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転移小人の奮闘記  作者: 三木 べじ子
第1章
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第47話:魔力の魅力②

以前の話をいくつか訂正しています。

今後の話のために内容を変えた部分もあるので、今まで読んできてくださった方は確認してみてください!

怒りに震える妖精たちは、彼らの感情に作用されてか、風は強くなり雨も酷くなる。

後ろの方で「ぐぅ!」といった貴族たちのうめき声が聞こえることから、巻き付いている蔦も強くなったのだろう。


「なんでなの?」


風などの不可解な自然現象が妖精たちによって引き起こされていることの理由。

そして理由をたずねたことで怒り出してしまった理由。

理由を聞きたかったのにまた分からない理由が増えてしまった。


理由が何なのかわからない、ではない。

妖精たちに聞けないのなら自分で考えるしかない。

風と雨で正直立っているのもやっとという状態の智香子はなんとか踏ん張りつつも考える。


いくら妖精へのイメージが自由であるからといって、気まぐれで、というのはなさそうだ。

理由をたずねたことで怒り出したことからも「なんとなく」ではないだろう。

では何か、彼らが行動を起こした鍵があるはず。

そこで智香子は思った。

そもそも妖精たちは最初から、攻撃する、あるいは痛めつけることを目的としていたのでは、と。

大きな人間を吹き飛ばすほどの強風、視界を遮り道をぬかるませ逃げるのを困難にする雨、そして貴族たちを縛り上げる蔦。

どれも攻撃的である。

攻撃するということは、つまり、妖精たちは何かに怒ったのではないか。


(何に?)


思い出せ!と智香子はついさっきのことを振り返る。

領主の城に到着して、妖精との対話が終わったかと思ったら何やら貴族たちがカロラスを……


(そうだわ、カロラス!!)


なぜ分からなかったんだ!

智香子はハッとした。

思えば風が吹き荒れ始めたのは、カロラスが「人殺し」という言葉に叫んだあとではないか。

カロラスは妖精親和性が高く彼らに好かれている。

魔力が魅力と言っていたから、もしかしたらカロラスは膨大な魔力も持っているのかもしれない。

そんな大好きな相手が、傷つけられて苦しんでいる状況を見てしまったとき、怒らずにはいられないはずだ。


謎は解けたとばかりに智香子は雨風で見えずらい妖精たちを見上げる。


「カロラスでしょ!貴方たちが怒っている理由は!」


合っていた証拠に今まで無言だった妖精たちが話し出す。


『カロラス、ぼくたちのだいすきなひと』

『やさしくてあたたかい』

『にんげんはカロラスきずつける』

『カロラスやさしいからにんげんをまもろうとする』

『カロラスのおねがい、だからわたしもにんげんをまもる』

『カロラスのおねがい、だからぼくもカロラスをつれてかない』

『でもにんげんカロラスきずつけた』

『ふかくふかくきずつけた』

『これいじょうはだめ、カロラスつれていく』


「?!カロラスをどこに連れて行くの?!」


『ぼくらの国』


妖精の国、ということ?

だがそんなこと許せるはずもない。


「駄目よ、連れて行かせないわ!カロラスには帰りを待つ家族がいるの!それに、本人の許可なく連れ出すのは誘拐と同じよ!カロラスのお願いだからカロラスを連れて行かない、ってさっき言ってたわよね。それって前にカロラスを連れて行こうとしたけど、カロラスから「行かない」って言われたってことじゃないの?そんなカロラスが、勝手に連れていかれることに良い顔すると思うのかしら。」


『カロラスをまもろうとしないかぞくなんてかぞくじゃない』

『わたしたちがカロラスのかぞくになる』

『いまよりずっとたのしい』

『カロラスはおこらない、ぼくらのくにはしあわせ』

『カロラスもきにいるよ』

『いやなやつも、こわいやつも、じゃまなやつも、なにもない』

『カロラスはよろこぶ』

『よろこぶよ』


30もの妖精が笑顔で次々に言葉を紡ぐ様は恐怖である。

だがここで折れる智香子ではない。

ぐっと拳を握りしめる。


「なにもない、つまり成長できないってことと一緒じゃないの!人は困難を乗り越えてこそ、大きく成長するものよ!それは辛くて逃げ出したくなるくらい怖いものだけど、乗り越えたり打ち破らない限り、人はそれ以上前には進めないわ!貴方たちはカロラスから、カロラスが素晴らしい人物へ成長する機会を奪おうというの?」


自分たちの行動が、カロラスを不幸にしてしまう?

