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転移小人の奮闘記  作者: 三木 べじ子
第1章
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第6話:レッドフィールド家との出会い⑤

智香子は、自分の足元にうずくまる美青年を見下ろす。

と言っても、美青年は高身長のため、かがんでも智香子の身長より高いから見下ろしてはいないのだが。


智香子に蹴られたすねを押さえながら、美青年はうめくように言った。


「っ、なぜ………。」


そんな彼に智香子は吐き出す。


「当たり前よ。成人女性のことを幼女だなんてバカにした奴には。これでもまだ優しい方ね。」


ふんっ、と鼻を鳴らすと、横で一部始終を見ていたカロラスとベネッタが笑いながら智香子の横に並び、同様に美青年をバカにし始めた。


「チカは二十歳だ、兄さん。そんなことにも気づけないなんて、目、腐ってるんじゃないのか?」


「腐ってるだけじゃない。腐り落ちてる。そんなだから未だにまともな恋ができない。………………プフッ。」


「っ、それは関係ないだろう!」


もうすねの痛みが引いたのか、勢いよく立ち上がる青年。

そして智香子は驚いた。

そもそもクリストフの身長が2m超えていることに驚いたのに、目の前の美青年はそんなクリストフよりも更に高身長だからだ。


彼の顔を見ていると、首がすごく痛くなる。


するとそのことに気づいたのか、美青年は上げたばかりの腰をかがめて智香子を見つめ、


「申し訳ない………まさか二十歳だとは思わなかったんだ。」


目じりを下げて謝罪をした後、頭を下げた。

慌てる智香子。


「え、ちょ、頭を上げなさい!こんなところで謝られても迷惑なだけよ!」


そんな智香子の言葉を聞いて、目を見開いた青年は、笑みをこぼした。


「ふふっ、ははははははははは!!」


「?!」


そして腹を抱えるほど笑った美青年は急に立ち上がったかと思えば、智香子を抱え上げたのだ。


突然目線が高くなったため、目を白黒させる智香子に美青年は問う。


「ねぇ、貴女の名前を教えていただいてもいいかな?」


特上の笑顔付きで。

智香子は思った。これは自分の顔の良さを知っているな、と。


だからと言って、この至近距離に照れないわけではない。

さすがに照れるものだ。


「っ、ちかこ…………。」


「チカコ………チカコ、か。」


かみしめるようにつぶやいた美青年は、


「俺はダミアン=リーデル・アルガー・レッドフィールド。歳は二十三、身長234、体重86。」


「ダミアンって呼んでね。」と軽い自己紹介を終えた後、「よろしく。」と智香子の耳元でささやき、彼女の頬にキスを落としたのだ。


「っ~~~!!」


悲鳴にならない悲鳴がのどから鳴り、智香子は、


「こ、の、変態がぁ!!」


思いっきり美青年の顔面を殴ったのだった。



       *



「いや~、申し訳ない。」


そう言いつつ氷の入った袋で智香子に殴られた場所を冷やしている美青年、改めダミアンは、とても良い笑顔をしていた。


反省してないな、こいつ……………。


朝食をとった時と同じように、否、ダミアンも加えて机に座っている現在。

智香子はダミアンを睨み付け、机の中で拳に力をこめた。

その様子を見て、ダミアンはさらに笑みを深めるのだ。


「あまりにも可愛くて、つい。」


犯罪者と同じようなことを言ってるぞ。

するとダミアンが「痛っ」とつぶやく。どうやらカロラスが彼の足を机の下から蹴ったらしい。


(いいわよ、カロラス。もっとやってしまいなさい!)


心の中で声援を送った。


「でも、魔力がないとはなぁ……。」


アリシスが淹れてくれた飲み物を口にしながらクリストフがそう言った。


「うん、今日も格別においしいよ、アリー。」


「うふふ、ありがとう~。」


と思ったら、イチャイチャし始めた。

カロラスがため息を吐き、「やめてくれ父さん母さん。チカが困ってる。」そう止めてくれた。

なんてしっかりしているのだろう。


「カロラス、ベネッタ、貴方たちって一体いくつなの?」


昨晩も思ったのだが、判断力や行動力がとても高い。

身長からして中学三年生か高校生くらいかな?と思いながら、智香子は二人の答えを待つと。


「オレは11だ。」


「アタシは14。」


「っ、グハッ!」


強烈な攻撃を受けた。


(そ、そんな!片方は小学生で、もう片方はまだ中学生?!)


どうなってるんだ、この世界の身長は!と苦しむ智香子の心を読んだかのように、ダミアンがいい笑顔で爆弾を落としてきたのだ。


「ハハハっ。この世界の平均身長は、男が2m、女が1.82mだから。」



       *



「はっ!」


次に智香子が目を覚ましたのは、あの大きなベットの上。

どうやら先ほどの強烈な情報によるショックで気絶してしまったらしい。

申し訳ないと思いながら体を起こそうとするがなぜか起き上がることができない。


「?」


と不思議に思って周りに視線を向けてみると、


「………………………………………。」


「スー………スー…………スー………。」


超絶美青年――ダミアンが隣で眠っていたのだ。智香子の体をがっしりホールドして。

そこで智香子は自分の体の変化に気づいた。


(隣で美人が眠ってても驚かなくなってきたわ…………)


3回目にもなれば慣れるのか。すごいな、人間って。

そしてそっと、そっと、ダミアンを起こさないように動き、その腕の中から抜け出そうとする。

がしかし、


「ん、目を覚ましたんだね、チカコ。」


ダミアンは起きてしまった。


「…………………………。」


せっかく起こさないよう慎重に動いてたのに……何起きてんのよ………という視線を投げつけると、「え?俺なにも悪いことしてないよ?」と慌て始めるダミアン。

それよりも、悪いことって、なんだ。なんなんだ。


とにかくここでごたごたしてても何も進まない。


「カロラスとベネッタはどこに?」


クリストフとアリシスに頼まれて智香子のそばに近すぎる距離でいてくれた二人。

その姿が見えないのだが…


「あぁ、猟に出てるよ。」


さらり、とダミアンが体を起こしながら答える。


「り、猟?」


弓やらなんやらを使って動物を捕まえる、あの。


「うん。今夜のために、特大サイズの猪と鹿を捕まえてくるって意気込んでいた。」


なんだ、今日は何か特別な日なのか?

クリスマスとかそういう感じの日なのか?

あぁ、異世界のことはやっぱりわからないなぁ、とこぼす智香子の顔を突然覗き込んできたダミアン。


「?!」


彼はついさっき会ってから見る何度目かの笑顔を浮かべながら、


「剣を極めたいなら、教えてあげようか?」


と智香子にささやいた。

その言葉に智香子は


「っ、いいの?!」


迷うことなく飛びついたのだった。


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