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三日月が世界を救う日

なろうラジオ大賞5

テーマ:三日月

 崖の上に現れた魔王は、夜空に浮かぶ三日月を指さし叫んだ。


「あの月が満月へと変わるとき、お前たちを皆殺しにしてやる。ガハハ」


 その声は村中に響き渡り、村人たちは家を捨て逃げて行った。


 魔王にはやらなければならないことがあった。


――焼き畑。


 収穫率が落ちているこの村を救うため、「ちょっくら焼いて来いや」と神様に命じられたのだ。


 やるからには死傷者0に抑えたい。だから、魔王はわざわざ嘘をついて村人たちを追い払ったのであった。


 だがしかし、避難しないアホが一人いた。男の旅人で運悪く両足を骨折していた。


 逃げられないことで自棄を起こした旅人は、呑んで呑まれたその勢いで村の女性に大変いかがわしい行為をしようとしたらしい。結果、村人から総スカンを食い置いていかれのだ。


 自業自得である。


 だが、そんなアホな旅人でも何かの拍子で怪我をしたら死傷者1になる。旅人が気づかないうちに焼き畑を終わらせる必要があった。 


 仕方なく、魔王は夜空に浮かぶ三日月の絵を描き、旅人がいる部屋の窓にべちゃっと貼り付けに行った。いつまでも満月にならなければ、旅人は安心して療養していられることだろう。


 焼き畑終了後、魔王は絵を回収しに行った。そして目が合ってしまったのだ、件のアホな旅人と。


「お、魔王じゃん」

「まさか勇者、お前だったか」


 何故か何かと出くわす勇者がそこにいた。出会った瞬間に話も聞かず襲いかかってくる、要注意危険人物だ。やっべ、さっさと退散しよう。


「勇者よ、骨折しているみたいだしまたな」

「待て待て、お前がその絵を描いたんだろ? ちょっと手伝ってくれないか?」


 勇者は絵を描いているようだった。絵心があるのかなかなか上手い。モデルが勇者自身でなければ褒めてやっても良かったくらいだ。


「ずっと三日月が出ててすげー綺麗だなって思ってさ。俺も久しぶりに描きてぇってなって描いてみたらハマっちゃって。だけど、夜空と三日月が上手く描けないんだよ」

「話を聞くなら、手伝ってやってもよかろう」


 それから魔王と勇者は積もり積もった話をした。


 絵が出来上がり帰ろうとする魔王を勇者が引き止める。


「なぁ、もうお前倒したくなくなったんだけど一緒に仕事辞めねぇ?」


 魔王と勇者が三日月の下談笑している絵は、平和アホデビー賞を受賞することとなる。

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