表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移小人の奮闘記  作者: 三木 べじ子
第1章
6/150

第3話:レッドフィールド家との出会い②

家を飛び出した智香子はとても大切なことに気づく。


(ここって異世界じゃないの!)


現在森の中。

横を見ても前を見ても木ばかり。

どこに家があるのか、すでにわからない。なぜなら、無我夢中で走ってきたから。


止まったことで膝と肺に限界が来たようで、思わず近くの大木の根本に腰を下ろし、一息つく。

見上げてみると、とても高いところまで木は伸びていることに気づき、


(クレーンでも届かなさそうね………。)


なんて現実を拒否し始める。

徐々に冷静になって来たところで、智香子は自己嫌悪のため息を吐いた。


「あぁ、何で飛び出しちゃったんだろう・・・。」


二十歳なのに十歳と間違われた位で、身長が高い位で、キレて逃げ出してくるなんて。

それこそ十歳じゃないか。

はぁ…と再度ため息が漏れる。


「バカなこと、しちゃったわ・・・。」


謝りたいけど、上手に謝れる自信などないし、そもそも家が分からない。

これからどうしようか。

空をオレンジ色に染めながら沈んでいく太陽を見て、智香子は思う。

恐らくあと数十分もすれば、夜へと変わるだろう。

そんな中、先ほどの家を必死に探すか。もしくは、一夜を過ごせる寝床を探すか。


うんうんと唸っていると、


ズドンッ


「?!」


突然地響きがし、智香子は身をすくめる。

しかしその音の正体が分かったことで、体から力が抜けていく。


「あ、いた。」


その人物は智香子を発見するとほっと息を吐いた。


「えっと、ベネッタ?」


「うん。ベネッタ。」


そう言って智香子の横に腰を下ろす。

よくよく見て見ると、その額には汗の雫が浮かび、肩も息を整えるためにか上下を繰り返している。


自分を探しに来てくれたのか、一生懸命。


「ありがとう、探しに来てくれて。」


思わずこぼれた言葉を聞き、ベネッタは嬉しそうに笑った。

その年相応の様子を見て智香子は笑みを深めた。

ふと思い出したようにベネッタは空に向かって言った。


「『ラスを案内して』。」


ラス、とはあの美少年のこと?

なんでここで呼びかけるの?

と首をひねると、


「いた!!」


背後の巨木からカロラスが現れたではないか。

走ってきたのか息切れをしている。


「もっと、早く、言えよ…。逆方向に行ってた……。」


ごめん、と素直に謝るベネッタ。

驚く智香子を置いて二人は会話を進める。


「この闇の中で帰るのは危険。だから、一夜明かして戻ろう。」


「じゃあ近くにある小屋でいいんじゃないか?」


「あそこね。わかった。行こう。」


腰を浮かせるベネッタと、目的地に向けて足を向けているカロラス。

慌てて智香子は問いかけた。


「?!ちょ、どこ行くの?!」


まだ膝と肺が痛く、立てそうもない。

ということは言えないが、必死で訴えかけた。


無理だから!見て!私を!と。


カロラスとベネッタは互いを見合い、頷いて、


「?!」


カロラスは智香子をお姫様抱っこ。ベネッタはそんな智香子の手を握って歩き出した。


「いや、そうだけど、でもちがーーーーーーう!」


森に智香子の声が響いた。



       *



ギギギッと音を発しながら、ベネッタは小さな小屋の木製の扉を開けた。


「うん、平気そう。」


その後ろからカロラスと、カロラスにお姫様抱っこされた智香子が入る。

ちなみに智香子は精神的な疲れと身体的な疲れにより、ぐったりとしているのが現状だ。

そんな智香子を床にそっと降ろすと、二人は中の探索を始めた。


二人の様子を横になりながらみて思ったのは、手慣れているな、ということ。

先ほどのカロラスの言葉から、しばらく訪れていなかったものの、以前は使っていたことがうかがえた。

どこに何が置かれて保存されているのかを確認しているからだ。


そんな二人は外の倉庫や屋根裏から、保存食や数枚の毛布、乾いた薪を持って戻ってきた。


既に夜。

気温がグッと落ちたことにより、初冬並みの寒さだ。

智香子はその寒さに気づいていない。疲れの方が勝ってしまっているからだろう。


二人は智香子に毛布を掛け、保存食である干し肉を差し出す。

それを口の中に入れてみる。

始めて食べる干し肉はとても固く、しかし味がしっかりしているから美味しかった。


体を起こし、干し肉をちゅぱちゅぱとしていると、カロラスとベネッタが何かしている。


「?何してるの?」


カロラスが少し大きい壺のようなものに薪を入れているが………。

ベネッタが手をさすっているが……。


疑問符を頭に浮かべ、様子をじっと見ていると、突然ベネッタが壺に向かって手をかざし、


「『燃やせ。』」


そうつぶやいたかと思うと、ぼっと、壺の中の薪に火が付いた。

智香子は開いた口がふさがらなかった。


「っ、ま、法?!」


この世界は魔法が使えるようだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