表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/39

31 オールドホーム浄化作戦

 ゴッドマザーとゴッドフォーチュンがタッグを組んだ『オールドホーム浄化作戦』。


 作戦の前提として、ゴッドフォーチュンが王城の執務室で、水晶玉で使ってオールドホームの里を遠隔でモニターする。

 傍らには、共同司令官であるゴッドマザーが。


 ふたりの聖偉と、彼女たちの大臣が企てた作戦の全貌はこうであった。


 まず、ヌスターとネコババのふたりが部下を引きつれ、オールドホームの里の西側へと向かう。

 そして、麓から火を放つ。


挿絵(By みてみん)



 部下が火を放ったと同時に、ゴッドマザーのスキルである『メッ殺の炎』を使って火勢を増幅させる。


挿絵(By みてみん)



 そのあと、ゴッドフォーチュンの『運命の旋風』で突風を起こし、炎を西から東へと煽る。


挿絵(By みてみん)


 そうすればオールドホームの里はあっという間に炎に包まれる。

 ふたりの聖偉のスキルによって勢いを増した炎は、彼女たちに匹敵する上級スキルでなくては消すことは不可能。


 そのためシュタイマンたちは東側にある『おっぱい山』に逃げざるをえない。

 避難した先には、ゴッドマザーがプロデュースした『ママのおうち』がある。


 そこは白亜の宮殿となっており、ママの等身大パネルやおっぱいクッションなどのゴッドマザーグッズにあふれている。

 寝室にはゴッドマザーの抱き枕があり、冷蔵庫を開ければゴッドマザーのミルクが入った瓶がぎっしり。


 シュタイマンはゴッドマザーのことを思いだして、いてもたってもられいられなくなり……。

 「ママー!」とホームシックを起こして泣き叫ぶに違いない。


 さらに『フォーチュン・マウンテン』はシュタイマンの潜入を阻止できて……。

 その霊峰の威厳は、永遠に保たれることになるであろうっ……!


 ……しかし、ひとつ疑問に思うことはないだろうか?


 この作戦における、ゴッドマザーとゴッドフォーチュンの絶妙なまでのコンビネーションに。

 ふたりの聖偉は帝国でも有名な犬猿コンビであるというのに、なぜここまで歯車の噛み合った作戦を展開できたのかというと……。


 それは、この悪魔のような作戦を企てるのは、初めてではなかったから。

 実は、2回目っ……!


 ふたりの聖偉はかつて、あるひとりの少女に嫉妬した。

 その少女は、かつて『火消し』スキルで帝都の炎を見事消し止め、英雄ともてはやされた人物である。


 ふたりの聖偉は、その績に嫉妬したわけではない。

 少女が功績を認められ、聖偉に昇格することを怖れたわけではない。


 嫉妬の理由は、なんと……!

 『シュタイマンに肩車されたから』……!


 シュタイマンが『火消し』の際、少女を肩車しているシーンは帝国の全ての新聞が一面で取り上げていた。

 それを見たゴッドマザーとゴッドフォーチュンは、新聞をビリビリにするほどに羨ましがった。


 そしてさっそくシュタイマンにおねだりしたのだが、結果は言うまでもないだろう。


「シュタイマンちゃん、新聞で見たわ! ママも肩車してちょうだい!」


「否! そんな肥え太った豚のような女を肩車したら、腰をいわしてしまうと占いに出ておる!

 ここはわらわを肩車するのじゃ!」


「ふたりとも、なにを言っているのですか。

 彼女を肩車したのは、消火を促進するために必要な行為だったのです」


「なら、なおのこと肩車してほしいわぁ! そしたらおっぱいが噴水みたいにびゅーびゅー出るようになるから!」


「そんな邪神の噴水像のような不気味なものができあがるなら、わらわを肩車したほうがよっぽど有意義だ!

 今わらわを肩車すれば、そなたはわらわと一緒に天国に行けると占いに出ておるのだぞ!」


「もしおふたりに肩車が必要な時あるとすれば、それはわたくしが判断します。それでは、失礼」


 シュタイマンはこの時、思いもしなかった。

 まさか肩車を断った恨みが、あの(●●)少女に向かうことになろうとは。


 ゴッドマザーとゴッドフォーチュンは、このままでは火消し女にシュタイマンを取られてしまうと焦った。

 そして、はじめての『悪魔の作戦』が決行される。


 部下に命じて、火消し少女のいた村に火を放ち、ゴッドマザーが『メッ殺の炎』で火勢を増幅。

 さらにゴッドフォーチュンが『運命の旋風』で村じゅうに火を行き渡らせたのだ。


 ふたりの聖偉が起こした炎には、さすがの『火消し少女』も無力であった。


 さらに聖偉たちは、『火消し少女』が爆炎のスキルが目覚めたことをいいことに、彼女を放火の実行犯にしたてあげる。

 しかも有罪になるのをシュタイマンに妨害されないように、シュタイマンに長期の出張が必要な用事まで作り上げて。


 聖偉の力があれば、ひとりの少女を有罪にすることは、ティッシュで鼻をかむよりたやすいこと。

 これにより、ゴッドマザーとゴッドフォーチュンはまんまと、恋のライバルを追放することができたのだ。


 しかもその顔に、一生消えない火傷の跡を残して……!


「おほほほほ! そんなお顔じゃあ、たとえシュタイマンちゃんにまた会ったとしても、相手にもされないでちゅねぇ。

 残念でちゅねぇ、可哀想でちゅねぇ~!」


「愉快愉快。わらわの下僕(しもべ)に手を出すものがどうなるのか、これでわかったであろう!

 地獄よりも苦しいとされる辺境の地で、後悔するがいい!」


 ふたりの聖女は、かつての『火消し少女』が連行されていく様を、水晶玉ごしに覗き込んで笑いあう。

 しかし姉妹のような仲良しっぷりは一時的なもので、次の日からは元の険悪な関係に戻っていた。


 そんな利害関係のみで繋がった、邪悪なコンビが時をこえて再結成される。

 そして前回よりも数倍パワーアップした、『悪魔の作戦』が企てられてしまった。


 天使のような微笑みをたたえた悪魔たちが、平和なオールドホームの里に、今まさに降臨しようとしていたのだ……!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★クリックして、この小説を応援していただけると助かります!
小説家になろう 勝手にランキング script?guid=on
― 新着の感想 ―
[一言] お前ら絶対に許さんッ!
[一言] 嫉妬が理由でマイトの村を焼き払い、その責任をマイトにひっかぶせて追放... 外道死すべし慈悲は無い。
[良い点] ひぇ… こっちのマザーはヤバい奴だった! メッ殺かぁ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