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四話

 「これが、制服ですか。 まるでローブみたいですね」

 「まぁね。 律ちゃんの制服はそれだね」


 見た目だけなら私の体型に合わなさそうな服を両手で持ち上げて、私はまじまじと服を見つめます。

流石異世界と言うところでしょうか。

私の世界の制服とは全く違います。


 私は昨日自分が着ていた白いセーラー服と先輩から渡された制服を見ます。

見比べてみると一目瞭然ですが、色と大きさが全く違います。


 「凄く大きいですね。 私これ着れますかね」

 「律ちゃん小さいからね。 律ちゃんを見た後だとさらに大きく見えるね」

 「馬鹿にしてません?」


 私は後ろから覗いている先輩の顔を目を細めて見詰めます。

私の身長は確かに女子の中でも小さい方ではありますが、そんなに小さい小さい言わなくてもいいと思います。

ほんっとに先輩はデリカシーがありません。


 「え?……そんなつもりはなかったけど。 とりあえず早く着替えないと時間が迫ってるよ?」

 「え!? もっと早く言ってください!」


 時計を見ると出席時刻まで後一時間しかありませんでした。

私は制服を持って洗面所に向かい、扉を閉めます。

昨日先輩が貸してくれた寝着を脱いで、制服を着ます。


 しかし、実際に服を着てみると大きいは大きいですが、その見た目よりは動かし易く、違和感などもありませんでした。

触り心地も良く、見た目も中々カッコよくて、私的には気に入りました。


 動き易いと言えど、走ったり飛んだりと言う激しい動きには合わないと思います。

体育の授業ではまた服を着替えるのでしょうか。

先輩に後で聞いておきましょうか。


 「先輩、着替えましたよ」

 「お? 着替えた?」

 「はい、着替えましたよ…………あれ? 先輩は私と制服が違うんですね」


 洗面所の扉を開けて、部屋に戻ります。

部屋に戻り、先輩を見ると私とはまた違う制服を着ていました。


 白を基調とした礼装のような服でした。

袖のボタンを止めながら、先輩は私の声を聞き、声を発しました。


 「いや、本来この学園の制服はこれなんだ。 女子はこれにスカートって感じ」

 「あれ、ならどうして私だけこの服なんですか?」

 「律ちゃん魔力ないでしょ?」

 「はい、無いです」


 先輩の制服と自分の制服を見比べます。

先輩のはほぼ真っ白と呼べるほど白い制服で、礼装のような服装とは違い、私の服は真っ黒と言っていいほど黒く、そして礼装のような服とは違い、大きくフードも付いていて、ローブのような服です。


 「この学園は魔力量によって、制服が変わるんだよ序列制度ってやつだな」

 「そうなんですね。 えっと、私のこれは?」


 制服の裾を持って広げるように先輩に見せます。

先輩はその疑問を聞かれるのを待っていたかのように笑みを浮かべて口を開きました。


 「律ちゃんのは一般的な人の魔力レベルの人達が着る制服だね。 序列は律ちゃんも居る位一番下、七番目の"ペーシェン"、六番目の"スロウス"、五番目の"グラトニ"、四番目の"ラス"、三番目の"ラスト"、二番目の"グリド"、そして俺も居る一番目の"プライド"って感じだね」

