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転移小人の奮闘記  作者: 三木 べじ子
第1章
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第40話:カロラスへの来客④

領主の屋敷にでも行くのかな?なんて思っていたが、違うようだ。数台の馬車の近くに椅子と机が用意されており、男とその妻が座る。

しかし、カロラスは座ることなく立ったままだ。なぜなら椅子が二つしかないから。


おいおい、と智香子は思う。来客に対して、それは礼儀としてどうなのか、と。

喧嘩腰で一歩踏み出すが、ガトーに止められる。

”約束を忘れたのか” そういわれているようだ。

善処するといったものの、さすがに言われて数十分で破るのは大人としてダメだろう。


ぐっと我慢してカロラスの元まで小走りで近づき、その手を握る。

驚いたカロラスが手を放そうとするけど、否定するかのようにぎゅっと更に力を込める。

何もできないけど、せめてそばにいる。

そんな思いを伝えられるように。


伝わったのか智香子にはわからないが、カロラスはふっと笑って仕方がないと握り返してくれる。


ニヤニヤ顔を継続している男は智香子の存在に気づき「なんですか、その子供。」と口を開いたがすぐに興味を失ったのだろう。


「ここは養護施設ではないのですがねぇ。」


嫌味を一つこぼして本題に入った。

といっても、確認事項を淡々と行うだけだった。男たちの執事とカロラスが。

ガトーも加わり地図を確認しながら話を進める。


「今回申請があったのはこことこことこことここ………そして最後に屋敷もお願いいたします。」


「計五か所。………一日で回るのは難しいでしょう。宿を用意していただいても?」


「もちろんでございます。」


「今日中に三か所は行ける。四か所目との間にある宿を頼む。」


「かしこまりました。」


話は終わったようだ。

椅子に座って紅茶を飲んでいた男と女はようやく終わったか、と腰を上げる。


(いや、お前たちなんもしてないでしょうが!何一仕事終わった~~みたいな顔してんのよ!)


またもや怒りが沸き上がりそうになるも、カロラスからギュッと手を握られる。

はっとその顔を見てみると、「余計なことしちゃだめだから」と言っている。気がする。

とりあえず男の方はあからさまなズラが風にでも飛ばされるように、そして女の方はそのハイヒールで何かの動物のフンを知らないうちに踏むように願っておこう。


「それでは、さっそく目的地へ向かいましょうか。」


ガトーの声により、カロラスの仕事が始まった。



その仕事内容はというと、妖精との対話だった。


それぞれの領地で問題は日々勃発する。その中で魔獣が出たりと村人の手では解決できないことが時々起きてしまう。

そんな時のため、その地に住む妖精に力を貸してもらう制度がある。

まず領民から領主へと申請、領主は城へと申請。

そして国の中にいる妖精親和性という妖精との親和性が高い人間が派遣されるのだ。


という説明を道すがらガトーとカロラスに受けている智香子は一つ疑問があった。


「なぜカロラスが派遣されるの?それこそ、カロラスよりも大人はたくさんいるでしょう?」


しかしガトーは「無理なのです。」と首を振る。


「カロラス様はこの国でも上位の妖精親和性をお持ちのお方。それに………どうしようもない理由が、ありまして。」


どうしようもない理由。言い淀むガトーに代わって教えてくれたのは、カロラスだ。


「あいつら直々のお呼び出しなんだ。だから、逆らえない。」


高位貴族。

彼らは言った。「高位の身である我らのもとに、卑しい身分の人間を派遣するのか。高位の者には高位の者を派遣するのが正しいことだ。」と。

カロラスは奴らからの直々の呼び出しに加え、見合った身分を持っているらしい。

確かにガトーが様付けしていたり、先ほどの男も敬称を外してはいなかった。態度はくそだったが。


ただどうも実感がわかない。レッドフィールド家が高位の存在というのが。


(だってほとんど家にいて、街に出るのはあまりないしなぁ…。ほとんど自給自足っぽいところあるし。まぁたまに出掛けて仕事してるけど、今のところダミアンは騎士、クリストフさんとアリシスさんは事務職?らしいし………。高位には思えないけど………。)


勉強の中で教えてもらった、元の世界にはない地位について。

順に公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、士爵、そして平民。


その頂点に君臨するのは王家。

代々不思議な力を受け継ぎ、この国を繁栄に導いている。


だが智香子はここまでしか教えてもらえていない。なんだかこの国に関してはまだまだ知らないことが多い。未だに国名もわからないし……。一応、住んでいる人間として国名と王様の名前を知っていた方がいいと思うのだが、毎度質問をするたびに躱されてしまっている。


なぜだ?


まぁあの男の地位は思っているよりも高くないかもしれないし、


「ちなみに領主は伯爵位だ。ゲットル伯爵家。」


……………ガトーさんの丁寧な話口調は通常運転かもしれないし、


「ガトーの口調は人によって変わるなぁ…。」


「そうでございますね。見習いなどの者たちから「身分が低いのは自分たちなのに、敬語を使わないでください」と言われてからは、下の身分の者には極力敬語を使わないようにしております。」


……………なんだ、なんだよ。なんで私の考え否定することばっかり二人は言うんだよ!

ぽつりとカロラスが「ガトーは侯爵家だからな。」とか言っているが、何が言いたいんだよ!


まるで心を読まれているかのように紡がれる会話に腹を立てる智香子。


「それならガトーさん、なんで私には敬語使ってるのよ!」


「ん?極力、使わないようにしているだけですよ。それに敬称をつけることはやめたではありませんか。」


「だからいいでしょ?」みたいに言わないでくれ!敬語も取ってくれ!

と言いたかったがガトーの言葉に上手く丸め込まれてしまい、結局敬語はそのままに加えて智香子からガトーへの敬称を外させられたのだった。


「はい、チカコ。言ってみてください。」


「ガ、ガトー…、っ、ぅわぁああああああ!」


敬称を外すのは辛い!!

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