本当の幸せとは
その道に吸い込まれるように私はその道を歩いた。
道の途中でそこだけ日が照っていない場所があった。
『幸せ横丁』
と、字が書いてあり、苔がこびりついた古い門があった。
幸せ横丁?それってあの噂の町だ…
そう思い私はその門の中に足を踏み出した。
でもこれが本当にあの『幸せ横丁』なのだろうか。
どうしてそう思ったのかは、誰もかれも幸せそうではなく、逆に苦しそうだったからだ。
「わっ!」
何かで私はつまづいて転んでしまった。
「…何?」
ふと後ろを見ると、そこにはで餓死した人の死体が何体か転がっていたのだ。
歩いて行くと、ほかの道へ出た。
途端に、誰かが私の体に倒れかかって来た。40代後半くらいの女性だ。
「大丈夫ですか」
そう声をかけると、女性はこう話した。
「あんたも幸せになりたいのかい。」
「いいえ、ただ通りかかっただけです。」
女性は息を切らしながら話を続ける。
「あのねぇ、ここの町は、幸せになりたい人が来る場所なんだよ。それも努力もしないで、辛い事を全部避けて。
そんな私達を助けたって無駄さ。さあ、もう帰りなさい。」
「もうちょっと詳しくこの町の話を聞かせてください。」
咄嗟に出た言葉に私自身ですら驚いたが、この町の事をもっと知りたかった
のは事実だ。
おばさんは少しため息をついたから答えた。
「この町には最初は誰も住んでいなかったんだ。
なので誰かが勝ってに自分の町にして、そして他の住宅街にこんな貼り紙を貼ったのさ。
『“幸せ横丁”
“楽”して幸せになりたい方はこちらへ。』
そしてその町は最初の頃は多くの人でにぎわって毎日祭りばっかりだった。もちろんその町の食料などは盗んだものさ。
だけどある日、そんな生活が嫌になった。皆正気に戻ったのさ。
いくら美味しい食事も、人から盗んだモノじゃ美味しくない。
いくらその時が幸せでもやはり辛い事を乗り越えてからこそ感じる幸せがあると気づいた。だがもうその時は遅くて、その町では法律が通らない状態だから皆法律違反ばっかりしていた。
それでこの村はもうほとんど無法地帯になったのさ。
おまえさんは私達みたいに間違った人生をおくらないようにしなさい。」
その時辺りが真っ白になっておばさんの姿が見えなくなってしまった。
私はいつのまにか家にいた。
「夏子ー!ご飯よー。降りて来なさい。」
私はいつのまにか家にいたのだ。
そして、いつのまにか勉強を済ませていた。
不思議だと思いながら私は下へ降りてご飯を食べた。
ご飯を食べるうちに私の記憶は薄っすらと消えていき、最後には何があったのかも分からなくなった。
「努力をしたからこそ、辛い事を乗り越えてからこそ、幸せになれる。」
その言葉だけが私の記憶の中にはっきり残っていた。