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秘密を抱えたふたりの錬金術師  作者: 雪月フィア


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九話

 翌日、魔導教会へ行くための準備を終えたルシエンは、屋敷の玄関にてアルメリアを待っていた。しかし、そこへ先にやって来たのはノアだった。

「おや、ノア様おはようございます。お見送りですか?」

「はいっ。あと、ルシエンさんに改めてよろしくお願いしますって言いに来ましたっ」

「お任せください。しっかりお届けしますから、安心して待っていてくださいね」

「ありがとうございますっ! あたしも、いつか自分で納品に行きたいなぁ」

「ふふ……今よりミスが減れば、きっと行けますよ。頑張ってください」

「そうですよねっ、頑張ります!」

 ノアは両の拳を握って気合を入れながら言うと、ルシエンは微笑みを浮かべてその頭を優しく撫でた。嬉しくもどこかくすぐったそうに「えへへ……」と笑うノアに、ルシエンはより一層笑みを深めた。

 そうして話していると、普段とは違いきっちりとした正装を身にまとったアルメリアがやってきた。そして片時も離さず連れている使い魔も、今はその姿が見えなかった。

「おまたせ」

「ひゃ~……おししょー、相変わらずとてもかっこいいです……」

「ノア……見るの初めてってわけじゃないんだから、いい加減慣れて」

「そう言われても難しいですよ~! って、あれ? 使い魔ちゃんはどこですか?」

 キョロキョロとあたりを見回すノアに、アルメリアは軽く息をついて続ける。

「カトリスの魔力で隠してあるよ。言ったことあるでしょ、僕の目が見えないのは秘密だって」

「あ、そうでした。だから使い魔ちゃん隠さないとなんですよね?」

「そういうこと。……っと、そろそろ向かわないと。それじゃあ行ってくるよ」

「行ってきますね。今日はカトリスも不在ですから、屋敷から出ずに過ごしていてくださいね」

「えっ、カトリスさんもいないんですか~……? うぅ、わかりました~大人しくしていますねぇ……」

 その返事を聞いたルシエンは頷き、ノアの頭を再び軽く撫でた後、アルメリアと共に屋敷から出て行った。


 アルメリアとルシエンは歩いて森の中を抜け、街へと向かう。そこで前日から頼んでいた貸馬車に乗り込み、改めて行先を告げると、御者は馬を走らせ始めた。

 出発したことを確認すると、アルメリアは軽く指を振り、キャビン内に防音魔法をかけた。これで二人が話をしても、声が外に漏れることもない。

「あまり、ここで魔力を消費してほしくはないんですけどね」

「これぐらいの魔力消費ならなんてことはないよ。それより、どこから話が漏れるかわからないんだから、対策に労力を使ってこそでしょ」

「だから、うちで場所を買いましょうと言い続けているんですよ」

「管理が大変だろうからいいって言ってるでしょ。これ以上、君に負担をかけたくない」

「気にしなくてもいいんですけどねぇ。貴方様に尽くすことが、今の私の喜びですから」

「……君も、随分と変わったね」

「これだけ時が経てば、そりゃあ変わりますよ」

 そう言って柔らかく微笑むルシエンに、アルメリアは呆れたような、だがどこか嬉しそうな笑みを返した。

「いい方向に変わってるなら何よりだけど」

「これだけよくしていただいて、悪い方向に変わるわけがないじゃないですか」

「よくしてるかどうかも、僕からはわからないものだからね。今だって、屋敷内のことだけに留まらず、こうして納品まで行かせているんだから」

「よくしていただいていますよ。大変なことももちろんありますけど、それ以上に楽しみもやり甲斐もありますので」

「ならよかったよ」

 照れ隠しからか顔を背け外に目をやるアルメリアの様子に、ルシエンは声を押し殺して笑った。今更なにを心配しているのだろうかと思うが、それは言わないでおくことにし、同じように外を見やる。

「そろそろ着きそうですね。降りる準備をしてください」

「わかった」

 アルメリアは短くそう返事をすると、再び指を軽く振って防音魔法を解除した。そして普段は閉じられている瞼を開け、赤い瞳を露わにした。

 馬車が止まって数秒後、御者から降りて大丈夫だと声をかけられた。ルシエンが先に降りて手を差し出し、アルメリアはその手を取って降りる。アルメリアが降りて軽く服を整えている間に、ルシエンは御者にお礼を述べて金銭を渡した。御者はそれを受け取りしっかりと確認した後、軽く頭を下げて馬車を走らせ二人の前から去って行った。

「ここからは徒歩か……いい加減、教会まで馬車をつけられるようになって欲しいんだけどね」

「今日まで改善されない所を見るに、必要性を感じていないのでしょうね」

「はぁ……僕以外の人間も、教会から離れて暮らす人がもっと出ればいいんだろうけど」

「利便性を自ら捨てる人は早々いませんから、難しいでしょうね」

「それもそうか」

 そんな他愛のないことを話しながら、二人は魔導教会への道のりを歩いて行った。

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