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転移小人の奮闘記  作者: 三木 べじ子
第1章
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第39話:カロラスへの来客③

転移魔法陣への道を、智香子はカロラス、ガトー共に歩く。

ベネッタはお留守番だ。曰く、


「アタシは力になれないし、悪化の原因になってしまうから。」


らしい。送り出される前には何度も怪我をしないよう言われ、最後に綺麗な腕輪をつけてもらった。一体どんな腕輪なのか尋ねてみたが教えてもらえず、外さないことを約束させられた。


カチリ


「?」


その時、どこからか音が聞こえた気がした。


そしてテクテクと歩いていると、ガトーが口を開く。

背中は以前伸びたままだ。


「チカコ…一つ覚えていてください。今から向かう場所は決して気持ちの良い野原ではない、酷く空気の悪い地獄です。ですが、例えどれほど耐えられなくなっても、思うがままに行動してはなりません。もし行動してしまった場合、その被害は貴女だけが被るのではなく、周りの人間にさえも影響を及ぼしてしまうことでしょう。」


「……どうしてなのか、って聞いたら教えてくれる?」


しかし彼は首を横に振った。

簡単に口にできないことなのだろう。その原因の元を大まかにだが表現する言葉さえも。

どうせ後になれば分かる。

智香子はガトーの言葉に「善処するわ。」とだけ返した。

確実な約束なんてできない。だって大切な人が傷つきそうになったら耐えられないし。


転移魔法陣に辿り着き、智香子が転移にまだ怖いため三人で手を繋ぐことに。

本人は「怖いわけ無いでしょ!」と訴えていたが、最終的になぜか右にカロラス、左にガトーの絵が出来上がっていた。


(なぜ…?)


すると、カロラスが繋ぐ手に力を入れていることに気づいた。

その顔を見ていると、なんとも言えない、でも、その表情はまるでーーーーーーーー



「カロラス…?」



「チカ、お願い。何があっても、何もしないで。」



転移魔法が発動する直前、カロラスは言った。

声に強い懇願を込めて。




目を開けるとそこは見知らぬ土地。

そしてパッと両手を離されたかと思ったら、嫌味ったらしい声がかけられた。


「遠いところをわざわざお越しいただきありがとうございます、カロラス様。」


丁寧な言葉。しかしその裏には明らかな侮辱の感情が感じ取れた。

声の主は腹の出た男。高級な服に高級な飾りたちを纏わせ、見せびらかすように踏ん反り返っている。

その近くには妻と思われる女性。彼女もまたニヤニヤとした顔を隠そうともせずにいる。

だがカロラスはその嫌味をものともしないで「構わない。」と告げる。


「早く案内してもらおう。」


転移魔法陣から素早く離れて歩き出すカロラス。

自分たちの行動に一切感情を揺らされていないカロラスに男は舌打ちを隠そうともせずにし、「では」と案内のため動いた。


その一連の流れを智香子は呆然と見ていた。いや、見ることしかできなかった。

そしてガトーの言葉を理解した。

不快なことを言われても耐えなければならない理由。大っぴらに詳しい説明ができない理由。単純だ。


あの男の地位が高いからだ。


もし何かしてしまえば、レッドフィールド家ばかりでなくこの領地の村人たちにも被害が向かってしまう、きっと。


後ろの方には村人と思わしき人々が頭を下げていた。彼らからはカロラスへの悪意を感じることはない。逆に感謝や心配を感じられた。

どうやら領主らしき男たちと村人では何か違うらしい。


チカコ、とガトーに名前を呼ばれてハッとする。

既に動いていたカロラスと大分距離がはなれてしまっていた。

「ごめんなさい、ぼーっとしてたわ。」と後を追う。その際智香子は言った。


「ガトーさん。言えなかった理由は、こういうことだったのね。」


彼は後ろにいたので顔を見ることは出来なかったが、苦笑しているのだろう。


「ハハ…。チカコは鋭いですね。それに、変わっています。」


どういうことだ。こら。小さい声で言っても聞こえているんだぞ。

というか、ガトーも中々変わっている。初対面なのに、智香子を子供扱いしなかったのだから。

しかし今のセリフは肯定の証。


前方を歩くカロラスのまだ小さい背を見て心がざわつく。


(…なんだか嫌な予感がするわ。)


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