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転移小人の奮闘記  作者: 三木 べじ子
第1章
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第21話:言い争いは誰も食わない②

はっと本来の目的を思い出した智香子は、アイザックにここに来た目的を説明した。

そして説明が終わった時、三人以外の別の声がその場に響いた。

今まで寝ていたと思っていた人物であった。


「なんで、そんなことを嬢ちゃんがするんだ………?」


暗くて表情は良くわからないが、戸惑っていると分かる。


「地下室から出てきたなら、逃げればよかっただろ…………。なんで、オレらを助けようとしてくれるんだ………?」


問いかけのようでいて、ただのつぶやきだった。

また、彼以外にも目を覚ましていた者がいたようで、こちらをうかがうように見ている。

彼らがここに連れてこられて、働かされて、人によっては長い月日が経っている。

そんな中で、もちろん狂った人間、死んでしまった幼子、逃げようとして殺された者。

たくさんの末路を見てきた。

いつか、自分もそうなる。きっと、そうなる。

そんな恐怖と戦いながら、明るくふるまっているのだ。


しかし、この少女は違う。

必ず死ぬと言われる場所へ自ら進んで行き、なおかつ抜け出し、逃げ出さずに助けに来た。


少女は言う。


「誰にも死んでほしくないからよ。だって、誰かが死んでしまったら、うまく逃げられても後味が悪いでしょう?まぁ、要するに、私は私のために、私がやりたいからやってるだけよ。」


冷たい言葉。

だが、眠る子供にそっと毛布を掛ける姿は、言葉とは裏腹に優しくて、幼い彼女が一瞬、大きな大人に見えた。

そして、逃げること、生きることを諦めていた彼らはもう一度、勇気を取り戻す。


ぐっと拳に力を入れて、彼は言った。


「嬢ちゃん、聞いてくれ。伝えたいことがある。」


アイザックとウィリアムに持ってきた荷物を預け、智香子と男性―――トイヤッグは、誘拐犯たちの建物とは逆方向の出口に腰を下ろした。


「今から嬢ちゃんに話すのは、この場所について、だ。オレたちがなぜ壁を壊さなきゃいけねぇのか。ここに皆を連れてきている奴は誰なのか。オレが知っている限りのことを、嬢ちゃんに伝える。」


「うれしいけど………ここに来て一日の私に、そんなこと話しちゃっていいの?私が誘拐犯側の人間かもしれないわよ?あなた達を油断させてもっと働かせるつもりかもしれないわ。」


にやっと笑ってそう問えば、トイヤッグはガハハッと口をあけて笑った。


「そうさな、それももちろん考えたが、直ぐに切り捨てた。有り得ねぇってな。」


次いで、とても魅力的な笑みを浮かべて、智香子を見る。


「だって、こんな可愛い嬢ちゃんが、誘拐犯側なわけねぇだろ?」


と。

まったく、こんな時に冗談を言う暇があるのか………。

これから先の不安に手を頭に置いた智香子を見て、トイヤッグは目を細める。


「まぁ、本当はいろいろあるけどな。」


「……………言う気はないのね。」


「そのとおり!」いたずら小僧を相手にしている気分だ。

はぁ、と再度ため息がこぼれる。トイヤッグは、()()()()、工事現場で働いていそうな明るい四十代後半くらいのおじさんだ。髭も生えているし、白髪だって見える。


しかし、と智香子はトイヤッグを見る。

がっしりしている筋肉、ダミアンほどありそうな身長、そして髭をそれば出てくるであろう端正な顔がうかがえる。白髪だって若い人間にも生える。

つまり、彼は二十代後半、または三十代前半ということだ。


(この世界は身長が高いからか、年齢が分かりにくいわ…………。)


それに慣れ始めている自分も自分だが。

智香子はトイヤッグを促した。


「さぁ、話を聞かせて頂戴。私は暇じゃないのよ。」


夜が明けるまでまだ六時間程度はあるだろう。

だがいつ見張りの人間が来るかわからない。急ぐに越したことはあるまい。


「そうだな、さっそく話に入ろう。」


なんでも、宴会を始めて五時間くらいに酔っ払った見回りが来るのだそうだ。


「まずは、壁を壊す理由からだな。」


そう言ったトイヤッグは、近くにあった石を手にのせ、ポンポンと上に投げて遊びだした。


「嬢ちゃんは、この土地の気候みてぇな国を知ってるか?」


「?いいえ。知らないわ。どこの国にもこんな砂漠地帯はないはずよ。」


だから智香子は迷っているのだ。もともと智香子がいた国の近辺に地図を見る限りでは砂漠はなかったはずだし、それは他国も同様である。

魔法が使えるのだから、当然だろうな、と地図を始めて見せてもらった時は思ったものだ。


トイヤッグは楽しそうに喉を鳴らし、「その通りだ。」と言った。


「だが、違う。正確に言えば、国にはないが、国以外ならある、ということだ。」


なるほど。


「つまり、国の領域外には砂漠がある、と。」


「その通り。」


確かにそれならうなずける。この国の地図はそもそも、旅で使うのを目的とはしていない。

世界にはこんな国があり、これくらいの領土を持っている――――――つまりは、「国の領土を増やしたいんだけど、遠いとこはな~。一番近いところは…うん、この国に攻め込もう!」とか、「あれ?こんな国あったっけ?確認できてよかったわ~~。」という風に使うためにいい加減に作られているのだ。

地形を確認したいなら魔法で分かってしまうのも詳細な地図をつくらない理由の一つだろう。

地形確認魔法は自分の近辺を調べるくらいなら一般人でも使える簡単なものだし。


「じゃぁここは、どことどこの国境なのよ?」


頭の中に、クリストフに教えてもらったこの世界の地図を浮かび上がらせる。

トイヤッグは智香子の問いを受け、手に持っていた石を月に向かった投げた。

今日は三日月だ。


「シルナリヤス国と、大国アドリオンの、国境。」


シルナリヤス国は知っている。別名青の国。

基本貿易はせずほぼ鎖国状態。

魔法から何まで防御力がとても高く、国を覆うほどの防御魔法が常に張られていて容易に踏み入ることができない国。


しかし、


「大国アドリオン…………って、どこ?」


今まで教わった中で、聞いたことのない国名であった。

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