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封剣伝説~復讐から始まる【憑依】スキル使いの英雄譚~  作者: 波 七海
第2章 妖精の森攻防編

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第72話 不意打ち

 セレンが以前に戦ったジェ・ダと言うオークロードは3マイト以上の巨躯を持つ傑物けつぶつであった。


 巨大な質量を持つ物体に高速で突っ込まれば、その破壊力や推して知るべしである。如何いか隘路あいろで囲まれないとは言え、あの突破力である。一気に前線が崩壊する可能性さえあるだろう。


 そんなセレンの心配をよそに、アマリアはすぐに動き出した。


「精霊術士は2組に別れて! 1組は矢避けのために風の精霊の、もう1組は放火のために火の精霊の力を借りるのよッ!」


 アマリアがそう指示を出すと精霊術士たちが一斉に詠唱を開始する。

 ガリレアと剣士団は駆け出すと隘路あいろに陣取った。

 もちろんセレンも後に着いて行く。

 聞きなれない言葉によって紡がれたのは、ハイエルフとエルフしか扱えないと言う精霊言語による呪文だ。


 剣士たちを黄緑色きみどりいろのベールのようなものが優しく包み込む。

 セレンの目には小さな妖精のような風精霊の姿がぼんやりと映った。

 と同時に空気が熱を発し始め、火精霊が出現したかと思うと、砦に火炎を吹き付ける。


「焼き払えッ!」


 アマリアがノリノリで指示を出している。

 その業火にたちまち砦は炎上を始めた。


 オークの反撃は迅速だった。

 やぐらからは矢の雨がセレンたちに降り注ぐが、風精霊の力でことごとく吹き散らかされている。

 やがて炎は櫓にも燃え移り、その勢いを増していく。

 今やその熱気がセレンにも伝わってくる程である。

 更に櫓が崩れ落ちる頃になると、誰ともつかない呟きがセレンの耳に入った。


「脱出しないつもりか……?」


 その時、上がっていた跳ね橋が降りていく。

 ゆっくりと降りていく橋を見ながらガリレアが部下に向けて叫ぶ。


「来るぞッ!」


 完全に降りた跳ね橋を渡ってオークとゴブリンたちが突撃を敢行してくる。

 ここにハイエルフ軍とオーク・ゴブリン連合軍が激突した。

 隘路はすぐに大乱戦に陥った。

 長槍でもあれば槍衾のように敵の突撃に対してカウンターを喰らわすことができるのだろうが、ないものねだりをしても始まらない。

 相応の犠牲者が出るだろうが、ガリレアに押し切られた以上、仕方ない。

 今のところ戦況は五分五分のようだが、どう転ぶかは分からなかった。


 護衛と言ってもていの良い厄介払いであるのは言うまでもなく、セレンは速やかに決着をつけるべく、この砦の指揮官を探していた。

 戦いが始まってまだそれ程時間が経っていない頃、セレンがモヤモヤしながら戦況を見守っていると、左手の川に繋がる水堀から小舟に乗ったオークの集団が姿を現した。その手には弓を持っているようで、ハイエルフの剣士団に矢が降り注いでいる。風精霊の力で、その矢は当たることはなかったものの左手からも攻められる形となりハイエルフたちは浮足立ち始める。


 そこへ砦から一際大きなオークが手勢を引き連れて姿を現した。

 そのオークは大剣を振り回し先頭に立ってハイエルフの軍に突撃を敢行する。


「ゴラァァァ! 俺の名はジェ・ダ! 貴様ら生きて帰れると思うなッ!」


 大音声だいおんじょうで名乗りを上げながらハイエルフたちを蹴散けちらしていく。

 結果的にガリレアの取った方法は失敗であった。

 数的な不利によって包囲殲滅されないために隘路に陣取ったのは良いが、兵がより密集体形になってしまったため、上手く立ち回ることができず、本来発揮されるべき俊敏性が損なわれたのだ。


「あいつ、あのオークロードかッ!」


 セレンはそう理解した瞬間、ジェ・ダに向かって走り出していた。

 ジェ・ダの突撃でガリレアたちは一気に崩れ始めた。

 そしてハイエルフの剣士団は完全に突破されてしまい、乱戦の様相を呈している。ここは一刻も早く大将を討ち取る必要があるとセレンは判断する。


 その時、湿地帯の方から鯨波げいはのような喊声が上がった。

 後方で悲鳴が上がる。

 それと時を同じくしてオークたちを攻撃していた精霊エレメンタルが暴走を始めた。

 精霊術士の集中力が途切れて制御不能に陥ったのだろう。

 セレンが後方へ視線を向けると、整然と隊伍を組んでいた精霊術士たちが大混乱に陥っているのが目に入った。


 目に入って来たのは緑色の皮膚をしたわにのような亜人であった。


「リザードマンッ!?」


 セレンの目の前にはオークロードが率いるオーク・ゴブリン軍、そして背後にはリザードマンの軍がいる。


 まさに前門の虎、後門の狼である。


 全滅の可能性すら出てきた状況に、セレンは唇を噛んだ。

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