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転移小人の奮闘記  作者: 三木 べじ子
第1章
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第20話:言い争いは誰も食わない

新しく見つけた穴は、通ってきた穴よりも大きく、ウィリアムのような高身長でも立って歩けるほどの幅があった。


そこに入る前、ちょっとした喧嘩が起きた。


「私よ!」


「いや、僕です。」


「何言ってるの!私に決まっているでしょう!」


「十人中十人が僕だと言いますよ。」


どちらが前を歩くか、という内容である。

ウィリアムに抱えられている智香子は言う。


「貴方が前にいたら、敵がいるとかが分からないでしょうが!」


ウィリアムも負けじと言い返す。


「だから、ですよ。僕の方が強いんですから、後ろを歩いてください。」


「嫌よ!」


そうして口論は続き、結果、智香子がウィリアムの年齢が十九歳というのを聞き、「私の方が年上よ!」と宣言したことによって、勝利の旗は智香子がゲットすることとなった。

その時のウィリアムはというと、


「あ、ありえない…………その体形で、二十歳…………?何か禁忌の魔法に手をかけたのですか?」


驚愕と哀れみ。二つの感情が混ざった目で智香子を見て、ほっぺを思いっきりつねられることになった。


そのため現在、智香子が前、ウィリアムがその後ろというように並び、暗い穴の中を進んでいた。

勿論真っ暗なため、二人は手をつないでいる。

ゆっくり、ゆっくり、慎重に進んでいって、行き止まりに合う二人。


「どうしますか?」


戻りますか?と訊ねるウィリアムに、智香子は首を振った。


「何か仕掛けがあるかもしれないわ。探してみて、それでもなかったら帰りましょう。」


古代遺跡にありそうな、秘密の仕掛け。

誘拐犯たちから逃げるために作られた場所かはわからないが、もしそうなら出口があるはずだ。

この道を作っている途中で捕まってしまっていればどうしようもないが。

手探りでごそごそと探していると、質感が他とは違いつるつるしているところがあった。

大きさは智香子の手の平サイズ。

もしかして、と思いながらグッと押してみると、


「!」


眼前にあった石がボロボロに崩れ落ち、扉が現れたのだ。

魔法が使われていたのかもしれないと思いながら、驚くウィリアムに「行くわよ!」と小声で告げる。もしかしたら、誰かいるかもしれない。


そっと、慎重に扉を押していく。

しばらく使われていなかったのかギシギシときしみ、智香子の心臓はバクバクとなっていた。


(人がいたらどうしよう………。というかこの音心臓に悪いのよ!)


顔を出せるくらい開いたところで、周りの様子を確認し、人間がいないことを確認。


そのまま扉を押して、智香子とウィリアムはその部屋の中に入った。

光はほとんど入ってはいない。だが、窓から入ってくる月光のおかげでここがどういった目的でつかわれるのかはすぐわかった。


部屋を埋め尽くすほどのタオルや毛布などの日常品から、剣や防具などの武器まで。

資材置き場である。

質の良い物ばかりであることから昼間に入ったところではなさそうである。


(じゃぁ、誘拐されたところじゃない場所にたどりついたってことかしら…?)


そもそも高い壁に囲まれて周囲のことなど何もわからない状況である。

掘り進めていることから近い場所に人が住んでいるということはないだろうが、この世界には魔法がある。扉を開いた先は元居た場所から遠く離れた土地であったなんてことがあってもおかしくはない。

資材置き場から出るための扉を発見したウィリアムは、智香子に知らせ、そっと扉を開けてみる。

見張りのようなものはいない。

ここの警備はちょっと大丈夫か?と智香子は心配になった。

ヒンヤリとした風が二人の頬をなでる。


しかし窓の外を見て、ここがどこなのかと迷う必要はなくなった。

目の前に広がる、高すぎる壁に、数えられるほどの建物しかない殺風景な風景。

ここは誘拐してきた奴らがいる、大きい建物の一番横、彼ら誘拐犯たちが使用する資材置き場だったのだ。


「運がいいのか、悪いのか…………。」


もしココが誘拐犯たちのいない場所につながっていたら、と思っていたから、ため息が出てしまう。

いや、良いんだ。


(皆を確実に助けるためには、もっと情報が必要よ。)


