頼れる二人
新キャラ登場☆
青空学園は全寮制のため、放課後は大半の生徒が寮に戻る。
高級マンションにも劣らない広さと豪華さを備え、セキュリティーも万全。一般生徒は二人一部屋だが、十分な広さがある。そして、生徒会役員は最高階に一人部屋が与えられる。
だだっ広い部屋で、私は猛烈に後悔していた。
(ああぁぁぁ。言い過ぎた、絶対言い過ぎた‥‥)
今日の出来事は陽菜が譲れば穏便に流せたはずだ。それをムキになって言い返し、彼を校舎に置いてきぼりにしてしまった。
(寮の場所は知ってるはずだし、無事に帰れたよね?)
食堂で白井くんを探したが、人が多く見つからなかった。
(麻衣にも心配かけちゃったし、明日には切り替えなきゃ)
目の前の参考書にも手がつかず、うんうん唸ることしかしてない。このままでは駄目だ。
(気分転換にジュースでも買おう‥‥)
同じ階のラウンジに向かうと、人の声がしていた。誰かいたようだ。
「あら、田中さん。こんばんは」
「おや、珍しいね。君がここに来るなんて」
「あ、あはは‥‥こんばんは」
ラウンジにいたのは生徒会会長の伊織 冬河と、副会長の天宮 さくらだった。
容姿端麗、頭脳明晰、完璧超人と謳われる二人は学園きっての有名人だ。眩しい。
「ちょっと勉強に集中できなくて。ジュースを買いに来たんです」
「それは関心だね。私たちもちょうど勉強会をしていたんだ」
「そうなんですか。何の教科です?」
「数学論理学の再帰理論について話し合っていたんです」
差し出された参考書は明らかに高校生レベルではない。
難しい漢字と数字ばかりで眩暈がしそうだ。この二人は次元が違う‥‥。
「む、難しいですね。さっぱりわからない‥‥」
「私たちも浅く学んでいるだけだからね」
「やっぱり数学は苦手ですわ」
困ったように微笑む二人に『苦手』のレベルが違う、とは口が裂けても言えない。
「ところで田中さん。君はなにかお困りかな?」
「え?」
図星を突かれて驚く。会長はエスパーか?
「よければ、話を聞きましょうか?」
天宮さんに優しく促され、向かいのソファに腰を下ろす。
「じ、実は‥‥」
二人に今日の出来事を話し終えると、二人は考え込むような顔をしていた。
「す、すみません。もっと大人に対応すべきでしたよね。次はもっと‥‥」
「いや、田中さんは間違っていないよ。彼の発言は我々のことも侮辱しているからね」
「田中さんの努力を貶すだなんて。許せませんわ」
二人はまっすぐ私を見つめ、嬉しい言葉をかけてくれた。聖人かな‥‥?
「あ、ありがとうございます。お二人のおかげで、スッキリしました」
「それは良かったよ。これからも何かあったら相談してくれると嬉しいな」
「生徒会の仲間ですもの。ぜひ頼ってくださいね」
「はい、ありがとうございます!」
部屋に戻った時には、私は自信を持って間違いないと言えるようになっていた。
読んでいただき、ありがとうございます。
主要メンバーとなる二人にも、今後活躍していただきます!