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封剣伝説~復讐から始まる【憑依】スキル使いの英雄譚~  作者: 波 七海
第2章 妖精の森攻防編

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第86話 思わぬ再戦③

 セレンの大剣がガリレアを両断しようとしたその時、彼の天力アストラが大きく増幅した。


絶対防衛リ・ヴァイ


 やはり天力能力アストラビィを持っていたかと思ったと同時に、これでしまいだと思ったセレンであったが、必殺の一撃はガリレアの体を両断することはなかった。


「何ッ!?」


 今度はセレンが驚愕する方であった。

 澄んだ音を残して大剣からセレンの手にかなりの反発力が伝わってくる。

 間合いを取る前に刺突で攻撃してみるが状況は変わらない。

 未知の出来事にセレンは慌てて距離を取った。


「なるほど。これがあんたの切り札か」


「切り札と言う訳でもなかろうよ。ただの天力能力アストラビィなのだからな」


 ――やはり天力能力アストラビィ

   これでガリレアの出した手は3つ。

   神剣、闇精霊術、天力能力アストラビィ、ただし能力は未知のものだ――


「だよな。硬過ぎだろ……。一瞬、ゴーレムかと思ったぜ」


 神剣の加護は喰ったし、セレン程の実力ある剣士ならガリレアも精霊術を行使しながらの立ち回りは無理だろう。

 となれば、後は天力能力アストラビィとスキルである。

 セレンの持つ封剣ふうけんゼクスナーガは、これまで多くの加護を喰らってきた。

 セレン自身が奪った加護はモンステッラとガリレアの物だけであるが、前の持ち主であるクロムはもっと多くの加護を封剣に喰わせてきたことだろう。

 封剣ふうけんが喰った加護はそのまま封剣に宿り、持ち主に付与される。

 その状態であるにも関わらず、ガリレアをれなかったのだ。


 セレンの背中を汗が伝う。


 天力能力アストラビィは自分では選べない。

 能力に目覚めた時の状況や精神状態に大きく左右されるのだ。

 当然、ガリレアの過去など知らないセレンに分かろうはずもない。


「さぁ小僧。掛かって来い。早くしないとハイエルフ共が全滅するぞ?」


退いてくれって言っても無駄だろうなぁ……」


「ふん……今更だな。来ないのならこちらから行くぞ」


 そう言うとガリレアは得物を狙って一直線に飛んで行く鷹のようにセレンに向けて突撃を開始する。


 その動きたるや神速の如し。


 とは言っても、セレンの方が身体能力も技術も上だ。

 何せクロムの霊魂を憑依させているのである。

 ガリレアの天力能力アストラビィは、身体能力を爆発的に上昇させるものではないらしい。


 正面から向ってくるガリレアの剣をセレンも引かずに迎え撃つ。

 こう言う時は引いたら負けだ。


 こうして真っ向からのガチンコ勝負が繰り広げられる。

 その撃ち合いは十合、二十合と続いて行く。

 心なしか、ガリレアの振りが大きい。

 セレンはそれに気がついていたが、それが当然誘いであることは百も承知である。

 大振りになったところにカウンターを入れられるのは目に見えていた。


 セレンも大剣による攻撃のみには頼らない。

 ブーツでガリレアの足を踏みつぶすが、彼の表情はピクリとも動かない。

 更に足技を絡めてガリレアのバランスを崩す。

 攻撃は効かなくても転がすことはできるようだ。


断頭斬だんとうざん


 ガリレアが倒れたところで剣技を発動する。

 大剣がギロチンの如く振り下ろされ、ガリレアの首へ迫る――が彼は一向にかわす素振りはない。


ギチィッ!


 およそ人間の首に大剣が当たった時の音ではないそれが響く。


 ――防御力が跳ね上がる能力か?


 下からの長剣による払い上げの攻撃が飛んでくる。

 セレンはそれを見切ってかわすと、大きく後ろに飛んだ。


 セレンの今の通常攻撃ではガリレアの防御力は抜けない。

 また、習得したスキルに攻撃用のものはない。


 となれば――


 セレンはもう何度目になるかも分からない突撃を敢行する。


「ハッ! 万策尽きたか? やぶれかぶれでは俺は倒せんぞッ!」


「ほざくなッ! お前の剣術は俺には通じていないことがまだ分からないのかッ!」


 自分の天力能力アストラビィに絶対の自信があるのか、ガリレアは余裕の表情を崩さない。

 セレンはセレンで有効だと思われる攻撃の手段はまだ持っていたため、諦めてなどいなかった。ただ、苦戦する前線のハイエルフ軍のために可及的かきゅうてきすみやかにガリレアを倒す必要があるので、焦りがないかと言われれば嘘になる。


 2人の剣と剣が激しく交差する。


 その時、戦場に凛とした声が響き渡った。


「土精霊よッ! 力を貸してッ! 邪悪なるダークエルフの動きを止めなさいッ!」


 更に美しい旋律の詩を詠い上げるように朗々とした声が後に続く。


「風よ……。清涼なる聖地を吹き抜ける薫風くんぷうよ。我が願いに応えその力を荒ぶるものに変えよッ!」


 ネオンが、アマリアが精霊たちに呼びかけたのだ。


 途端にガリレアの足元の土が盛り上がりその脚を絡め取って行く。

 身動きが取れなくなり明らかに狼狽するガリレア。


「この小娘共がぁぁぁ!」


「セレン、避けなさいッ!」


 言われるまでもなくセレンは横に飛んでいた。

 彼女たちもセレンと考えることは同じだったのだ。


 手段は違うが()()()()ではない。


 鎌鼬かまいたちのような烈風がガリレアに吹き付ける。


「甘いッ!」

 

 ガリレアがそう一吠えすると脚を縛めていた土が砕け散る。

 咄嗟に土の精霊に干渉してネオンによる精霊術を無効化したのだ。

 しかし同時に発生した荒れ狂う風には対応できない。


「クソがぁッ!」


 神剣によって幾つかの鎌鼬は吹き散らされるが、流石に全ては無理だったようだ。

 精霊術は易々とガリレアの体を傷つけた。

 鮮血が大地を染め上げる。


 2人が作り出してくれた僅かな隙――


 それをセレンが見逃すはずがない。

 力を纏った大剣ゼクスナーガが無情にも振り下ろされる。


破邪はじゃ雷撃らいげき、今こそ悪をめっさん!【雷轟神聖撃らいごうしんせいげき】」


 曇天どんてんの空を裂いて稲妻が走りガリレアの体を直撃すると同時に大きな轟きが空間を揺るがす。


「グアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 戦場に苦悶に満ち満ちた絶叫が響き渡った。

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