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day 7

次の日から森拓海は、私の家に迎えに来るようになった。家を教えたつもりはない。何故知っているのかも分からない。いや応なしに部屋に訪ねてくるから受け入れるしかない。

《絢香さーん、起きてる?》


森拓海は、モーニングコールで私を起こす。携帯の番号も、教えた覚えはないが何故か知っている。おかしい。


「…起きてる」


のそりと起き上り、部屋の鍵を開ける。大和はこの家に入ったことはない。でも森拓海は容赦なく家の中に入ってきた。


『お邪魔しまーす』


今の私は大和状態。森拓海は朝の6時半に家に来る。だから家に入れたくなくても、入れざる負えないのだ。


「ごめん、今起きた」


ぼさぼさの頭を、ブラシの先で整えてくれる森拓海。目を擦りながら、ぼーっとする私。


「(大和どうしてるかな…?)」


ふとそんなことを思った。今の私は禁忌を犯しているような気分だ。昨日は森拓海を蹴飛ばして家に帰った。教室に鞄を取りに帰った時、後ろに座っていた大和の視線を感じた気がしたが気付かないふりをした。


『絢香、着替えて来て』

「うん」


森拓海とキスをしたことに、後悔の念を抱いている。こうなるならあの時、大和とキスしとけばよかったなんて思ったりもする。

顔を洗った私は制服に着替えた。時刻はまだ7時。いつもならまだ寝ている時間。リビングに行くと、森拓海は何かを作っていた。まるで召使みたいだ。


『絢香、座って』


そう言われて私は椅子に座る。少しするとシュガートーストと、サラダを持ってきた。


『これ朝ごはんねー』

「こんなに食べられない」

『だからそんなんなんだよー』

「ウザい」

『とにかく食べて』


低い声でそう言った森拓海。仕方なくサラダから手をつける。ちらりと森拓海を見てみれば、ちゃっかり一緒に朝ごはんを食べていた。


『絢香、もう行かなきゃ。時間だよー』

「準備する」


学校の準備をして、森拓海と共に玄関を出た。大和がいるかなって、思ったけれどいなかった。そりゃそうだと思う。

学校について森拓海と教室に入る。ちらりと教室を見渡すが、大和の姿はなかった。朝のHRが終わった後、担任の先生に呼ばれた。多分、無断で帰ったからだろう。


『立花、昨日は体調が悪かったんだろ?森先生から聞いたぞ。大丈夫か?』

「……あ、はい」


先生の言葉に少し驚いた。きっと森拓海が森先生に言ってくれたんだろう。教室に戻ると大和が居た。ばっちりと目があったけれど、先に逸らしたのは私の方だった。


『絢香、どうだった?』


席に座れば、森拓海が来た。


「森先生に言ってくれたんだ。ありがとう」

『絢香にお礼言われるとかちょっとうれしーね』

少し嬉しそうな顔をした森拓海は、私のおでこを弾いた。痛くて睨みつけると嬉しそうに笑っていた。



帰り道、今までだったら大和と歩いていた道を、森拓海と歩く。大和との思い出を塗りかえられていくようだ。嫌なら突き放せばいいだけなのに、それを出来ない私はどこまでも最低だ。


「森拓海」

『何その呼び方』

「普通に呼んだだけ」

『で、何?』


呼び方が気にくわなかったのか、少し不機嫌になった森拓海は、眉間にしわを寄せて私をみる。


「森拓海は自分のことが好き?」


『んーどうだろうねー。強いて言うなら好きなんじゃない?』


やっぱり普通は自分のことが、好きなのだろうか。そういう感情自体が、私には理解出来なかった。

男の人だって今までは嫌いで仕方なかったのに、今は普通に話す事が出来る。これは全部大和のおかげなんだろう。


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