その可能性に気付いた妖精たちは自分たちにとって大好きな人間が不幸になるのは嫌なようで、ざわざわとし始めた。


このまま妖精たちが思いとどまれば、カロラスは連れていかれずにこの現象も止まる。

どうか、と願う智香子。

すると一体の妖精が代表して前に出た。


『カロラスつれていくの、カロラスしあわせになれない?』


「そうよ。カロラスの幸せを願うなら、連れて行っては駄目。」


『このまま、にんげんのくににいても、カロラスはしあわせになれない?』


「なれるわ。カロラスの今が不幸せでも、いつか必ず幸せになれる。」


智香子はじっと見てくる妖精の大きな瞳をそらすことなく見返す。

妖精たちは純粋にカロラスが大好きなだけで、そこに悪意は一切ない。

カロラスが幸せになれる方が良いのだ。


『カロラスがいつもみたいにたのしくわらえる、それなら、つれていかない』


「!!」


喜びに笑みが零れる智香子。

良かった。

カロラスが連れていかれると言われて、内心結構ハラハラしていたのだ。

こうして無事説得できてよかった。

早速今起きている現象を止めてもらおうとしたとき、妖精たちの後ろで突風が吹く。

『わー』『きゃー』と飛ばされていく妖精たちと、そんな飛んできた妖精たちを数体抱えながら風に踏ん張ろうとする智香子。


風が少し落ち着いたかな、と思い目を開けてみると、そこには4体の妖精がいた。

いずれも今まで見ていた30体の妖精たちとは違う。

グレードアップしていると言えば良いのだろうか。

身についている服や顔立ちもわずかにだが違う。


ふと妖精たちと対面したときに感じた違和感を思い出す。

カロラスが対話していた妖精とは違い、30体の見た目や話し方がやけに幼いのだ。


もしかしたら妖精たちの中には力関係などがあるかもしれない。

智香子がそう考えたのは、4体のうちの1体が、ほかの3体とまた違っていたからだ。

3体よりもさらに大きく、強そうだ。


30体の妖精の大きさは大体手のひらサイズ。

現れた4体の内の3体は智香子が抱きかかえられる人形サイズ。

そして残りの1体は、ほぼ智香子の背と変わらない、この世界でいうところの子供サイズである。


智香子の考えは、手のひらに収まっていた妖精の言葉で確実なものとなる。


『ちゅうきゅうようせいさまとじょうきゅうようせいさま!』


「中級と上級?」


『ちゅうきゅうようせいさまはぼくたちよりも、おおきくてつよいようせいさま!』

『じょうきゅうようせいさまはわたしたちよりも、もっとおおきくてつよいようせいさま!』

『どうしてここに?』

『だれかよんだ?』

『よんだ?よんだ?』

『よんでないよ~』


わちゃわちゃしだした妖精たちだったが、彼らが言うところの上級妖精が手に持っていた杖を少し正しただけでその場は静かになる。

貴族たちに巻き付く蔓はそのままだが、吹き荒れていた風や雨はすっかりなくなっていた。

少し足元がふらつくも、地面に足をしっかり付けた智香子は安心して息を吐きだす。

とりあえず風の壁がなくなった今ならカロラスに近づける!

そう意気込んでカロラスの元へ走ろうとしたとき、蹲るカロラスを包み込む膜が貼られる。

膜の中にいるカロラスは力が抜けたように目を閉じている。


「カロラス!」


手を伸ばすが遅く、そのまま宙に浮いたカロラスは上空にいる妖精たちのもとへ行ってしまう。


「ちょっと!カロラスに何するのよ!」


『人の世は汚く、自然で美しいものを汚す。この子もまた同じこと。人間の世に長い間置いておくよりも、我々が育てたほうが自然で美しいもののまま育つ。』


またか、と智香子はため息を吐きたくなる。

ようやく妖精たちを説得できたのに、なぜ、より厄介な妖精を相手にしなければいけないのだろうか。

ため息を吐かないようにしていたが、よく考えてみればため息を吐いてもいい場面だ。

深く深く息を吐く智香子に上空の妖精たちが反応を示した。


『なんだ、人間!上級妖精様のお言葉に不満を抱くか!』

『無礼だぞ!』

『魔力なしの人間ごときが、上級妖精様に逆らう気か!』


『別に構わない。魔力なし故に我の言葉の重みが理解できないのだろう。して、人間よ。何が不満だ?』


ふわふわと漂い、智香子の目線よりも少し高いところで止まる上級妖精。

ニコリと笑う姿は可愛らしいと感じる。

智香子は可愛らしいものが好きだ。

買い物に出かけると決まって雑貨店などへ行き、店の物を眺める。

一人暮らしをしていたから、というよりも智香子の性格上、必要だと思わないものは買わなかったが、それでも足を運んでよく見に行っていた。

妖精たちの可愛さも智香子の好みドストライクであり、しかも人形ではなく動く。

可能なことであれば遊んだりしたいと思っているが、生憎と智香子は魔力がないという理由から嫌われている。


そして何より、見下すような態度。


いくら可愛かろうと、その態度が気にくわない。


上級妖精が何か圧をかけているのか掌にいる数体の妖精がブルブルと震えていることに気づき、近くの地面に降ろしてやる。

パンパンと手を叩きながら空中に浮かぶ上級妖精を前に、智香子は手を伸ばす。

「まず、」と呟いた智香子を不思議そうに見ていた妖精たちだったが、その手が上級妖精の胸倉を掴んだ瞬間、ぎょっと目を見開いた。


「見下すな~~~~!!」


明日もう1話投稿いたします。よろしくお願いします。

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