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27 賢人の敗北。

 ☆

「……変わった武装だね」

 ダンタリオンがM3隊が撃つ小銃弾を障壁で防ぐ。

「わずかに魔力は感じるが、効かないよ」

 余裕を感じたか、薄く笑みを見せる。

「さっきの巨大な火矢は打ち止めかい?アレなら効くかもしれないよ。……まぁ一度見たものは通す気はないけどね」



 後ろを見る顔がエイジを見る。

「君もナニをするのか知らないけど、スキはないよ?」

「くっ……」

 直刀を向けたままでスキを伺うが三面の顔にはそれが見えない。

『エイジ。M3隊がM弾に弾種変更する。効くはずだ』

 エイジからの返事はない。





「弾種変更。M弾一式」

 M3班長の指示で隊員たちは通常弾を撃ち終わると順次マガジンを交換してゆく。

「左右に展開。十字砲火だ」

 バースト連射で弾幕を途切れさせずに左右に広がる。

「んー?」

 ダンタリオンが射撃に合わせて障壁を動かす。

「はは!無駄無駄ぁげふぁ!」

 左右に展開し、5.56ミリの十字砲火を浴びせる。



「ぐ、がぁ!?障壁を、抜ける?!」



「M3、CP。M弾一式、効果あり。続行します。おくれ」

「CP、M3。打ち尽くして構わん。終り」



「ぐあ!くっ!」

 ダンタリオンは左右に障壁を分けたからか銃弾を防御しきれていない。

「エイジ!」

 オレが声をかけるまでもなく急襲を掛けるエイジ。

「ふん!」

 大上段から斬りかかる。

 魔法陣を後ろに隠したダンタリオンは魔法陣を破壊されないようにか、グッと体をひねる。



 ずぞん!

