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青春物語  作者: おもち
6/18

謝罪の次は

新キャラ登場☆

 放課後、陽菜はつい彼――白井くんに目を向けてしまう。

(朝からなんだかぼんやりしているみたいだし、体調悪いのかな?)

 昨日のことで話しかけたかったが、タイミングを失い放課後になってしまった。

(い、言わなきゃ‥‥嫌われちゃってるかもしれないけど言わなきゃ‥‥)

「おい」

「わっ」

 後ろから声をかけられて心臓が出るかと思った。声の主は白井くんだった。

「し、白井くん。どうしたの?何かわからないことでもあった?」

 微笑んで聞いても無言。神様、私はどうしたら‥‥。

「ちょっと、話したいことがあるから一緒に来て」

「え?じゃ、じゃあ中庭で‥‥」

 放課後は部活に行くか寮に帰るのが普通なので、中庭に人はあまり来ない。ここでなら気兼ねなく話せるだろう。

「‥‥それで、どうしたの?話って」

「お、俺‥‥」

 俯きっぱなしの白井くんが心配になるけど、話始めるまで気長に待たねば。

「ごめん!!」

 白井くんは私に頭を下げ、謝ってきた。突然のことにびっくりして、思考停止した。

「ど、どうしたの?急に。なんで、謝って‥‥」

「‥‥俺、気づいたんだ。今まで誰も言わなかっただけで、俺は人のことを傷つけてたんだって。ハッキリ言うことで誰か悲しんでいたかもしれないって。昨日も俺、お前のこと何も知らないのに貶して‥‥本当に、悪かった」

 白井くんに何があったんだろう?急に自分の言動を謝るなんて‥‥。

 でも、彼の拳は震えるほど握られ、顔も赤い。彼が誠意を持って謝っているのは伝わってくる。

「‥‥うん、わかった。謝ってくれたからいいよ。私も、昨日置いて行っちゃってごめんなさい」

 しっかり謝罪して、顔を上げた時には笑顔をかたどる。

「さ、お互い謝ったからもうおしまい!白井くんはちゃんと自分を認めることができて偉いねぇ」

「そ、そうか?俺も人に言われて初めて気づいたんだが‥‥」

「素直に受け入れた時点で偉いよ。白井くん、正直すぎてクラスメイトに嫌われかけてたからね」

「そうなのか!?」

「えっ気づいてなかったの?」

 普通に会話した白井くんは面白くて、根は素直な子だとわかった。これならみんなも受け入れて、クラスの輪に溶け込めるだろう。

(良かった。誰かわからないけど、白井くんを変えるきっかけになる人がいて)

*****

 生徒会室では、窓から一人の少女が中庭を眺めていた。

「‥‥あら。彼、噂の転校生ですわね」

「おや、他クラスの君にも噂は届いているのかい?」

「ええ。誰にでも噛みつくような人は、学園に長くいられませんもの」

「この学園は、言わば社会の縮図。将来国を背負う若者たちが、立ち居振る舞いを学ぶ場所でもあるからね」

「ですが、貴方には必要ないようですね。会長?」

「それは君もだろう?西園寺財閥の一人娘 西園寺 菫さん」

 ハーフアップに結った紫のストレートヘア、菫を閉じ込めたような瞳、白い雪肌。全てを魅了するような穏やかな微笑みは完璧であった。

「この学園、いや、国のトップレベルのご令嬢の君には怖いものなんてないだろう?」

 美貌の少女にさえ心を許さない『氷の帝王』は、完璧な笑みを返す。

 二人の笑みは美しく、完璧で、どこか嘘くさい。

「ご冗談を。わたくしにだって、怖いものはありますわ」

「へえ。ぜひ知りたいな」

「乙女の秘密を探るのは無粋ですわよ?」

 意味のない穏やかな会話は、ノックの音で中断された。

「冬くん、菫ちゃん。お疲れ様です」

「お嬢様。お迎えにあがりました」

 入ってきたのはさくらと、菫の専属従僕の紫藤 優だ。

 本来青空学園は寮以外で従者は立ち入り禁止だが、優は学園の生徒になることで四六時中菫を護衛していた。

「もう、優。この二人の前ではかしこまる必要はないのよ?」

「そうですね、ではお言葉に甘えて」

「優は真面目ですねぇ」

「そこが彼のいいのところだよ」

 日頃は交友はないが、幼馴染である四人は気安い仲でもあった。気軽に話し合う機会が減ったが、交流は続いている。

「お嬢様。暗くなる前に寮へ戻りましょう」

「まあ、もうそんな時間ですの?」

「仕事は終わったし、私たちも帰ろうか」

「ええ」

 生徒会補助を務める菫と優は非常に優秀だ。どんな雑務でも快く引き受けてくれる頼もしい存在である。

 一同が片づけをしている時、菫がふと中庭を見ると陽菜と昴はまだ話しているようだ。

「ふふ、案外仲良くなったりして」

「菫ちゃん?何か言った?」

「いいえ、なんでもありませんわ」

 菫の呟きが聞こえなかったさくらは聞き返してきたが、勝手に広めるのは野暮なことだ。

 これからのことは二人にしかわからないのだから。

読んでいただき、ありがとうございます。

完璧同士の会話って難しい‥‥。

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