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転移小人の奮闘記  作者: 三木 べじ子
第1章
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第5話:レッドフィールド家との出会い④

鳥の鳴き声が聞こえるな、と思って目を開けた智香子は、両隣に眠る美少年と美少女がいて大変驚いたが、なんだかとても落ち着いた。


そしてポツリとつぶやいたのだ。


「…………おだやか~~。」


カロラスとベネッタが同時に目を覚ます。


「あっ、ごめん。起こしちゃったかしら?」


二人に体をがっつり掴まれているため身動きが取れない智香子。

問われた二人は首を振り、あくびをした。


(………双子みたい………。)


心の中でつぶやく智香子。するとベネッタが眠そうな声で言った。


「…………『流せ』……………。」


瞬間、体の汗や汚れが落ちた感覚が。

寝起きのため驚きの表現が薄いが、智香子は感動したから思わずつぶやいてしまった。


「……いいなぁ、魔法……。」


次の瞬間、ぐわっっと勢いをつけて二人がこちらを向く。

その目は寝起きとは思えないほどランランと輝き、


「「やってみる?」」


あまりの迫力に、「はい……。」それ以外の答えが思いつかなかった。


だが腹が減ってはなんとやら。


家に帰ってからにしようと話をしていたところで扉がノックされ、クリストフとアリシスが顔をのぞかせた。


「おや、三人とも起きてたのか。おはよう。」


悠然と入ってきた二人に戸惑う智香子だったが、ここがこの一家の所有物であり、良く訪れる場所ならうなずける。

するとアリシスが智香子の頭に触れた。


「……うん、大丈夫ね~。」


どうしたのかと不思議に思っていると、


「母さん、オレたちがそばにいたんだ。怪我させるわけないだろう。」


「まったく。」


なるほど、怪我の確認をしていたのか。


しかし疑問が。なんで頭に触れただけで分かったんだ?

普通怪我って見て確認するものなのに。

そう智香子が首をかしげていると、突然クリストフが言った。


「では、帰ろう。」


「え?」


そして瞬き一回の後、風景はがらりと変わり、あの家の前にいた。

「え?え?」と驚きを隠せない智香子を連れて、一同は家の中に。


すでに朝食が用意されていたため、木でできている机にクリストフとアリシスが並び、向い側にカロラス智香子ベネッタの順番で座る。


フォークとナイフを持たされ開始した朝食に、智香子は付いて行けないと呆然としていたのだが、両隣の二人が「あーん」をしようとしたため、慌てて目の前の食事を口に入れる。


そして智香子は目を見開いた。

その、美味しさに。


「っ、おいしい!」


甘い蜜をのっけたパンケーキに、さらに甘いクリームをふんだんに使用したそれは、甘党の智香子を魅了した。

微笑ましい目で見てくるレッドフィールド家を置いて、口に頬張っていき、


「ふぅ~~~。ごちそうさまでした。」


瞬く間になくなった甘々パンケーキ。アリシスが嬉しそうに


「こんなにおいしそうに食べてくれるなら、作り甲斐があるものね~。」


と言っていたのを聞いて、恥ずかしいような、うれしいような気分になった。


それからゆっくり、できるわけもなく。

いつの間にか食べ終わったカロラスとベネッタに引っ張られるように外に連れ出された智香子は現在、魔法を使おうとしているところだった。

カロラスが思案顔で言う。


「チカは二十歳か………。体内の魔力は普通五歳で安定するけど、今まで使ったことがないなら安定してないだろうな。」


チカ、という呼び方が気になったが、愛称のようなものだろう。

智香子という名前が呼びにくいのかもしれない。


そしてとりあえず基本中の基本、火か水か風か木を生み出すということになった。

クリストフとアリシスはゆったりとこちらを見ている。

智香子は一番危険じゃない、もし失敗してもただ濡れるだけの水を生み出すことにした。


「じゃぁ、水が流れるのを頭の中に思い浮かべてみて。」


水が流れる………川………?


「次に、その水を手から流れ出る様子を浮かべる。」


ふむふむ。水鉄砲………。


「ここで一言!『初級水魔法・水(アクア)』!」


カロカスが叫ぶのに続いて智香子も


「アクア!」


腹に力を入れて渾身の声を発した結果。


「…………………………………。」


「「「「…………………………………。」」」」


水は出てこなかった。

一滴も。

固まる智香子に、ベネッタは首をかしげた。


「あれ?水が出ない………?」


基本中の基本、要するに幼児でもできる魔法を智香子が使えないことが不思議な四人は、あーだこーだと話し合いを始めるが、当の本人である智香子は違った。


(っ、これって、魔法が使えないパターンじゃないの?!)


転移・転生モノの小説を読んだことがあるが、魔法がチートの転移・転生者もいれば、その逆の話もあった。

するとクリストフが智香子に歩み寄り、


「すまない、調べさせてもらう。」


とだけ言うと、手のひらを合わせて智香子の目をじっと見つめた。

その数秒後。

息を吐いたクリストフは眉を下げ、言いにくそうに言った。


「ふむ……………。やはり”魔力なし”だな。」


(ははは…………やっぱりーーーー!!)


自分が想像していた通りの結果になり、肩を落とす智香子。

そんな智香子を気遣うように声をかけてくれる四人。


「大丈夫だ。魔力がなくったって生きていける。」


「そうよ~。ちょこっと面倒になるだけ~。」


「お前が危ない目にあいかけたら、オレが助けてやる!」


「アタシも守る。」


「ははは……………ありがとう…………。」


ふと智香子は頭にあることが浮かんだため、たずねた。


「この世界って、戦争とかあるの?」


日本生まれの日本育ち、戦争のない日常を過ごしてきたから、戦争のあるなしは大変気になるポイントである。

もし戦争があるのなら、魔力がなく、魔法が使えないことは痛手というか…………。


どうか戦争がない世界で!お願い!と願うも意味はなく。


「あるわよ~。」


アリシスの軽い一言によって打ちのめされてしまったのだ。


(じゃぁ、魔力がないのって危ないじゃない!)


防御することも、攻撃することもできないから、身を守れない。

逃げようとしても、サバイバルの知識がないからすぐに命を落としてしまう。

結局最後に待っているのは、”死”だ。


智香子は考えた。命が助かる方法を。


そしてひらめいたのだ。


「っ、剣を極めればいいんだわ!」


魔法が使えないのなら、それ以外の防御や攻撃をする方法で生きればいい!


良いことを思いついたと喜ぶ智香子とは反対に、四人の反応は「は?」である。

カロラスが慌てて口を開いた次の瞬間、


フワッ


と、どこからともなく風が起こり、風の渦が生まれた。

飛ばされないように体を固くする智香子とは反対に、四人はリラックスしていて、


「おや、思ってたよりも早く帰ってきたようだな。」


そのクリストフの言葉の後、風の渦は止み、そこから現れたのは、黒髪赤眼の美青年。

質素な服を着ているも、体つきや雰囲気から一般人ではないということがうかがえる。


彼はふぅ…と息を吐くと、


「ただいま。」


と言って首を回した。


「はぁ、疲れた……。爺さんたちが仕事を押し付けてきたんだよね………ん?」


そしていつもとは違う、智香子の存在に気づき、


「…………………え、幼児誘拐?」


「違うわ!!」


すねを蹴られたのだった。

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