 エイジの直刀がダンタリオンを一刀両断に、背中側の左肩口から袈裟斬りにする。

「ふー……ふん!」

 下まで振り下ろされた刃を返し、胴を切り上げる。

「「「あ……?」」」

 ダンタリオンの三つの顔が驚愕を浮かべて固まる。M3の銃撃が止まる。

「なぜ……切れる……」

 エイジは残心を取りながら数歩下がる。

「……こいつは悪魔を切るために鍛えた業物だ。お前くらい、切れるさ」

「滅魔剣……だと?……くそ……この傷は、治らん……か」

 ぶん!と腕を振り上げるダンタリオン。

「こいつ……だけは……」

 振り上げられたダンタリオンの手から魔法陣が離れ、天井近くで水平に止まる。



 ズボッと自らの胸に手を入れて大きな赤い魔石を引きずり出す。

「繋げ!彼の地と!」

 その声と共にダンタリオンの手のひらから魔石が消える。



 空中の魔法陣が数倍に展開される。直径一〇メートルはあるだろうか。

『止めて!アレが起動したらみんな死んじゃいます!』

 イルマの念話。

「ふ!」

 エイジが直刀を真上に突き出してジャンプする。



「くそ!」

 切っ先はわずかに届かず空を切る。

 シュボ!と炎をあげて軽MAT(01式軽対戦車誘導弾)が飛来する。秒と経たずに魔石に直撃する。

 ザッと着地したエイジが上を見る。

「ダメだ。魔法陣が起動した」

 軽MATが直撃したはずの魔石から赤い光が広がる。

 文字を、図形をなぞるように、外周へと。

「これで……終りだ……」

 薄く笑いながら、ダンタリオンは事切れる。体の末端から黒い灰になって崩れ風に飛ばされる。



『ああ……もう……』

「イルマ。アレはなんの魔法陣だ?」

 どっかで見たような感じだけどよくわからない。

『広域マナ吸収。範囲はほぼ本州全域。ソレを火種に次元転送陣を起動させる気です』

 ああ、そういえばマリカのマナ吸収システムに似たのを突っ込んでたな。

「転送陣起動までの時間は?」

『……およそ一〇分。でもマナ吸収が始まるまでは五分かかりません』

 エイジが天井と床と空中の魔法陣を見る。オレはドローンで確認する。

「壊せるか……?」

『無理でしょう……。一度起動した魔法陣は既定の動作を終了するまでは触れない領域にあります』

「だよな。対戦車ミサイルも無効化された」

『可能性としたら、マナ吸収陣が許容できる以上のマナを、一気に叩き込むくらいしか」

「そのマナ量は?」

『記述された限界値は八〇〇〇万』

 イルマの言葉に声を失う。マリカのオド量が八〇〇万ちょっと。ワイバーンの魔石がざっくり三〇〇〇万。全然足りねぇ。

「こりゃあ……無理か?」

 現場に諦めの空気が流れる。



「どうする?ウイザード」

「どうって……どうもできませんわな」

「ですよねー……」

 指揮所も同様だった。



『セリカ。なんか良い手段、ない?』

 無駄かと思いながらも聞いてみる。

『手段が到着しました』

「『は?』」

 視界の仮想モニタにマリカの顔が映る。

『マリカ!?』



「とーーーーーーちゃく!!!」

 ドン!と塔内に衝撃波が走る。

 比喩ではなくリアルな衝撃波。オレのドローン視界が揺れる。

「マリー!?」

 エイジが飛行箒で滞空するマリカに駆け寄る。

「話はセリカさんから聞いたよ!後は私がやるから皆は逃げて!」

「逃げるったって、お前……マリーはどうすんだよ!」

 マリカはエイジににへっとっと笑ってVサインを出す。

「私のオドと圧縮マナを一気にぶつける!」

「……」

「……」

『……』

「えっと、マリー?」

「兄い……ウイザード!皆の退避をお願い!」

「ちょ、待て!マリー!」

 モニタのマリカがステッキを構えて狙いをつける。

「待てない!」

 視界のモニタにはグイグイとステッキの先端に集中してゆくマナが可視化されている。ソレは赤い光の砲弾にも見える。



「セリカ!」

「計算上は可能です。ウイザード」

 指揮所にセリカの声が響く。

「マリーのオドは八〇〇万だぞ!全然足りねぇよ!」

「マリーのストレージへのマナ貯蔵率は98%です」

 え?

