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秘密を抱えたふたりの錬金術師  作者: 雪月フィア


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四話

 翌朝、静かな屋敷内にパタパタと小走りの音が響く。その音の持ち主は食堂まで辿り着くと、勢いよく開けようとしたその手を止めて、静かに扉を開けた。中ではアルメリアは既に席へとついており、その後ろにはルシエンも控えていた。

「おっはよーございます!」

「ノア、遅い」

「えへへ、すみません〜……。でもその、朝起きたらあそこに違和感があって〜……」

 頬をかきながらどこか照れたように言うノアに、アルメリアは呆れたようにため息をついた。まだ生えてから一日も経っていないのだから、慣れるはずもないのはわかりきっているだろう。だから早めに起きて備えればいいのに、と思うが毎朝ギリギリで何度か早めに起きるようにと伝えたのだがこれなので、もはや今更だという諦めの気持ちがアルメリアにはあった。

「とりあえず座って」

 アルメリアはノアに座るよう促し、そのまま後ろを軽く振り返りルシエンに朝食の用意を頼んだ。そして配膳されるのを待つ最中、ノアに一枚の紙を差し出して口を開いた。

「今日ギルドに行って依頼書の提出と、いつもの素材を受け取ってきて」

「いつものおつかいですね〜。……って、あれ?」

 紙を手に取って内容を確認したノアは不思議そうに首を傾げた。

「なんだか、いつもより数が多くないですか? その、種類も数も……」

「どこかの誰かが変なミスをしたおかげでね。解除薬作ろうとするのに、どれだけ失敗を繰り返すかなんてわからないしね」

「あはは〜……。あっ、見たことない素材の名前もありますよ〜。あたしの知らない素材って、まだたくさんあるんですよねぇ」

「当たり前でしょ。ノアには希少素材も触らせてないんだから」

「いつか扱わせてもらったりとか……」

「うっかりが減れば考えてあげるよ」

「ですよね〜……」

 アルメリアが呆れたように言えば、ノアは少し落ち込んだ様子でそう返した。

 そして話し終えた頃には配膳が終わり、二人はどちらともなく食前の挨拶をして食べ始めた。


 食べ終わるや否やアルメリアは「食べたら早く行くように」とノアに告げて部屋へと戻って行った。ノアも部屋へと戻り、いそいそと準備を進め、廊下でたまたますれ違ったルシエンに声をかけてから屋敷を出る。そして森の中を歩き進めて行き、街へとたどり着いた。

 街はとても賑わっており、とても活気があるように見える。実際あまり頻繁に来ないノアも、いつも通りの賑わいだなと思うほど、ここはとても栄えているのである。そのまま人通りの多い市場を抜けると、冒険者ギルドへたどり着いた。多数の人間や亜人のいるロビーを、慣れた様子で進み受付へ近づいて声をかけた。

「こんにちは~! シャノルマーニ大錬金術師様のお使いで来ました~!」

「お疲れ様です。いつもの受け取りと、新規依頼ですね。では証明書の提出をお願いします」

 ノアは鞄から、朝食前に受け取った紙を取り出し、受付へと提出した。採取して来てほしい薬草と共に、アルメリア自身の直筆による署名と、魔力判を捺印してあるので、当人からの依頼であるという証明書にもなるのだ。

「確認しました。ではこちらのご依頼は、当ギルドで責任を持って受けさせていただきますね」

「よろしくお願いします!」

「それと、こちらが前回のご依頼分です。念のため中身を確認してから、丁寧にお持ち帰りください」

「はーい!」

 元気よく返事をすると、受け取った鞄の中を慎重に確認する。基本的には問題ないのだが、万が一という事があるため、こうして目の前で確認するのは必須なのである。

「……はい! 大丈夫です!」

「それはなによりでございます。ではお気を付けてお帰りください」

「ありがとうございました~!」

 軽く頭を下げる受付に、ノアは手を振り返してその場を後にした。最初に来た頃は手続きも、もっと複雑だと思っていたから、意外と簡単で驚いたくらいだ。ノアが来る前、こうした依頼はルシエンが来ていたので、ギルド側からは担当が変わったとしか思われていないからというのもありそうだが。

(用事はこれで終わりだし……ついでに市場を見て帰ろーっと!)

 なんて思いながら、上機嫌で市場へと歩みを進める。

 市場へと着き、ついでに汎用素材も買って帰ったらおししょー喜ぶかな、と考えながら歩いていると、いつもと少しだけ雰囲気が違うような感覚があった。いつも通り活気はあるけれど、なんだか違和感があってノアは軽く首を傾げる。

(こんな雰囲気だったっけ……? それに視線も感じるような……気のせい?)

 不思議に思いながらも確信を得られなかったため、気のせいだと思う事にした。そしてそのまま市場を歩き、馴染みの店にポーションの素材が珍しく置いてあったため、ラッキー! と思いながら購入し、足早に屋敷へと帰って行った。


「おししょー!」

 ノアは帰って早々ノックもせず、アルメリアの部屋の扉を勢いよく開けた。既視感を覚える出来事にアルメリアは溜息を零す。

「ノア……そんなに勢いよく開けないでって、昨日も言ったでしょ」

「あっ! すみませんおししょ~! それとただいまです!」

「はい、おかえり。……それで、今度はなに?」

「そうそう! 帰りに市場へ寄ったんですけど、なんだか雰囲気がおかしかったんですよ!」

「……どんな風に?」

「えっと、活気はあるんですけど、なんだかざわついてると言うか……そわそわしてると言うか……? 騎士団の人があちこちにいて、なんだか変な感じでした!」

「変な感じか……」

 かなり感覚的なものではあるが、アルメリアは気のせいだと一蹴することはなかった。むしろ顎に手をあて、少し考える素振りをした後、口を開いた。

「とりあえず何があったかは調べておくから。今はあまり気にしないように」

「はーい」

「変に気にして、また妙な失敗をされても困るからね」

「うっ……」

「とりあえずその素材、仕舞ってきたら?」

「はっ! 確かにそうですね! ではまたお昼ご飯の時に!」

 慌ただしく素材を仕舞いに行ったノアを見送ったアルメリアは、知らない間に随分と面倒なことになっていそうだな、と感じていた。

(自白剤の依頼と言い、一体何が起きている?)

 調べるにしても慎重に事を運ばないと、厄介なことになりそうだと考えながら、しばらくノアを街へ向かわせないようにしないといけないなとも思っていた。そしてルシエンの仕事をまた増やしてしまうな、とも。

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