その前にやることがあるけれど。


ばっとウィリアムを見ると、どうする?と訊ねる彼が。

その目は、逃げる?とも聞いているかのようだった。

智香子は首を振る。


「ここの資材を運び出して、皆の所に持って行くわよ。」


そう言ったとき、またもやウィリアムは驚く。このまま逃げるなんてことは智香子に限ってないだろうと思っていたが、まさか資材を運び出すと言い出すとは。

元の場所に帰ると言うかと思っていた。


しかし。

ウィリアムはすぐに納得する。

この人物に限って、何もせずに帰るということはあり得ないと。


「一応聞きますけど、皆、というのは、元の場所の皆ではなく、ここにいるさらわれた皆、ですよね?」


「勿論よ!」


「ですよね。」と呟いたウィリアムはすでに覚悟を決めていた。


「すみません、チカコ。僕に一分、時間をください。」


彼は目を閉じ、丁度一分後、目を開いた。

ふう、と息を吐いて彼は言う。


「どうやら宴会を、この屋敷の大広間でしているようです。見張りも全員。だから拐われている人たちのいる場所へは、簡単にたどり着くことができます。」


その言葉に、今度は智香子は驚く番だった。

たずねるその前にウィリアムに口を抑えられる。


「今はまず、皆に物資を配りに行きましょう。」


まるで「その質問は後で聞きます。」と言われているかのようであった。

智香子は分かったわとうなずき、もう一度資材置き場に戻る。


「一度に大量の荷物を運び出しては不審に思われてしまうわ。少しずつ、持って行くわよ。」


さらにウィリアムが食糧庫も見つけてくれた。資材置き場のすぐ隣であった。

そこからもばれない程度拝借し、寝ている皆の場所に持って行く。


相変わらず風よけのドアも窓もない建物で、互いに身を寄せながら眠りについている人たち。

そっと近づくと、一人の男性が体を起こした。


「…………………誰だ?」


月夜の光しかない中、彼の警戒の色が光る瞳が、二人を射抜く。

しかし、「私よ。」という智香子の声を聞いて、警戒を解き、「チカコさん?!」と慌てて起き上がった。


彼は智香子を地下室への穴の所まで連れて行った人物であった。


周りの人間が起きないように静かに動きながら、智香子の肩を力強くつかむ。


「っ、本当に、チカコさん?」


小さな声に、必死さをのせて、彼は幽霊でも見るような目で智香子を見る。

それに笑顔で「そうよ。」と返すと、はぁ~~~と息を吐いてその場に崩れ落ちた。


「良かった………良かった……………。」


そう言いながらうずくまる彼を智香子はそっと抱きしめたのだった。

しばらくして、ウィリアムの存在に気づいた彼――――アイザックは、「誰だ?」と再度訊ねた。

その目に再び警戒をのせて。


「あぁ、彼は、」


と智香子が続けようとしたのだが、なぜかウィリアムから止められた。


「初めまして。地下室で()()()と会い、こうして一緒に行動を共にしているウィリアムと申します。」


智香子、の部分だけ強調されたことにアイザックの眉がピクリと動く。

そして立ち上がり自分よりも身長が高い無表情のウィリアムを見て負けじと睨みつけた。


「…アイザックです。チカコさんとは、一緒に楽しくご飯食べました。」


楽しくという言葉に、ウィリアムの笑顔の迫力が増す。


こうしてみるとウィリアムの身長はやはり高い。ダミアンくらいありそうだ。

なんてぼんやりと智香子が考えているうちにどうぞよろしくと言い合っていた二人。

つい身長に気を取られていたと意識を取り戻した智香子は状況を見て「?」と首を傾げる。

自分を挟んで挨拶をし合う二人の空気が、なんだかギスギスしているように感じられたのだ。


出会って数分。

短時間でお互いに悪感情を抱くことはあまりない。

それこそウィリアムとアイザックの二人と話したことがあり、二人がそのような人格だと思っていない智香子だが、彼女は身長に気を取られていたため二人の無言のやり取りを見ていない。


(そうよ、ないない。)


そのため自分の気のせいだと否定した。

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