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第4話 闇夜に思う

 セレンはエリクと共に東門へと急いだ。

 途中で暴れている兵士たちに何度も絡まれたが、当然のようにセレンは全員瞬殺していく。


 罪のない人間を殺し、奪い、犯すのはセレンの正義に反する。

 そしてセレンは兵士から指揮官の名前を聞き出すことに成功していた。

 名前はノメッツ。この街にジオナンド帝國軍を招き入れた張本人である。


 敵を倒しつつ、何とか東門に到着したセレンとエリクであったが、様子がおかしいことに気が付いた。

 固く閉ざされていた城門が開いているのだ。


「開門して住民を逃がしたのか……?」


 セレンはそう1人(つぶや)いてみるも答えは出ない。

 恐る恐る城門の外へ向かうと、幾つもの篝火かがりびが焚かれているのが見える。

 セレンは嫌な予感がしたが、もし予想通りならここで進む以外の選択肢はない。


「エリク、城門の陰に隠れてろ」


 セレンはエリクにそう伝えると、どんどん篝火の方へ近づいて行く。

 すると、そこには軽装鎧を身に着けた一般兵の姿と掲げられた旗が目に入る。

 その旗にはジオナンド帝國の紋章。


「来たぞッ! 捕えろッ!」


 セレンの予想は当たっていた。

 モンステッラは、住民が逃げられないように各城門に備えの兵を配置していたのだ。リオネルたちは東門から脱出を図った住民共々捕縛されてしまったのだろう。


 仲間は助けなければならない。

 備えの兵力は如何いかばかりだろうか、とセレンは考えるもそれをフッと鼻で笑い飛ばす。


「何人いようが関係ない……。全員俺が救い出すッ!」


 そう言って大剣を抜き放つと、掛かってきた兵士をで斬りにする。

 そして次々と掛かってくる兵士を斬っては捨て斬っては捨てを繰り返す。

 周囲には数えきれない程の兵士たち。

 セレンは流れるような動きで、まるで剣舞のように舞い踊る。

 それはまさに死の輪舞ロンドであった。


「何をしているッ! もう捕らえんでもよいッ! 殺せッ!」


 指揮官らしき男が声を荒げる。

 セレンはこのまま雑魚を斬り続けても意味がないと思っていた。

 そんなところに部隊長らしき男の発見である。

 セレンは幾重もの剣撃けんげきくぐり、部隊長の元へと近づくと一刀の元に斬って捨てた。頭からへその辺りまで左右に両断され、物言わぬ死体へと変わった部隊長を見て兵士たちは大混乱に陥った。

 どうやらこの兵士たちは北斗騎士団の団員ではないらしい。

 彼らは武器を捨てて我先にと逃げ去って行く。

 勇猛果敢に斬り掛かってくる者もいたが、セレンは問答無用で地獄に送ってやった。


 セレンが陣の奥まで入って行くと、そこには捕らえられた住民たちが縛られた状態で転がされていた。

 もちろん、リオネルたちの姿もある。セレンの仲間は全員で25名。

 セレンは住民を含めた仲間全員を解き放つと、お互いの無事を喜び合う。


「リオネル、エリクは無事だ。お前らは武器を持って南のミッドフェルへ向かえ」

「分かった。セレンは一緒に行かないのか?」


「俺はやることができた」


 セレンの言葉に何かを感じ取ったのか、リオネルは真剣な顔で問いただす。


「そんなに大事なことなのか?」

「ああ。俺が為すべきことの1つだ」


「1つってことはまだ死ぬ気はないようだな」


 リオネルはニヤリと笑みを浮かべると、セレンの肩を拳で軽く小突いた。


「ったりめーだ。俺はこのけがれきった世界を正すと決めたんだ」

「その言葉……忘れてないぜ。では俺たちはミッドフェルにて待つ」

「ああ、魔物が出た時は頼む。後、火を使うなよ。他の門にも備えはいるはずだ。見つかるぞ」


 リオネルを始めとする仲間たちはセレンに剣術の稽古を受けていたのでそれなりに戦えるのだ。セレンは隠れていたエリクを連れて戻ると、リオネルと拳を合わせて誓いを立てた。


 必ず再会すると言う誓いを。


 リオネルたちと別れたセレンは、斬り殺したジオナンド帝國兵の軽装鎧を身に着けると、すぐに街に舞い戻った。

 少し大きめであったが、セレンは問題はないだろうと判断する

 これから帝國に寝返ったノメッツを探さなければならない。


 セレンは、ここまでかなりの人数を斬って来た。

 体にはかなりの負担になっているはずだと考えている。

 このままモンステッラと戦いになっても勝てるかは分からない。

 そこでノメッツの出番である。


「早くノメッツを探さないと……」


 セレンがそんなことを考えていると、遠くから風にのってときの声が聞こえてきた。恐らくジオナンド帝國軍が都市の中枢を押さえたか、敵将を討ち取ったのだろう。


 そう思ったセレンは内応した兵士と思しき者に片っ端から声を掛けていった。

 もちろん、ノメッツの居場所を聞き出すためだ。

 セレンが帝國兵の格好をしていたため、意外とあっさりと彼の居場所が判明する。聞き出した兵士に案内させると、とある住居に通される。

 セレンが怒りをこらえて「どいつだ?」と問うと、兵士は1人の髭面ひげづらをした大男を指差した。


 そこには、女を凌辱するノメッツの姿があった。

 周囲でも配下の兵たちが女たちに乱暴を働いている。

 セレンは迷うことなく大剣を抜くと、お楽しみ中のノメッツの首を斬り落とした。


 驚いたのは配下の兵士たちである。

 セレンは、慌てて立ち上がろうとする兵士たちを剣を抜くことすら許さずに、極めて速やかにぶち殺した。

 本当ならもっと苦しめて殺したいところであったが、時間も惜しい。

 兵士たちの鮮血を浴びた女たちは、悲鳴を上げる者、取り乱す者、茫然ぼうぜんとする者と様々な反応を見せる。

 セレンは彼女たちに隠れているように告げると、すぐにノースデンの太守がいるはずの中央砦に向かうことにした。

 もちろん、ノメッツの首を持って。


 そこに仇はいる。


 セレンは外に出ると、暗い闇夜を見上げた。生憎あいにく、月は雲に隠れているようで見ることは叶わなかった。

 すぐに前を向いて歩き出すセレン。彼の口からポツリと声が漏れる。


「父様……今、仇を討って見せます」

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