

「何が」

「ミラさんが戻って来るって」


 えっ何で2人仲いいんだろ……気になるな……お友だち? と、さっとエリオットを見上げるミラ。


「ずっと、知らない、わかんない、の一点張りだったろ」

「実際そうだったよ」


 いつの間に? 10年で仲良くなったの?? いいないいな……! と、さっとダニーを見上げるミラ。


「確証がなかっただけ。変に期待されたら困る……から……」

「困るって……何で…………――」

 

 なんでなんで?? 良すぎない??? 私のお友だちが気づいたらお友だちとか、最高すぎない??? と口に手を当て、きゃわきゃわとワンピースを揺らしていたミラに、2人の視線が集まる。


「――…………え?」


 きゃ……やだ……きゃーきゃーしてたのバレちゃった……? とミラの頬が染まる。


「あ、あの……どうぞどうぞ。お話続けてて……! 私、ほら、あの、えっと、久しぶりのセントラルカフェでコーヒー買って来るから!」

「…………??」

 

 1年(10年)の間に、同居人と数少ない友人が仲良くなっていたことに喜びを隠しきれないミラは、るん! と弾むようにカフェへと向かう。


「…………?」

「……何――」


 すると、すすす、と戻って来たミラが、エリオットをおずおずと見上げた。


「……あの……お小遣いください……」

「…………はい……」

 

 ちょん、とミラが小さく出していた両手の平に、エリオットは財布をぽんと置く。

 ありがとう! 今度返すから! とまたるんるん弾みながら駆けて行くミラを見送った瞬間、崩れ落ちるエリオットとダニー。


「……かっ……!!!」

「いやかわいすぎ……!!!」


 なにあれ……!!! と堪えきれずふるふる震える2人であった。

 


 ああくそ……! と頭を抱えているダニー。


「……いや……10年ぶりの破壊力……増しすぎ……!!!」

「まだ好きなの? ダニー、ミラのこと」

「なっ……」


 かあ……! と赤くなる。


「俺、おまえにそんなこと言ったっけ!?」

「ずっと言ってたけど」

「……あ、そうだっけ……」

「10年前、うちにミラ探しに来た時から、ずっと」

「…………」

「強いて言えば、その前から、街で合うたびにミラにべた惚れすぎて、見てたこっちが恥ずかしかったっていうか」

「おおおおおまえ、そんなこと思ってたの!?」

「思ってたよ」


 ぐ……とダニーは苦い顔で、涼しい表情のエリオットを見た。


「……おまえもだったんだな」

「…………」

「10年前、食い物とか持って行ってた時は、随分涼しい顔してたのに。今もだけど」

「ダニーには感謝してるよ。ミラがいなくなって、まだ生活力ないとき、様子見に来てくれてて。助かった。でもごめん。ミラは僕の奥さんになるから」

「おまえ、真顔で何言ってんの?」


 怖ぇんだけどまじで、と思わず突っ込むダニー。


「何って……もう新居も増築したしミラに合うかわいい服も家具も……パンツは用意しなかったけど」

「怖い怖い怖いってエリオットおまえ」

「一緒にも寝てるし嫌がってもないから、あとはミラが奥さんになるだけ――」

「まだ子ども扱いが抜けないだけだろ?」

「――!」


 す……とダニーへ冷たい目を向けるエリオット。

 ダニーの口からふっと笑みが漏れる。


「変わってなかったな、ミラさん。相変わらず何か抜けてるし、でも何か相手に対して一生懸命で……守りたくなるっていうか。やっぱかわいいな」

「…………」

「22歳……――」


 そう呟きながら、先ほどミラを抱き留めた手に、すっと視線と落とす。

 掴んだ腕は、想像していた以上に華奢だった。

 まだ自分が年下だったときは、ミラがもっと大きく見えていたような気がする。

 やば……! と微かに頬を高揚させると、無意識に口を手で覆った。


 にや、と笑うと、エリオットを見た。


「俺にもまだチャンスがあると思っていい?」

「無理だと思うけど。ダニーあんまり意識されてないから」

「おまえ直球で抉って来るなまじで。余裕だな――」


 ダニーがそう言いかけたところで、ぱっと駆け出すエリオット。

 え? とダニーが目を瞬く。


 すると、エリオットが駆けて行く先で、ミラが3人程の男性に囲まれているのが視界に留まる。

 その視界の先でエリオットが、がばっとミラに背後から抱きついた。


 自分が駆けつける間もなく怯えたように散っていく男たちを見ながら、ダニーは、あー……と呟く。

 先ほど向けられた冷たい目を思い出し、ぞわ……と小さく身震いした。


「……案外、余裕ねーのかもな……」


 ふ、と口端を上げると、ダニーもたたっと駆け出した。




「――ミラさん! 大丈夫!?」

「あっ、ダニーまで! 大丈夫だよ、もう……! 図書館の場所聞かれてただけ!」

「それをナンパって言うんだよ……」

「えっ?」


 きょと、と見合うミラとダニー。


「……ていうか、ミラ、それは?」


 ふとエリオットが、ミラが腕に抱えている3つのカップへ視線を落とした。


「あ、これ、はい! 2人のコーヒー」

「……!」

「あ、ありがとミラさん……!」


 いいえ! とにっこりと嬉しそうに微笑むミラ。

 ミラの腕に抱えられたカップを手に取ると、2人は口をつけた。


 すると――


「!?」

「甘……!」

「え!?」


 同時に驚いた2人を見て、ミラは大きく目を見開いた。


「ミラこれ……カフェオレ?」

「シナモン入ってる?」


 あ!!! とミラは口に手を当てた。


「ごめん……そっか……2人とも子どものイメージが……! ……そっか……もう大人……――」


 大人なんだ……、と逞しい2人を見上げ、ぽ、と頬を染めるミラ。

 あわあわと視線を泳がせると、もじもじと身をよじる。


「ご、ごめんね……! 替えてもらえないか聞いてこよっか……?」

「ううん。甘くておいしいよ」

「シナモン最高」

 

 そう言って笑みを浮かべる2人に、照れたように赤くなると、ほんと……? と瞳を輝かせる。

 よかったー! と花を散らすような照れ笑いを弾けさせるミラに、かわいすぎか……!! とふるふる震える2人。

 ミラに激甘なエリオットとダニーであった。

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