第2話:レッドフィールド家との出会い
智香子は目を覚ました。
そして驚いた。
大きなベットの上で自分の体を挟むように抱きしめてくる少女と少年がいたからだ。
せっかく大きいベットなのに、三人で眠っているからとても小さく感じられる。
少女は己の胸に智香子の顔をそっと包み込むように抱きしめ、少年は背中から智香子の腰をぎゅっと抱きしめている。
(ど、どういう状況なの、これ…)
でも、とても安心する。
再び眠りそうになるのを必死に耐え、智香子は少女と少年に呼びかけた。
「あの、ちょっと?起きてくれる?」
よくよく見て見ると、少女は睫毛がとても長く、髪の毛は金色だ。
おそらく、いや、絶対美少女だろう。
すると後ろで身じろぎが感じられた。少年が起きたのだ。
呼びかけようと後ろを振り向くと、
「ん、起きたんだ。」
これまた儚げな超絶美少年がいた。
驚いている智香子を置いて、少年は少女に呼びかける。
「おい、ベル。起きろ。」
「ん~~~、起きた?」
「あぁ。」
気だるげに目を覚ました少女は、予想していた以上の美少女。
固まる智香子に、二人は首をかしげた。
智香子が思い出しているのは自分の家族のこと。
(あぁ、こんなところでも、美形がそろっている…)
そして再び気を失った。
*
「…目を覚ましたようだ。」
「あら、本当~?」
「ほら。」
そう言って顔を覗き込んできた女性は、破壊力がすさまじい笑顔で微笑んだ。
「くぅ!」
眩しい!
突然目を覆った智香子にオロオロする女性。
ふとここはどこで、目の前の人物は一体だれか気になった智香子は恐る恐る目を開ける。
そこには困ったように眉を下げた女性と男性がいた。
「突然顔を近づけてごめんなさい~驚いた~?」
智香子は慌ててしまったため、思わず、
「驚くにきまってるわ!距離感を考えて頂戴!」
その言葉を聞いて男女は驚いたように目を見開くが、直ぐに笑顔になった。
二人の態度に、智香子も驚く。
今まで智香子の言葉を聞いた人間は、驚いた後、無表情になるからだ。
“なんだこいつ”、“失礼な奴”と。
(なのに、笑ってる…)
智香子は思った。
変わってるなぁ、と。
それから説明してくれたのだ。
智香子は森の中で眠っていて、たまたま見つけたこの夫婦が家に連れてきた、と。
ふむふむと話を聞いていた智香子だが、一つ、少々気になることが。
「あの、一ついいかしら?」
「なんだい?」と訊ねてくる男性に、ではなく、今だ自分に抱き付いている少女と少年に、智香子は言った。
「いい加減、離れなさい。」
目を覚ましてからずっと抱き着いてくる二人。
引き離そうと頑張ったのだが、全く離れてくれなかった。
その後リビングらしき場所にて、自己紹介を行った。
「私はクリストフ・アルガー・レッドフィールド。よろしく。」
真っ黒な髪と真っ赤な瞳を持つ彼は四十は行っているだろうに、その魅力は減ることなく逆にあふれ出ている。
次は母親らしき女性。
「私はアリシスよ~。よろしく~!」
キラキラと光る金髪に、空のような青い瞳を持つ女性。
クリストフと同じ年齢だが、美しい容姿、凹凸のある魅惑的な体。さらに豊富な経験値が組み合わさり、彼女に目を奪われない者は男女問わずいないのではないだろうか。
するとぎゅっと抱きしめらたり、頭を撫でられる。
「…なに?」
その正体は、クリストフやアリシスではない。
ずっと離れない美少年と美少女だ。
「アタシ、ベネッタ。」
「オレはカロラスだ。」
撫でる手を止めることなく、二人は簡単な自己紹介を済ませる。
そんな二人の特徴だが、二人とも金髪で瞳の色がそれぞれ違う。
ベネッタが赤で、カロラスが青だ。
ベネッタはサラサラな金髪を腰まで流し、上品な令嬢という見た目だ。
だがぼんやりとした態度や喋り方、そして智香子の頭をナデナデしていて、その上品さが少々失われている。
カロラスは金髪を肩上まで伸ばしている。
しかし話してみると第一印象は崩れ、外で走り回る元気な少年だとわかった。
今も智香子に抱き付き、離れようとしない。
離れなさい!と身じろぎをする智香子に、クリストフとアリシスがクスクスと笑いながら
「ごめんなさいね~。私たちがそばにいてあげてって言ったものだから~、離れないのよ~。」
「まぁ、それだけじゃないだろうけど……………。」
そう教えてくれた。
最後のクリストフの言葉の意味が良くわからないが、二人のその言葉を聞いたことによって、智香子は自分を気遣って傍にいてくれた二人を無理やり引き離すことができなくなってしまったのだ。
(くぅ…)
その様子をみて、クリストフとアリシスはさらに笑みを深める。
しかし智香子には、それ以上に気になることがあった。
それはもちろん、身長だ。
「失礼かもしれないけど、身長を教えてもらえるかしら?」
そう問われた四人は不思議な顔をするも、すぐに答えてくれた。
「私は215だ。」
「私は189ね~。」
「アタシは158。」
「…オレは145.6だ。」
そして智香子は叫んだのだ。
「またかよ!」
また、自分よりも身長が高い奴らばかりじゃないか!しかも2mとか意味が分からない!と。
しかし、叫んだ智香子に反発した者がいた。
カロラスとベネッタだ。
「何言ってんだ?お前の年ならその身長は当たり前だろ?」
「そうそう。気にすることない。」
その二人に、智香子は言う。
「私は二十歳よ!」
すると周りが、雷が落ちたかのように静かになった。
全員が口を開けて固まっている。
智香子は分かっていた。彼らが何を考えているのかを。
そして動き出した彼らは口々に言う。
「二十歳?!」
「十歳じゃないの~?!」
「年下かと思ってた………。」
「嘘だろ?!オレよりも年上?!」
その言葉を聞いて、堪えられなくなった智香子は立ち上がり、
「見下すな~~~~!!!」
家から全速力で出ていったのだ。