「容量いっぱい?」

「はい」

「数値にすると?」

「メインストレージが九〇〇〇万、オドが八〇〇万。余裕で超えます」

「マリーがガス欠で落ちるわ!」

「いえ、サブストレージの一万五〇〇〇があります」

 サブ……あ、最初に作った無限収納か。

「……いけるんだな?」

「可能。しかし被害が塔全体に及ぶ可能性が高いです」

「……はい?」

「避難を」





「総員退避!塔から離れろ!」

 石動の怒号が響く。

「M3はどうしますか?!」

「そいつらはオレが運ぶ」

 エイジが自衛官の乗車したM3のLAV(軽装甲機動車)を両脇に一両ずつ抱えている。中には三両分の自衛官が詰め込まれている。小銃以外、装備の大半は置いていくようだ。



「運ぶっても間に合わんぞ」

「こうするんだよ」

 ダスダスと走り、塔に空いた壁の穴からエイジが飛び降りた。

「「「「うお?ぉおーーーーーーーーー!」」」

 LAVからだろうか。悲鳴が聞こえる。



 エイジの背中のハードポイントが光る。

「フライ!」

 叫び声とともに背中からバサッと翼が生える。

 マナで形作られた光の翼。

 急激に速度を落としたエイジはふわっと着地する。

「よっこらせ」

 抱えたLAVを地面に下ろす。

「ほーれ、行った行った」

 船を停泊している港まで走り去るLAV。すし詰めの車内から敬礼する姿が見える。

 敬礼を返すエイジ。

「さーて……」

 ぐいっと腰を落とすとザッとジャンプ。翼がその巨体を空中に誘う。

「空を飛べるのはいいんだが、とっさにジャンプ補助に使えないのが難点だな」

 愚痴りながらも確実に空へと登っていくエイジ。

「エイジ!お前も避難しろ!」

「あほう。マリーはどうすんだよ」

「くっ」



『セリカ、大丈夫なんだろうな?』

『試算では五秒の余裕があります』

 五秒って。

「大丈夫。オレが絶対守る」

 エイジの声。さすがは騎士といったところか。こんな状況でも落ち着いている。

「すまん……。マリカを頼む」

「おう。任されて」



 ドローンにはストレージのマナを凝縮するマリカが映る。

「マリー、発射後エイジと一緒に退避だ。いいな?」

「……」

 集中してるからか返事はない。

「くそ……」

 まともに魔法が使えない自分に腹が立つ。



 指揮所のメインモニタにはセリカの計算によるカウントが表示されている。

「二〇、一九、一八」

 コロナのカウントが響く。





 マリカのステッキの先に赤い光が凝縮する。

「凝縮、完了!いっけーーーーー!」

 カウント一五で準備完了したマリカが即座に凝縮マナを打ち出す。それは目にも止まらない速さで飛ぶ。



 魔法陣の中心に浮かぶダンタリオンの魔石。

 そこへキン!と凝縮マナが当たり、一気に吸収される。



 指揮所のカウントが十一で止まる。

「どうだ?……」

 魔法陣の文様から光が消えていく。

「……お」

 外周から、内周へと消えていく。

「おおおおおお」

 中心の魔石がゆっくりと光を失う。

「おおおおお!!!!!」

 指揮所にどよめきが広がる。

「退避だ!マリー!」

 エイジが腕を伸ばす。

 空中でくるっと飛行箒を外へと向けるマリカ。

 その瞬間。

 猛烈な光と共にマリカとエイジは消え、塔の中程から上が消失した。







 ★

 音もなく背後が光で埋め尽くされてゆく。

「え?」

 振り返ると塔の天井と床の魔法陣が猛烈な光を放っていた。

「マリー!」

 エイジの大きな手が私に伸びる。

 その強烈な光に視界から色が消える。

「!!!」

 何かを叫んだはずだけど、自分の耳には何も聞こえない。



 視界が白に染まる。







「ん……」

 目を開けると青だった。

 それが空だと気づくのに数秒。



 あら?私、寝てた?

「ふにゅ」

 ゆっくりと体を起こす。いつの間にか地面の上。一面の草原。

「お?気づいたか」

 背後からエイジさんの声。

「ここ……琵琶湖じゃないよね?」

 目の前には草原しか見当たらない。塔も、湖も。

 振り返ると、そこには見覚えのない男性が居た。



「……えーと」

「おっと、この姿は初めてだな。エイジだ」

 え?

