第2話 ヤバすぎるよ!新町さん
「マジかよ…そんな夢のような話があり得るのかよ…」
大学の学食で天井を見上げ、ため息混じりに羨ましそうに話す男は南くん。大江くんの高校からの友人で学部もバイト先も同じ親友だ。
「けど、今の話の流れでどこに悩みが生じるんだよ。美人で巨乳で優しいお隣さんが定期的に晩メシ作ってくれるなんてクソ最高だろ。」
大江くんには新町さん絡みの悩みがあった。南くんはイケメンで多趣味でスポーツも結構できるからかなりモテる。そんな南くんを頼っての相談だった。
「いや、そうなんだよ南。実際最高なんだよ。けど、もうダメなんだ。色々重なって……」
「ムラムラが……抑えられないんだ……」
「ハァ……?そんなことかよ。そんなん多少はあるに決まってんだろ?普通だよ。」
「違う、普通のムラムラじゃないんだ。未だかつて経験したことのないような……凄まじいんだ。ムラムラの波状攻撃なんだ。」
「何言ってんだ大江(笑)」
「まずベランダの隙間から新町さんのベランダがチラッと見えるんだけど、必ず見える位置に下着が干してあるんだ。気付いてないのかな……」
「ほぅ……」
「あと、新町さんって結構胸元が緩めの服が多いんだ。だから晩御飯もらう時もおっぱいが気になって……」
「へぇ…」
「だから、もらった晩御飯を食べている時もずっとムラムラして食事どころじゃあないんだ。むしろ、食べている時にムラムラが増していくような……。」
「なるほどなぁ…」
「なあ、南ぃ。どうしたらいい?このままだと襲っちまいそうだよ。」
「んなもん、シコって落ち着いてから寝ればいいじゃん。」
「やってるよ……。それでも収まりがつかないんだ。」
「まぁ……当然襲うのは絶対NGだからな。段階を踏んでアプローチしてみれば?その新町さんは彼氏とかいるのか?」
「わからない……。会う時もちょっとした会話ばかりで、踏み込んだ話はしてないからなぁ。」
「なら、距離を縮めるためにも食事くらい誘えば?
たまにはウチで食べていきませんか?みたいな。」
「そうだなぁ……。誘うくらいはしてみてもいいかな。」
「隣に住んでるなら、レストランとか行くよりもそっちの方がハードル低いだろ?たぶん。」
「確かに……。今日は多分おかずくれる日だから、何となく誘ってみるよ。」
「おう、いけいけ童貞。ちゃんと報告しろよ。」
「ありがとう、南。童貞なりに頑張るよ。」
とある銀行の窓口。
「番号札56番でお待ちのお客様〜!」
すこぶる声が大きいわけではないが、しっかりと通る声と笑顔でお客さんを窓口へ呼ぶ行員。新町さんだ。
そんな新町さんを後ろから眺めるベテラン女性行員がひとり。
「新町さん。」
「はい!なんでしょうか?」
「あなた、いい人とかいないの?」
「えっ、ちょっと主任!仕事中ですよ!それにいい人もいないです……!」
「あらそう……。でも、本当に不思議なのよね。仕事もきちんとこなすし、美人さんだし、人もいいし。モテモテなはずでしょ〜?」
「そんなことないです……。今は仕事も楽しいので、いい人がいなくても全然満足です!」
「そういってくれると私は嬉しいけど……。私も紹介できる人いるにはいるから、いつでも言ってね。」
「主任、ありがとうございます!」
いい人。彼氏という意味では確かに新町さんにはそれらしい人はいない。しかし、一方的に狂愛を注ぐ対象はいる。
(大江きゅん……。会いたい……。会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい……アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!)
「あの……」
「……ハッ!い、いかがなさいました?」
「私の手続き、まだ終わりませんか?」
「あ、あぁ……!まもなく終わりますので今しばらくお待ちください。お待たせして申し訳ありません。」
(いけない……。大江きゅんのことを考えると大江きゅんのことしか考えられなくなるわ。)
(そろそろ、大江きゅんも耐えられなくなる頃よね。今夜あたりかしら……。)
新町さんの心の中は笑いが止まらなかった。
18時半ごろ。新町さんは帰宅した。
(大江きゅんのごはん、作らなきゃ♡今夜はカレーよ……!)
帰宅すると、すぐに料理に取り掛かる。狂愛を注ぐ大江くんがお腹を空かせて待っている。そして、ある期待も。
(私の予想だと、今日以降の近いうちに大江きゅんから何らかのアクションがあるはず……。それにより大江きゅんの部屋に入ることができれば、計画はほぼ成功したようなもの……。)
カレーを煮込んでいる間、新町さんはおもむろにベランダへと出た。
(下着には……手をつけていないようね。わざわざ取れる位置に干しているのに……。まあ、こんなところに干していれば見ているのは確実ね。大江きゅん、これ見てどんな気持ちかしら……。……あぁ、いけない。興奮して時間を忘れてしまいそうだわ。)
新町さんはベランダから部屋へ戻り、カレーの鍋の前へと戻った。そしてキッチンの棚から何やら怪しげな色をしたビンを取り出し、カレーにビシャビシャとかけ始めた。
(海外直輸入の媚薬……。私も摂取したけど、凄まじいムラムラだったわ……。大江きゅん、そろそろ収まりがつかなくなってるわよね……。)
新町さんは媚薬をかけ終わると火を止め、タッパーへと移した。
(準備完了ね。……あっ、といけないわ。忘れてた。)
新町さんはクローゼットへ行き、胸元が少し大きめに開いた服に着替え、さらに大事そうに、コンセントに差し込むような三角タップを取り出した。
(これで、本当に準備完了ね。大江きゅん、おうちに入れてくれるかしら……。もう襲ってくれちゃってもいいのだけれど。)
実はこの三角タップ、盗聴器である。新町さん、実はとんでもない計画を立てていた。
ベランダにこれ見よがしに下着を干し、渡す料理には媚薬を混ぜ、会う際にはなるべく胸元が開いた服を着る。その上で、大江くんの性欲を煽り、自分を家に入れる等のアクションを起こさせる。そして、隙を見てベッド近くのコンセントに三角タップを差し込み、ムラムラを自分で慰める大江くんの声を盗聴しようというのだ。
(大江きゅんって、どんな声だしてオ○ニーするのかしら……。きっと、普段よりもっと可愛くて切ない声が出ちゃうわよね……。私の名前を呼んだりしたら、私もう……。はぁ……好きよ、大江きゅん。しゅきしゅきしゅきぃ……。)
新町さんは大きな期待を胸に、家を出た。
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