day2
次の日、私は日直の為、大和と学校に行く予定ではなかった。
「あれ…? 何でいるの…?」
『早く起きたから。別に良いだろ』
家から出ると、大和がいちごみるくを飲みながら立っていた。日直だから先に行くって連絡したのに。
「ダメでは無いよ」
『なら良いじゃん』
大和はいちごみるくのストローを噛みながら、私をちらりと見た。日直の仕事は教室の部屋のかぎを朝一で開けて、空気の換気をしなければならない。それで今日はいつも起きている時間帯に家を出ている。
朝が弱い大和が早起きだなんて信じられない。もしかして私の為なんだろうか。いや、多分気まぐれだ。自惚れたらいけない。
朝は予定していた通りに学校に着いて、日直の仕事をこなした。しかし私ともう一人名前しか分からない相手の男子は全く何もしてくれず、結局一人で日直の仕事をした。
「日直ホントめんどくさい」
結局、一人呟いた所でクラスの誰かが私の手伝いをしてくれる訳でもなく、その声は教室に静かに響いた。
「(顔が分かったら文句言ってやる)」
黒板消しを置いて、手を洗いに向かった。
『ごめん、立花! 全部任せきって』
放課後、名前しか知らない日直の相手がものすごい勢いで謝ってきた。絶対に日直って分かってたクセに、謝っているのが目に見えて分かる。凄くムカついた。文句を言ってやろうと思った。けれど言おうと思えば体が震える。どうして私はこんなに弱いんだろう。
「別に、気にしてないから」
私は笑ってそう言った。この行為が逆に嘗められる原因に、なっても平凡な毎日を過ごせる。それだけで良いと思った。
『絢香帰んぞー』
どこかに行ってた大和が鞄を持って、私と男の所まで来た。男は大和が私を下の名前で呼んだことに驚いていた。
『大和、立花と付き合ってんの?』
『え? 違うけど』
ぶっきらぼうに答えると『じゃあ』と言って、そのまま先を歩いて行った。ちらりと大和を見れば、いきなり腕をぎゅっと掴まれて歩き始めた。
「大和…? どうしたの…?」
『他の男と話すとか許せない』
ぐっと腕を掴み、低い声を出す大和に少し身震いした。こんな大和を見るのは初めてじゃない。私が大和以外の男子と話せば、こんな風になった事が何回かある。でも私はそのことについては何も考えないようにしている。
私の勝手な思い込みで自分の気持ちを満たしたとしても、もし勘違いだったら辛い思いをする。それだけはイヤ。手を引っ張られたまま、マンションの方へ足を進める大和に少し安心する。でも掴まれた腕は痛くて、何故か胸が痛んだ。
「大和…、ごめんね」
マンションの前について、腕を離した大和に言った。いつもそう。別に私が悪い訳じゃないけれど謝る。そうすれば大和はいつものように笑ってくれる。明日からはまたいつもと同じ日々を送る事が出来るんだって思ってた。
でもこの日は違った。いつまで経っても大和は返事をくれなくて、マンションのロビー前で立ち止まったまま。
『絢香は―――…』
「ん…?」
『絢香は、俺のことどう思う…?』
「え…?」
大和の言いたいことが、理解出来なかった。