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転移小人の奮闘記  作者: 三木 べじ子
第1章
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第44話:重い石③

「えっと、すまない。まさか君が、いや貴方が成人をむかえている女性だとは思いもしなかったんだ。」


「本当に申し訳ない。」そう言って頭を下げるジルベールに、智香子はふんっと息を吐いて気持ちを落ち着かせた。

なんせ元の世界でも散々チビだなんだと言われてきたのだ。今更言われたって二十年分の経験がある。

しかもこの世界は平均身長がそもそも高い。二十という年齢の女性だが異世界から来ている人間を子供と間違えることなど、まぁしょうがないことだ。


「…………………まぁ、私は大人だからね。許してあげるわ。」


しょうがないが、やはり僅かでもムカつくので、最後にジルベールの肩を智香子的には中々の強さで叩くことで勘弁してやることにした。

ありがとう、とにこやかに微笑んだジルベールの顔にやはりもう一発…と拳を握る。

しかし大人気ないと思い力を抜いた。


「そうだ、ジルベール。ちょっと良いかしら。」


未だにしゃがんだままの彼は「なに?」と首をかしげる。


「貴方、さっき自分の領地は王都とは少し離れているって言ったわよね?」


「あぁ。馬車だったら往復に一週間はかかるだろうね。もちろん途中には休憩所なるものがあるから、旅はそこまで大変なものにはならないけど。」


智香子は頭の中にクリストフから教えてもらったこの国の地形を思い浮かべる。

気候や特産品についても訪ねてみる。


「王都と比べて少し気温が低いくらいで突然の豪雨などの異常気象は起きない。特産品と言われたら加工品が一番だな。特に海の宝石である真珠を利用したアクセサリーが注目されているよ。平民も貴族も買うことができる品だからね。あぁ、でも農作や畜産にも力を入れているから、乳製品も質のいいものを作っているんだ。まぁ、辺境だから中々王都との商売が難しいところなんだけど」


「ふむふむ。最後に、治安の良さと住民の人柄について教えて頂戴。」


「?うん。治安は良いと思うよ。たまに外から来た人間を除けば、だけどね。住民は皆自立して生活していて人柄も大らかでさっぱりしている、かな。」


「なるほど…。」


悪いところではない、むしろ結構良いところだ。

王都から遠いところが難点だが、住み心地はすごくよさそう。


「役に立てたかな?」


「えぇ、良いことを聞けたわ、ありがとう。」


「どういたしまして。無礼のお詫びには遠く及ばないけどね。」


…なんだか根に持たれている。

これからもネタにされるだろうことを想像していると腕を引っ張られた。

正体はカロラス。全員からの挨拶が終わったらしい。

カロラスはジルベールを見る。ジッと観察するように。

そしてジルベールもなぜかカロラスに向かって跪いた。


「見たことがない顔だ……名前は?」


「ジルベール・ウェストリーと申します。現在ウェストリー領の領主代理を任されております。」


「なるほど、辺境か。どうりで見たことがないと思ったんだ。俺もまだまだ勉強不足だな。」


「滅相もございません。その後年齢でそれほどの知識と知恵を備えられているのです。貴方様の謙虚さと実直さ。我が領民の子供にも見習わせたい。」


子供であるカロラスになぜジルベールが跪くのか違和感がある智香子だったが、カロラスの地位は結構高いことを思い出して口を閉じた。

それにしてもカロラスは自分よりも年が上の人間に対して、どうしてこうも堂々としていられるのだろうか?智香子は自分の幼少期のことを思い出してみるもののカロラスのように喋ることができていた記憶はない。


カロラスが途中でジルベールに立つよう指示をしたのか、気づけばジルベールの顔の位置は随分高いところにある。

まぁカロラスもいつかジルベールやダミアンの身長を超す日が来ることだろう。


ぼーっとしていたらジルベールが「それでは」と帰ろうとしているではないか。

智香子は慌ててカロラスから離れ、馬車へと歩いていたジルベールに駆け寄る。足の長さの違いか、ジルベールに追いつくころには少々息が上がってしまっていた。

後ろからカロラスが追いかけてきているのを感じ取りつつも、智香子はジルベールに屈むよう合図する。

疑問を抱きながらもジルベールは腰を折ってくれた。

カロラスには聞こえないように、そっと声を潜ませる。


「ジルベール、一つお願いがあるの。それは――――――――。」


「!?それはどういう……」


驚きと困惑の表情を浮かべるジルベールの肩を、智香子は強く押す。


「説明している時間は今はないわ。」


カロラスが自分の名前を呼んでいる。

馬車へ向かうよう再度智香子は肩を押した。

ジルベールは一瞬考えたものの、「分かったよ。後で聞かせてね。」と立ち上がり、追いついていたカロラスに一礼して去っていった。


ああして馬車に乗っていると、先ほどの気安さを忘れて普通にお偉い貴族のように見えてしまう。


「……チカ、何を考えているの?」


馬車に向かって手を振っている智香子は、振るのを止めずに目線だけをカロラスへやる。

何か戸惑っているのだろう。心配してくれているのかもしれない。

でも、今は話す時ではない。


(私のしていることは、ただの予防線だもの)


妙なことを言ってカロラスに不安を与えたくはなかった。


「フフフ、私も馬車に乗ってみたいなぁと思ったのよ。」


首をかしげるカロラスは、諦めたかのようにため息を吐き、「いつでも乗れるよ」と智香子と同じように馬車へと手を振った。

智香子はあまりにも自然に手が繋がれていたものだから、馬車が見えなくなってしばらくしてからようやくそのことに気付く。その時あまりにも驚いたもので、カロラスから「本当に20歳なの……?」みたいな目で見られてしまった。


さて、後はあの嫌な領主に報告するだけだぁ!と開放感に包まれていた智香子。


「あ、チカ。今の村は確かに村としては最後だけど、本当の最後は領主の城ってこと忘れてた?」


次の瞬間崩れ落ちていた。


「忘れてた……。」

待っていてくださった方もそうでない方も更新遅くなり大変申し訳ありません。

言い訳をさせていただくと、リアルの方が最近多忙でって、いやいや言い訳は駄目ですね!

ただこれから4、5カ月くらいはちょっと落ち着くんですけど、それ以降はまた忙しくなって更新ができなくなります。またお待たせしている身でなんとも恐縮なのですが、サイトの企画の方にも投稿したいなと思っているので、転移小人の投稿ペースはナメクジ並みかと思われます……。

そんな私ではありますが、続きをお待ちいただければ幸いです。

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