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転移小人の奮闘記  作者: 三木 べじ子
第1章
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第33話:帰宅②

次に智香子が目を覚ました場所は、数日過ごした砂の上ではなく、なじみのあるベットの上。

眼前にはベネッタ、背後にはカロラスがいて、いつもと同じように三人で眠っていた。

この、いつの間にか当たり前となっていることに、


「帰ってきたんだなぁ…………。」


と、しみじみとした。


窓の外は真っ暗で、二人が眠っていることから今は夜遅いのだろう。

起こさないよう注意を払い、智香子は部屋を出て一階へ向かう。

別に腹がすいているわけではなく、のどが渇いたから水を飲もうと思ってのことだった。


階段へ足をかけた時、下の方から淡い光が見える。

こんな時間に誰か起きているのかな?

足音を立てないように降りると、クリストフにアリシス、ダミアンの三人がいた。

テーブルを三人で囲み、その上には魔法のランプ、そして年季の入ったワイン。


(なるほど、大人の話し合いをしているのね。)


すると智香子の存在に気づいた三人。


「おや、チカコ。起きたのか。」


「お腹減ったの~?何か作りましょうか~?」


アリシスの声に、慌てて手を振る。


「大丈夫!喉が渇いただけよ。」


「あら~、そう~?」


「遠慮しなくてもいいのよ~。」と相変わらずの優しさで気遣ってくれる。

そしてダミアンがこちらに向けて手招きする。

話に混ぜてくれるようだ。


トコトコと近づきダミアンの横に座ろうとしたのだが、


「え?」


気づかぬ間にダミアンの膝の上に。

あたふたとする智香子を面白いものをみるように笑う。


(くぅ~~~~!子ども扱いされてるわ!)


ひっぱたいてやろうか?とも思ったが、そんな力は今どこにもないし、何よりそれさえも笑って受け入れるダミアンの姿が目に浮かぶ。

はぁと息を吐き、自分のために注がれたワインをチビチビと飲んでいく。

水が飲みたかったが、これもまぁ飲み物だ。

酔わないようにしなければ。

ちなみにダミアンたちのワインは、水のようにゴクゴクとなくなっていく。


……………………大丈夫なのかしら。


むしろワイン瓶そのまま飲んだ方がいいのでは?と言いたくなるほどのハイスピードで飲む彼らは、再び話し合いを始めた。


「砦の様子はどうだった?」


「目測だけど高さ約七メートル、全長約八千平方メートル。建物は全部で4つ。全体を見渡せるような場所に屋敷があった。食糧や資材は転移魔法を使って運ばれてきていたけど、転移魔法陣がどこにもなかったからね。巨大な魔法を使える人間がいるよ。奴らが行動を始めたのは3か月前。戦のために基地を作っていたらしい。親玉はグードリス・ヤンマーン。どこぞの貴族、ということしかわからなかった。金で雇った男たちを使って、基地完成の為の人材を両国から誘拐していたみたいだ。」


聞きながら、トイヤッグに聞いた話のままだな、と思った。

クリストフはクルクルとワインの入ったグラスを回している。

その顔に微笑をのせて。


「それで?それだけの情報しか探れなかったということは、何かあったんだろう?」


「うん」と頷いたダミアンは、


「話を聞きだしていたとき。不思議なことが起きた。」


コクリとワインをのどに流し込んだ。


「グードリスと黒いローブの男たちだけが、突然消えたんだ。」


「?!」


「転移特有の光も人間も現れず、隠されたかのように突然ね。残された男たちにたずねると、「知らない。」「約束が違う。」と暴れ始めた。」


「本当に大変だったんだって」と彼は他人事のように笑うが、謎の減少について考えているのが分かった。

クリストフとアリシスも、そんな魔法を知らないのか考え込んでいる。

智香子は場違いにも神隠しのようだなと、元の世界にあったある映画を思い出した。


ダミアンはグラスを机に置いたかと思えば、智香子の頭に顎をのせ、その小さな手をいじろうとするが、ぺしっと叩き落されてしまう。

ワインを飲んでいるのだ、邪魔をするな。

アイタタタ………………。と痛がっているが、とても痛そうには見えない。


「あっ、ダミアン、一つ質問してもいいかしら?」


本当は会話に入る気はなかったのだが、これは聞かなければ。

「何?」と聞いてくれるダミアンに智香子は問いかける。


「誘拐されてしまった人たちの今後はどうなるのかしら?」


この国(どこにあるのかは知らないけど)にも誘拐された人はいる。

だが、シルナリヤス国やアドリオン国の人たちはここじゃないところへ帰らなければならない。

そんな智香子の心配が伝わったのか、ダミアンはニコッと安心させるように笑った。


「大丈夫、心配はいらないよ。彼らが自国に帰りたいというのなら最後まで送り届けるし、この国にとどまるというのなら安定した生活を送れるよう援助するつもり。」


「そう。シルナリヤスの人たちも、アドリオンの人たちも、無事に帰れるなら安心ね。」


ほっと息をついた智香子は自分を抱えるダミアンの顔が固まっていることに気づかず、残りのワインをのどに流し込む。

うーむ、少しずつしか飲んでいないのに、ちょっとフラフラするなぁ。

ダミアンの腕をたたいて降りたいことを示せば、彼はすぐに放してくれた。


「邪魔して悪かったわね。」


そう言って二階へあがろうとする智香子を止めて、クリストフとアリシスは言った。


「お帰り、チカコ。君が無事に帰ってくれくれたことがとてもうれしい。」


「うふふ、私も~。お料理の作り甲斐がないもの~。すっごく嬉しいわ~。お帰りなさい、チカちゃん~。」


「…………………ふん、大げさよ。…………おやすみなさい。」


足早に階段へ向かうその耳は、分かりやすいほど真っ赤だった。

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