 エイジと名乗るその男性は見るからに一般的日本人ではない。銀髪碧眼、群青の胸鎧にマント姿。

「えーと?」

「改めて名乗ろう。エイジ・オーギュスト。アルビオン王国、第五騎士団、遊撃隊、隊長。ちなみに二十五歳」

 すっと右手を差し出す。あ、握手か。ぎゅ。

「斉藤茉莉花……です?」

「知ってるよ。マリー」

 うん。声も調子もエイジさんだ。

「んー?」



「ほら、困ってるでしょ」

 エイジの後ろから女性の声。

「マリカさん」

 そこには長い髪をポニーテールにした、民族衣装のような服の女性がいた。

「その声は、イルマ……さん?」

「はい。イルマ・スティングレイ。アルビオン王国 第二魔法宮 第三研究室所属の魔道士。歳はないしょ」

「二十六歳だそうっんが!」

 がっしりと後ろからエイジさんの首にイルマさんの細い腕が絡んでぎゅっと締める。

「ぐっ……」

「ないしょ、って言ったでしょ?」

「あい……まむ」

「よろしい」

 エイジさんの首から腕を離し、イルマと名乗るその女性は、そっと私を抱きしめた。

「よかった……。目覚めないかと思った」

「えーと」

 トントンと女性の背中を叩く。

「はい?」

「イルマさん……でいいの?」

「ええ、間違いなく、フェレットだったイルマです」

 ニコッとイルマさんが微笑む。

「俺も、間違いなく、巨大ロボだったエイジだぜ」

 エイジさんもニカッっと笑う。



「ごめん、正直、よく判ってないんですけど?」

「だろうな」

「ええ、説明しましょう」

 そう言って手を引いて歩き出す。

「どちらに?」

 私のその言葉も終わらない間に、むにゅんとなにかを通ったような感触。

「むにゃ?」

「不可視結界を超えただけ」

 目の前には見慣れたエイジの姿。巨大ロボが片膝立ちで座っていた。



「さて、どこまで覚えてるかしら?」

 どこから取り出したのか、椅子とテーブルの周りに私とエイジとイルマがいる。

「その前に」

 ひょいと手を挙げイルマの言葉を遮る。

「ん?」

「エイジさんとイルマさん、本人でいいんだよね?」

「ええ」

「もちろん」

「なんでヒト型?」

 苦笑いする二人。

「別に変身してるわけじゃねーよ」

「そう。元の姿に戻った、だけ」

 元の姿。

 異世界から地球に来て、フェレットとロボだった二人。

「ってことは、ここは」

「そう。オレたちの元の世界」

「惑星テール。それがこの星の名前」



 二人の話を聞いて、納得した。

 私は日本でのマナ吸収魔法陣を無事に阻止できたらしい。

「でも、転移陣は止まらなかった?」

「ああ、吸収陣の停止より先に転移陣が作動しちまったらしい」

「とりあえず日本は無事……のはずよ」

 そか。

「よかった。私はちゃんとみんなを守れたんだ」

 あれ?でも。

「ねぇ……私は地球に帰れるのかなぁ?」

「……」

「……」

 二人は沈黙する。ああ、無理なんだ。



「あー……変にごまかしても仕方ねぇ。正確には元に、地球には戻れる」

「え?」

「でもね、色々と準備とかがいるの」

「それもかなり大掛かり」

 そりゃそうか。あんな塔を建てなきゃいけなかったんだから、ホイッっとはいかないか。

「仕方ないか。……あ」

 そういえば、キャミが居ない。

「キャミ」

「……」

 フワリと薄ピンクの光が飛んでくる。

「マリー」

 そのピンクの光が名前を呼ぶ。

「キャミ……?」



「キャミはかろうじてゴーストを保ったままで転移できたわ。でも」

「ん、ごめんね。あの姿ではコアを維持できないの」

 ああ、マナそのものだものね。

「ってことはもしかして、ここってマナが薄い?」

 イルマが驚いた顔で微笑む。



「正解。私達には馴染んだ濃度だけど、マリカさんにはかなり薄く感じるはず」

 うん。視界の赤いマナの光もかなり薄い。

「……」

 じっと自分の手の平を見る。マナを貯める。ゆっくりと視界が赤くなる。でも。

「薄い……」

「あはは……。まあ、私達からしたら地球のマナが濃すぎただけって感じなんだけどね」

 エイジさんが大きな手でワシャワシャと頭をなぜる。

「大丈夫。コウジロウのマナ吸収術式は今も効いてる。空くらいは飛べるさ」

「あ、そういえば箒!」

 周囲を見回す。あ、片膝立ちのエイジさん……じゃないか。巨大鎧の足元に立てかけてある。よかった。



「いけるかな?」

 見た目には壊れていない飛行箒にまたがってみる。ん?

「セラ?」

 はて?応答がない。寝てる?いやいや、AIは寝ないか。

「セラは現在最小起動状態。飛行管制限定作動です」

 説明してくれるキャミもなんだかセリカさんみたいになってるなぁ。

「ありゃりゃ」

 ハンドルのマナ結晶をてしっと叩く。

「セラ」

 しゅぴっと視界にいつもの各種表示が出てきた。

「あ、起きた」

「飛んで見る?」

 イルマさんが後ろから覗いてきた。

「いける……でしょうか?」

「ふふ、敬語じゃなくていいわよ」

「ふにゃ」

 敬語は慣れないから助かる。





「さて」

「出力が変わるだけで動作は一緒だから大丈夫」

「ん」

 イルマの声を聞きながらゆっくりペダルを上げる。

 ふわっと浮かぶ。

「お、いけた」

「ちょっと飛んでみたら?」

「ん」

 グッと踏み込む。ぎゅいんと上昇。んー……ちょっと鈍いかな?