 「かなり多いんですね序列」


 先輩から聞いたことを忘れないように昨日先輩から渡されたノートに書いて行きます。

しかし、私は魔力すらありません。

それなのに序列内にいるのは、なぜなのでしょうか。

しかし、そんな私の考えを読み取ったかのように先輩は言葉を続けます。


 「前も言ったけど、この世界に魔力無しの人間は存在しない。 だから偽りの魔力持ちってことだね」

 「……てことは私は魔力が無いのに、魔力持ちとして通うってことですか?」

 「そういうこと、まぁ後は後々話すね。 まずは学園に向かうよ」


 先輩は私に右手を差し出してきました。

私はその手を左手をゆっくりと差し出して掴みました。


 「じゃあ、行くよ」

 「は、はい」


 私は右手で昨日渡された教科書などが入った鞄を持ちます。

次の瞬間、私と先輩の足元に黄色く光る星が複雑に描かれた魔法陣が展開され、私の視界黄色い光に包み込まれました。


 「んっ……ぅ、ん」

 「律ちゃん、もう目を開けても大丈夫だよ」

 「は、はい……わぁ、」


 私は先輩の言葉を聞いてゆっくりと目を開けると、巨大な城の様な建物が目の前にありました。

私が今まで見たことがない大きな学園でした。


 「じゃあ行くよ。 律ちゃんのクラスは俺と同じだから着いてきて」

 「あ、先輩と同じなんですね。 位が違うからてっきりクラスは別々かと」

 「あーうん、本当なら違うんだけど。 ちょっと特別に律ちゃんだけね」


 私は先輩の言葉を聞いて驚きます。

先輩と同じなのは嬉しいですし、安心があります。

ですが、本当にいいのでしょうか。


 「大丈夫だよ。 律ちゃんの場合学園長が直々に決めてるからね。 だからこのまま行っても平気」

 「わ、分かりました。 とりあえず先輩案内お願いしますね」

「了解だよ、付いてきて」


 先輩は私の手を優しく掴んで優しく引きながら歩き出しました。

私は先輩につられて同じように歩き出しました。

そして、私は大きな正門を潜り、学園の中に入っていきました。


 学園の中に入ると見た目通り、廊下はとても広く、大きくて、この廊下で車一台は余裕で通れそうな程です。

右側に大きく、少し豪華な装飾がされた扉と左側に巨大な窓が一定の間隔に存在していて大きな廊下がさらに大きく、見えました。

流石異世界だなと思いながら、先輩につられて歩いて行きます。


 「さて、律ちゃんもうそろそろ教室に着くけど、普通に入ってもらっていいからね。 先生が来て呼ばれたら自己紹介してもらうけどね」

 「はい、名前だけで、いいですかね?」

 「うん、それだけでいいよ。 さて、着いたよ」


 そう言って先輩は大きな扉が開いたままの部屋の少し前で止まりました。

上を見ると、札のようなものでプライドと書かれていました。


 ここが私の新しいクラス、ですか。

中からは人の声が聞こえていて、沢山の人の話声が聞こえて来ています。

これから、どんな風になるのか分かりませんが。

私は先輩を見つめて、先輩の手を少し強く握ります。


 先輩が居てくれるなら、私は多分大丈夫だと思います。

少し心をドキドキさせながら私は口を開きました。


 「行きましょ、先輩」

 「うん、行こっか律ちゃん」


 先輩は私の手を引いて、部屋の中に私を連れて行きました。


 先輩と私が中に入ると私と先輩を見た人達が次々と話を止め、騒がしく話していた声は囁くような小さな声と変わり、近くの人同士で話していました。


 部屋の中はまるで大学の授業室のようで上に行くように机があり、黒板が下にくるようになっていました。


 「あの、大丈夫ですかね先輩」

 「大丈夫、何かあれば守るから」

 「はい、ありがとうございます」


 私は周りの人々を見ながら、少し不安になり、先輩に声を掛けると先輩は私に目を向けながら先輩は少し優しい声で私に言ってくれました。


 先輩は私の手を掴んで、そのまま自分の席に向かい、自分の席に座り、私に隣に座るように手でジェスチャーして来ました。


 私は先輩の隣の席に座り、目だけを周りに向けました。

すると、私の目には私のことをまじまじと見つめる他の人達の目に押されて私は自然と目を先輩へと向けます。


 先輩は私の方を見ていてこうなることが分かっていたかのようにニヤニヤと笑みを浮かべていました。

やっぱり先輩はどこまで行っても先輩でした。


 私がじろっと先輩を見つめていると、扉の方から凛とした声が聞こえました。


 「おーい! そろそろ授業だぞ席に着け!」


 扉の方を見ると白いローブに魔法使いって感じの帽子を被った女性が扉におり、そこから大股で歩き、教壇に向かい、黒板の真ん中で止まりました。


 「さて、みんなおはよう。 もう分かってると思うが、新しい仲間がいる」


 女性は声をそのままに言葉を続け、私の方を見て笑みを浮かべました。

少し私を見つめた後、その人は口を開きました。


 「律さん! その場でいいから、立って自己紹介をしてくれ」

「ふぇ!? は、はい!」


 私はその声につられて、声を上げながら立ち上がります。

そして、身体を少し右斜めにし、少し深呼吸をして息を吸い込みます。


 「小百合 律です! これからよろしくお願いします!」


 私は声を出し終えてから、少し頭を下げます。

頭を上げる時に、視界の端に佐久間さんと春馬さんが見えました。

二人は私をじっと見つめて、少し眉を顰めていました。


 私に様々な目線が刺さり、私はすぐさま席に座ります。

しかし、仕方ないとは思います。

全員が白い礼装のような服に包まれている中。

私一人だけ黒いローブのような服なのですから。


 「よし、ちなみにだが律さんがここにいる理由はなんと理事長自らが決めたことだ」


 その瞬間、クラスの中が騒がしくなりました。

ざわざわとクラスの人間が声を上げ、驚いていました。


 「静粛に、私から言えることは以上だ。 私も律さんのことについてはあまり聞かされていないからな。 だが、しかし律さんが仲間ということには変わらない仲良くするように! では授業を始める!」


 女性が声を上げても、クラスは未だ騒がしいままでした。

そして、二つの目は、未だ私の方をじっと見つめて、訝しむ様な表情でした。


 横にいる先輩は顔を隠して肩を震えさせて笑っていました。

私はその先輩の足を思いっきり蹴り、先輩が痛そうに悶えているのを見て、教壇の方に目を移しました。

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