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転移小人の奮闘記  作者: 三木 べじ子
第1章
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第42話:重い石

「俺、皆みたいに普通の魔法が使えないんだ。自分の体内の魔力を使った魔法が。」


まるで罪を吐くかのように、カロラスは話始めた。


「本当は五歳くらいに魔力が安定する、って話は聞いたと思うんだけど、俺、魔力が安定するの遅くて。安定したのだって去年なんだ。

安定するまでは基本魔法は使っちゃいけない。自分の魔力が暴走して、周りに迷惑をかけるから。

でも俺、焦っちゃって。だって同年代の奴らは魔法使ってるのに、俺だけ何もできないって、辛くて。


その時は丁度、街でパレードが開かれていたんだ。俺も参加してた。

年に一度のパレードだった。”花の聖祭”と呼ばれるもので、重要な祭りごとの一つなんだ。街中のいろんなところに木で作られた塔があって、そこから花を飛ばすんだ。神に向けての感謝と誠意を表すために。


そして突然、木の塔の一つが倒れた。


俺は助けようと、した。使っちゃいけないって言われてた魔法を使って、塔を押し上げよう、と、したんだ。でも………………俺がやってしまったことは、さらに被害を増やしただけで、塔を押し上げようってした風の魔法は威力が抑えられなくて周りの屋台まで巻き込んで、傷つけただけで、俺、なにも」


知らず知らずのうちに、智香子はカロラスを抱きしめていた。

その体は震え、にじみ出た涙が服を濡らす。

ぎゅっと抱きしめてくる彼女の背に手を回し、背中に爪が食い込むほど強く強くすがり付く。


「っ、結局、兄さんたちが助けてくれ、たんだ。お、おれ、俺、たくさんの人を傷つけちゃったんだっ。だから、こうやって罪を償わないと、俺は、駄目だって、」


「ん?それ誰に言われたの?」


ぎゅうぎゅうとカロラスの自分よりも大きい体を抱きしめながら訪ねる。

ズズーと鼻水をすする音を立てて、少々つまりながらも「ぅ、貴族、の、子息、たち、だけど、」と教えてくれるカロラス。と、怒気を膨らます智香子。

敏感に智香子の怒りを感じ取ったため「?!ど、どうしたの?」と慌てるが、彼女は何も答えることはしない。


「フフフ……………本当に、禄でもない貴族がいるのね………………豚のエサにしてやろうかしら………………。」


「?!」


何やら物騒なことをつぶやく智香子だったが、自分を落ち着けるように息を吐いた。

今は怒るときではない、と。

気持ちを切り替え(いや報復は必ずやるけど)、カロラスの頭を撫でる。


「言いたくないこと、教えてくれてありがとうね。」


「……………………………。」


何かを、言いかけてカロラスは口を閉じる。

智香子は話すことを強要しようとしない。ただ自分から話してくれるのを待つ。

もう一度ポンッと頭を撫で、「寝ようか。」と言って、一緒に布団に入る。

いつもは智香子を抱き込んで眠るが、今日は智香子がカロラスを抱き込む。


カロラスはまだ言えないことがあるもののそれを許して受け入れてくれる智香子に、申し訳ないと思いつつも、暖かいものが心に広がっていくのを感じた。


やがてカロラスの寝息が聞こえ、智香子は瞼を閉じた。


あの震え。よほどつらい記憶だったのだろう。

必死に話をしてくれたカロラスは、まだ何かを抱えている。


(私に何かできないのかな…………。)


大切な、それこそ弟のように思っているのだ。

あと一日この領地で仕事をする中で、きっとカロラスはまた傷つく事があって、そのたびに我慢するはずだ。特別な力はないが傍にいたい。


智香子は目を閉じた。

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