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第1話 胸がドキドキだね!大江くん

5月。年度初めの忙しない時期が終わり、少し落ち着くころ。大江(おおえ)くんは大学2年生になっていた。



「今日は2限までで終わりかぁ、たまには家の片付けでもするかな……」



 大学の校舎から出てボソッと独り言を呟く。大学生になり、実家から大学に通えば良いだろうと言う親を何とか説得し、憧れの1人暮らしを始めて1年と少し。初めは気を使って努めてキレイな部屋をキープしていたが、今となっては若干汚部屋と化してしまっている。

 彼女でもいれば部屋の掃除もこまめにやるのだろうが、あいにく悲しいことに大江くんは未だに彼女いない歴=年齢の童貞である。



 愛用のクロスバイクに跨り、シャコシャコと自宅のマンションまで自転車を漕ぎながら、何の片付けから手をつけようか考える。

 あれこれ考えているうちに自宅の7階建マンションへ着いた。

 マンション裏の駐輪場に自転車を置き、玄関へ歩くとマンションの表側に引越し屋さんのトラックが停まっていた。



「引越しかなぁ」



 3月ごろから引越し屋さんのトラックが停まっていることはよくあった。そのため特に何も気にせず3階の自室まで階段を登る。



「あ……」



 どうやら引越してきた人は大江くんの部屋の隣に引越してきたようだ。引越し屋さんがせっせと荷物を運び入れている中に、明らかに異質な存在が1人。

 肩までかかる長めのストレートの黒髪に、整った優しげな顔立ち。身長は165センチくらいだろうか、170センチの大江くんよりはすこし小柄なようだが、女性としてはスラッと高身長。加えて、服の上からでも明らかな胸の膨らみに大江くんはドキリとした。

 そんな大江くんの視線に気付いたのか、大江くんに目を合わせるとニコリと微笑み、話し始めた。



「こんにちは〜、隣に引っ越してきた新町(しんまち)といいます。

今日はドタバタしてて少しうるさいかもしれないです……!

すみません……!」


「あ、いや、うるさいだなんてとんでもないです。

えと……大江といいます!よろしくお願いします!」


「大江さん! よろしくお願いします♡

落ち着いたら改めてご挨拶に伺いますね♪」


「あ、はい! また改めて……!」



 新町さんはニコリと微笑み会釈したのち、自室へと戻って行った。

 隣に引っ越してきた人が美人でしかも愛想も良くて、スタイルも好み……。大江くんは胸の高鳴りを抑えられなかった。



「挨拶、来てくれるんだな……」



 大江くんは、流石にそんなことないとは思いつつも、もしかしたら部屋に入って話すことになるかもとか話が盛り上がってそのままエロい雰囲気になるかもとか童貞臭いことを妄想しながらニヤニヤしつつ部屋の掃除を始めた。






「ピンポーン」



 19時ごろ、部屋の掃除もひと段落し、夕食にカップ麺をすすっていると大江くんの部屋のチャイムが鳴った。



「新町さんかな…!!」



 期待に胸を膨らませながら大江くんは玄関へ急ぐ。



「はい……!」


「こんにちは♪ 新町です。引越しのご挨拶に来たんですけど……今、大丈夫ですか?」


「全然大丈夫ですよ!」


「実はご挨拶にあたってお渡ししたいものがあって、お口に合うかわからないのですが……」


「え、ゴドゥバですか! うわぁ、しかも僕、ここのチョコレート大好きなんです!! こんなにいいものもらっていいんですか??」


「よかった……! 気に入ってもらえて何よりです! 

これからよろしくお願いしますね! 大江さん♪」


「本当ありがとうございます……! こちらこそよろしくお願いします! あ、それより敬語、使わなくて大丈夫ですよ! 僕、ハタチになったばかりですし、呼び方も大江で大丈夫です!」


「へぇ、ハタチになったばっかりなんですね! 私と6つ違いです! じゃあ、改めてよろしくね! 大江くん♡」


「よ、よろしくお願いします……!」


「そういえば、何だかいい匂いがする…大江くん食事中だった?」


「あっ、すみません、ニオイましたよね。ちょうどカップ麺を食べ終わったときだったんです!」


「そうだったんだね、食後すぐにごめんね。大江くんはいつもご飯はカップ麺なの?」


「いつもってわけではないんですけど、作るの面倒なので、結構カップ麺の日、多いかもです。」


「そっか…… もしよかったらなんだけど、たまにおかず作って持ってきたらもらってくれる? 私、いつも作りすぎちゃうし、大江くんもカップ麺ばかりじゃ飽きちゃうだろうし、どうかな?」


「ええ! いいんですか!? めちゃくちゃ嬉しいです! けど、申し訳ないです。そんなに良くしてもらって。」


「全然いいの! むしろもらってくれるとありがたいくらい♪ 」


「じゃあ、お言葉に甘えちゃいます……! ありがとうございます!」


「うふふ、じゃあ作ったらまた来るね♡ 今日はありがとう、またね大江くん♪」


「は、はい!また!」


ガチャリ……



 大江くんは玄関の扉を閉めたあと、しばらく呆気に取られていた。どストライクの年上のお姉さんが隣に引っ越してきて、尚且つ定期的に晩のおかずまで提供してくれることになった。

あまりにもトントン拍子にこんな夢のようなことが現実に起きていることを大江くんの小さい脳みそは処理しきれていなかった。



「たまんねえよぉ……」



 そう呟くと、やっと玄関から部屋の中へと歩き始めた。しかし大江くんの小さい脳みそはお祭り騒ぎのままだった。






「たまんないわぁ……」



 自室に戻るなり、恍惚の表情を浮かべ新町さんは呟いた。


(大好きなゴドゥバにあんなに喜んじゃって…… バレンタインはお母さんにいっつもゴドゥバ買ってもらってるものね♡ はぁ……好き好き好き好き好きぃ……可愛いよぉ……大江きゅん…… カップ麺ばっかり食べてたら身体に悪いからこれからはおねえたんが晩御飯たくさん作ってあげますからね〜♡♡ 晩御飯にはこのネットで買った媚薬をドバドバ入れて、大江きゅんをムラムラさせちゃうね……! おねえたんのこと、襲いたくなっちゃうかなぁ……! 大江きゅんに襲われたら、私どうなっちゃうかわかんない…… あぁ、想像してたらムズムズしてきちゃった…はぁ、大江きゅんしゅきぃ♡)


 新町さんの部屋は1LDKで、大江くんの1Kの部屋より1部屋多い。新町さんはリビングの隣の寝室に入り、明かりをつけた。

 壁一面に貼られた大江くんの写真。中には新町さん自身が合成したであろう大江くんとのツーショット写真もある。ベッドの上の抱き枕のカバーには大きな大江くんの写真がプリントされている。

 新町さんはベッドに横になるなり、大江くん抱き枕をキツく抱きしめ、腰をくねらせる。



「大江きゅん、私ずっと見守ってたんだよ? おねえたんと一緒にずっと幸せになろうね……!♡」



〜第一話・終〜

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