「エイジさん!」

「へいへい」

 機動鎧に搭乗したエイジが手の平にイルマを乗せる。そのまますいっと宙に浮かぶ。エイジの機体には、薄っすらと背中にマナの翼が見える。

「飛べるようになったんだね!エイジさん!」

「ああ、セリカの、いや、セリカとコウジロウのおかげさ」

「そうだね!」

 ゆっくりと加速。視界の表示は時速一〇〇キロを超える。

「ちょ、スピード、エイジさん!」

 振り向くと操縦席のハッチを開いたところだった。

「悪い。忘れてた」

「もう!」

 操縦席に乗り込むイルマさん。

「んじゃ、安全になったところで」

 ぐっとアクセルを握る。

「上昇テストーーーー!」

 箒先を天空に向け、急上昇。二〇〇……三〇〇……うーん。遅い。

「ちょいちょいちょい!マリー!早いよ!」

「おそーーい!」



 お?ちょっとマナが濃くなってきた気がする。高度……一万メートル。でも加速は鈍いね。アクセルスロー。定速で飛びながらふと下を見る。一面の草原の先に連なる山と海が見える。

「わぁ……」

 しばらくその光景に目を奪われる。



「やっと追いついたぜ」

 エイジさんが横に並んで飛ぶ。ピコンと視界にコックピット内の二人が映る。

「ふふ、相変わらず速いですね」

「そう?地球よりかなり遅いと思うけど?」

「こっちにマッハで飛ぶやつはそうそういねぇからなぁ」

「せいぜいドラゴンが急降下する時に音速を超えるくらいですね」

「あ、一応いるんだ」

 そのうち競争してみたいな。



「ねぇイルマさん?」

「はい?」

「このあたりはマナが濃い気がするんだけど?」

「そうですね。地表よりは濃いです。でも」

「使えなかったら意味ないからなぁ」

 ああ。こっちの世界のマナは高空に溜まって地上では使いにくいのね。

「昔はこのあたりのマナも使える(すべ)が有ったと聞いたことがあるが」

「無くなったの?」

「ああ、ロストしてる。そのあたりの話は魔法宮の管轄じゃなかったか?」

 エイジさんがイルマさんに問いかける。

「話は伝わっていますが、詳細は不明ですね。一説には天使はマナの淀みから生まれる、とかもありますね」

 あー、天使かぁ。

「あのマナ量なら有り得るかも」

「ああ、そういえばマリーには礼を言っとかないとな」

「ほい?」

 並んで飛ぶエイジさんの機体を見る。ハッチが開き、機体が横向きになる。エイジの笑顔が見える。



「クソ天使に一発痛いの入れたんだろ?ありがとう。これで親友も、報われる」

「……どういたしまして?でいいのかな?」

 エイジさんが親指を上げる。

「ああ。もちろんだ」





「マリーは史上初のエンジェル・バスターですね」

「キャミ……その称号はなんだかマッチョだよ?」

「ではなんと?」

 んー。

「エンジェル・ストライカー、とか?」

「ははっ!撃退するもの(バスター)じゃなくて、勝利するもの(ストライカー)か!マリーらしい」

 コクピットで大爆笑のエイジさん。

「むー。エイジさん笑いすぎ」

「いや、すまん。だが、お似合いだぜ。ストライク・マリー」

「まあ……最初からそう名乗ってますから?」

「はは、そうだったな」

 などと言ってる間に随分と飛んでることに気づく。

「そろそろ降りようか?」

 イルマさん聞いてみる。

「いえ、どうせですからこのまま古巣に行きましょう」

「ああ、そうだな」



 古巣、って。

「アルビオン……だっけ?」

 ハッチを閉じて巡航飛行する機動鎧。モニタを見る。

「そう。アルビオン王国。一応一〇〇〇年の歴史を誇る、俺達の祖国だ」

「まあ、一〇〇〇年って言っても最初の一〇〇年くらいは眉唾ですけどね」

「イルマ……思っててもあまり口外するなよ……」

「事実ですから」

「……」

 呆れ顔のエイジさん。むふふ。この二人なんのかんの言ってもお似合いだね。





 すいー、と飛ぶ私と、雲を引きながら飛ぶエイジさん……の機動鎧。

 ひとまずアルビオン王国に行くことになったみたい。



 無事に帰れるかなぁ……兄さんのとこに。

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