第38話:カロラスへの来客②
静かな森の中を、智香子は走っていた。
カロラスを探すために。
「ラスは森の中にいる。木の上に登っていると思うから、頭上に注意して探して。」
ベネッタがカロラス家出について驚くことなくそう言ったので、智香子はこれがよくあることなのだと理解できた。
来客であるガトーも交えて三人で、カロラスを探す。
「カロラスー!どこなのー!!」
呼びかけながらも智香子は内心焦っていた。
もしこのまま見つけられなくて、カロラスと二度と会えなくなってしまったら?
もし獣に襲われてでもしたら?
(どうしようっ!!)
急いで見つけなきゃ!と意気込む智香子に、声がかけられた。
「いや、そんなことならないから。」
「カロラス!」
高い木の枝に軽々と乗っていたカロラス。
ほっとした智香子だが、再び慌てることになる。なんとカロラスが木の枝から飛び降りたのだ。
「?!」
さぁっと血の気が抜けた智香子の心配を余所に、カロラスは軽々と地面に足をつけた。
「ちょ、カロラス!危ないことしちゃだめでしょう?!」
「ん?危なく無いんだけど…。」
と言って、彼はすぐに謝罪した。心配と心配と心配が溢れる智香子がこちらを見ていたからだ。
もう逃げたりしないよう、智香子はカロラスと手を繋ぎながらベネッタ達と合流するために元来た道を戻る。
手を繋ぐことに関してカロラスは何もいうことはなかった。
「ねぇ、カロラス。なんで逃げたりしたの?」
巨大な木々の隙間を歩きながらたずねる。
来客(といっても始めての来客だが)を放って逃げるような子じゃ無いのだ、カロラスは。
智香子の問いにカロラスはすぐには答えなかったものの、数分考え込んだ後、ようやく口を開いてくれた。
「……嫌、だった。オレが簡単に付いていって、命令通りに行動することが。奴らに、馬鹿にされることが。」
反抗期のようなものかと一瞬思ったが、その考えを否定する。
だってあまりにも、カロラスの表情が苦しそうだったから。11の子がする表情じゃない。
気になったがベネッタとガトーが現れたことにより聞くことは出来なかった。
二人を前に、カロラスはひどく嫌そうな顔をしつつも「…ごめん。行く。」と言った。
ベネッタは眉を寄せて辛そうに、ガトーも苦しそうにしている。
「申し訳ありません、カロラス様。このようなことをお願いするのは些かどうかと思うのですが…。」
「いや、ガトーは悪くない。それにみんなのためだし。」
じゃぁ、行こう。
ガトーに連れられどこかへと向かおうとするカロラスを、智香子は腕を掴むことで引き止めた。不思議そうな顔をする三人に、智香子は言う。
「私も行くわ。」
と。すぐにベネッタとカロラスに猛反対を受ける。
だが智香子も引くことなど出来はしない。
「絶対について行くわ。足にしがみ付いてでもね。」
「いや、だから!危険な場所なんだ。嫌な奴らも沢山いるし、味方なんて自分だけなんだぞ?」
「それで?」
全く話を聞き入れてくれないが、なんとか留まって欲しい。
本当に危険なんだと。自分たちのせいで傷つけたくないと。そう思っているが故に、止めたい。
だから二人は再度口を開くも智香子に遮られてしまう。
「そんな危険な場所に、どうして私の大切な家族を一人で送り出さなきゃいけないのかしら?」
でも二人が抱いている感情を、智香子も持っている。
「カロラスが傷ついて帰ってくるのを黙って指加えてみてることしかできないなんて、ごめんよ。それに、私はただの守られている子供じゃないわ。自分の身くらい自分で守れるし、なんだったら向かってくる奴らを全員なぎ倒してやるわよ。」
だから、と彼女は続けた。
「私も一緒に行く。」
二人はまだ反対したかった。いや、こう思っている時点で、彼女の心を見ている時点で、どちらが折れるのかなんて明白だ。
ため息を吐き頷いてくれた二人の頭を撫でながら、その後ろにいる人物、ガトーへと目を向ける。
智香子の視線を受け、素早く察したガトーは微笑みを浮かべて頷いた。
「どうぞ、ご一緒に。」
「ありがとう、ガトーさん。」
それから一度家に帰った四人は、軽い準備を済ませた。
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