表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春物語  作者: おもち
11/18

『王子様』の内心

今回は慶視点です。

 ペットに残された俺――篠原 慶はしばらく放心していた。

(え‥‥足はや!!)

 置いて行かれたことよりも、彼女の逃げ足の速さに驚いていた。

(極めたらもっと速くなりそう‥‥て関心してる場合か!先に帰られたんだぞ!!)

 冷静になり一人でツッコミを入れても現実は変わらない。

(予定を聞いといたらよかったな‥‥まぁもう後の祭りか。仕方ない、今日は帰ろう)

 諦めて一人で寮に向かう。いつもより足が早いのは気のせいだろう。

(にしても本に水やりか。ずいぶんお粗末な言い訳だな‥‥まあ明日話せばいいか)

 そんなことを考え、あっというまに寮に着く。

「ただいま‥‥って誰もいないよな」

 生徒会で書記を務める俺は一人部屋だ。会長たちのように侍従は連れておらず、部屋はいつも静かだ。

 俺の両親は共働きで帰りも遅く、休みも滅多にない。家政婦も仕事が終われば帰るし、1人は慣れていた。

『一緒にいられなくてごめんね』

というのが両親の口癖だった。

 申し訳なさそうな二人に、俺は本心を抑えて無理に笑顔を作る。

「全然大丈夫!お仕事頑張ってね」

 両親には罪悪感を感じてほしくなかった。

 だから、寂しいなんて言ってはいけない。二人がもっと困ってしまう。そう言い聞かせていた。

 いつしか俺は常に本心を隠すようになった。教師にも、友人にも、親にさえも。

 人に囲まれていても、俺はずっと一人だった。わかっている、わかっているんだ。俺が誰にも心を開かないから、上辺だけの関係しかできないなんて。

 でもこれでいい。誰にも迷惑をかけないのだから。

 俺の壁を乗り越えて俺を理解してくれる仲間は少なからずいる。それだけで十分恵まれているのだろう。

 だから大丈夫。皆が望む、理想の『王子様』を演じてやろう。そう思っていたのに‥‥。

(まさか他人に聞かれてしまうとは‥‥しくじったな)

 あまつさえあんなことを言うなんて、我ながらストレスが溜まっていたのかもしれないな。

 私服に着替えてソファに座る。

(何やってんだろ、俺‥‥)

 呆れ交じりに溜息をつくと、ポケットに入れていたスマホが鳴る。

 ホーム画面には一つのメッセージ通知。

 正直面倒だが大事な連絡かもしれないと開く。

 相手はあの眼鏡女子だった。

 驚きつつ内容を読む。

『今日は先に帰ってしまって、本当にすみませんでした』

 謝罪メールだった。

 基本非がない人に謝れるのは好きではない。罪悪感を感じる必要なんてないのだから。

『今日はお疲れ様。水やりはちゃんとできたの?(笑)

次からは私用があるときは互いに連絡しよう』

 スマホを投げてソファに体を沈める。

(‥‥そろそろ夕飯にするか)

 俺はいつも部屋で夕食をとる。食事時にまで人に囲まれるのは勘弁だ。

 今日はルームサービスではなく、気分転換に自炊をする。

(卵、鶏肉、玉ねぎ、人参‥‥オムライスでいいか)

 冷蔵庫を覗いてメニューを決める。

 がちゃがちゃと調理器具を取り出して準備に取り掛かる。

(あ、コーンスープもあったな。使っちゃうか)

 エプロンをつけながら新たにメニューを追加する。

 数十分後、机の上に並ぶのは一人分のオムライスとコーンスープ。

「いただきます」

 スプーンを手に取り口に運ぶ。

(我ながらうまくできたな)

 口に広がる軽やかなケチャップライスに、とろとろの半熟卵が絶妙なコラボネーションとなっている。

 小さい頃からよく手伝いをしていたし、腕が立つだろう。

 それに、料理は俺にとってのストレス発散でもあった。この達成感がちょうどいい。

「ごちそうさまでした」

 皿を片し、風呂に入った俺はそのまま引き込まれるようにベッドへ飛び込む。

(疲れた‥‥)

 一日の疲れを吐き出すように溜息をつき、天井を見る。

(そういえば、あの子の名前聞いてなかったな‥‥今日はもう遅いし、明日聞こう)

 そう思い、俺は早々眠りに入った。

読んでいただき、ありがとうございます。

みんな早く結ばれないかな~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