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26 塔内戦闘。

 ☆

「あー……」

 ドローンの視界から消えるエイジ。

「どうします?」

 石動に声をかける。

「……エイジの位置は?」

 モニターに塔の全景が映る。エイジを示す光点が上からじわじわと動いていく。

「コロナが確認できています」

 氷室さんの声もホッとした感じ。





 さて、あの悪魔程度ならエイジがどうこうなるとは思わないが。

「どうしたもんか……」

 俺が突入するわけにもいかないしな。戦力にもならんし。

「MU隊は?」

「M3が塔の下、大扉前で待機中」

 ああ、まだ昼の二時過ぎだから、モンスターが出てくることもないのか。



「だが下から行っても間に合わんだろうな」

 うーん、と考えていたら無線がザッと鳴る。

『M3、ウィザード、突入準備よし。送れ』

 え?いくつもり?

「ウイザード、M3。歩きじゃ間に合いません。待機でお願いします。送れ」

 いくら隊員が健脚でも、徒歩で高さ一五〇メートルまでフル装備で登れとは言えん。

『M3、ウィザード。LAV(軽装甲機動車)なら間に合います。送れ』

 え?塔の中に車両を入れるのか?

「できるんですか?」

 石動を見る。

「海外派遣仕様のお下がりだから頑丈だ」

 グッと親指を立てる石動。できるかどうかの返答にはなっていないが。本職がいけると言ってるんだから信用しよう。



CP(指揮所)、M3。LAV使用での突入許可。送れ』

『M3、CP。了解。突入します。終り』

 石動が直接許可を出す。ま、俺に指揮権は無いしな。

 モニタに大扉が映る。扉に無理やり取り付けられた金具に、ワイヤーを複数取り付け、重機で引っ張る。



 ごぎぎぎぎ、と重い音で開いてゆく扉。割と強引だな。

 LAVが三台、土埃を上げながら塔に入っていく。

『ウィザード、M3。撤退は任意。無理せず帰ってきてください。終り』

 ザッザッとスイッチの音だけが聞こえる。

「……無線、電波途絶」

 無線手が状況を伝える。塔の中は電波が通らないのか?確認しておくべきだったな。



『セリカ、M3だけでなんとかなると思うか?』

『正直、LAV搭載可能な装備では難しいでしょう』

 だよなぁ。小銃やM2機関砲程度じゃ、ミノタウロスすら対処できるか厳しい。

「一応、全部の銃器にマナ結晶のフラッシュハイダーを取り付けてあるから、小型のゴブリンやコボルド程度はなんとでもなる。問題は中型以上か」

「対戦車の軽MAT(01式軽対戦車誘導弾)も積んである。そうそうやられはしないさ」

 石動はそういいながらも不安げな顔だ。当たり前だな。

 もう何機かマナドローン作っとけばよかった。状況がわからん。

『私の方でモニタしています』

 あ、そうか。MU隊の持ってるマナ結晶か。無線は遮断されるのに魔法は通じるんだよな。不思議だ。マナとか魔法って電波とは性質違うのか?

 発現する物理現象は似たようなものなのにな。





「屋上の魔族騎士はどうしますか?」

 石動に返答を求める声。

「もちろん確保だ。コブラ(AH-1)はどこだ?」

「コブラ2、コブラ3が上空で旋回待機中」

「そのまま待機。照準は屋上の魔族騎士に」

「了解。コブラは目標に照準固定で待機」

チヌーク(CH-47)は出せるか?」

「大津駐屯地で待機中」

「吊り下げ装備でこっちによこせ」

「了解」



『セリカ、チヌークの吊り下げ限界って何キロ?』

『最大で十一トンちょっとです』

 巨大化してるとはいえ、さすがにあの悪魔がそれほど重いとは思えない。大丈夫かな。



 目の前の仮想モニタにMU隊の行動が映る。屋根に取り付けられた銃座から見事な射撃を見せる。結構な速度で走ってるのにうまいもんだ。

 って、小さいのそのまま踏みつけてるな。大丈夫なのか?

「あの、石動さん?」

「ん?どうした?」

「突入中のMU隊ですけど、小型モンスターバシバシ踏みつけてるんですけど。大丈夫なんですか?」

 ん~?と首をひねる石動。

「海外派遣仕様だから、防爆も防弾もしっかりしてる。足回りも標準より強化されてる。問題ないと思うが?」

「そうですか。ならいいんですが」

「うむ。で」

「で?」

 ガシッと肩を掴まれる。石動の声のボリュームが下がる。

「なぜ塔の中の突入部隊の様子がわかる?」

「あ……言ってなかったっけ?魔法だと塔の様子をマナ結晶越しに見えるんです」

「……状況は?」

「……現在三階層を進行中。上層と同じ構造なら、あと十二階で中層の魔法陣に到達予想」

「よし、そのままモニターしてくれ」

「了解」



 怒ってると思ったけど、部下を心配してただけか。相変わらずだ。

「コロナ、M3の様子をモニタに出せるか?」

「可能です」

 俺の命令を実行するコロナ。メインモニタに塔内を疾走する映像が映る。LAV三台分。

「「おぉ!」」

 指揮所内にどよめきが走る。

「今の所は大丈夫そう……ですね?」

 氷室が不安そう。そうか情報科だから戦闘の判断はできないのか。

「まだ軽MATも残ってる。大丈夫でしょう」

 同僚だろうか。横のオペレーターが氷室に声をかける。



 エイジは上から四階層目に降りた所か。モニタの光点がじわじわ動く。速度的にはLAVと似たようなものだな。このペースならLAVと同じくらいのタイミングで中層に到着しそうだな。

『エイジの方は映像出せない?』

『エイジさんのハードポイントに取り付けたのは、全てエンチャント用なので映像はモニタできません』

『そうか。仕方ないな』



 セリカに珍しい凡ミス……いや、珍しくはないな。最近ちょいちょいミスをする。

「AIがミスねぇ……」

 エラー修正がどっかで止まってるのか?うーん。普通ならデバッグでなんとかする所だけども、セリカシリーズは既に手動でデバッグできる範囲を超えている。そのための相互監視システムなんだが。

 俺にだけ見えている仮想モニタにセリカのリアルタイムリソースモニタを表示させる。

 ……うわ。八割位のリソース使ってる。

 αとβで六割位。二割はエイジとキャミ。

 ん?キャミ?



『セリカ。マリカはどうしてる?』

『先程、授業が終了しましたので、こちらの状況を説明しました』

 あれ?午前授業だったかな。

『……なんか言ってた?』

『すぐ行く、と』

「『えー……』」

 念話とリアル声が同時に出た。

「どうした?」

 石動がちらっと俺を見てモニタに目を戻す。

「マリカ……マリーが来るそうです」

「いいのか?」

「良くはないです。でもほっといても突入しますよ。あいつは」

「ま、そっちは任せたよ」

「りょーかい」

 どうしよう。





 ★



「むぎゅ!」

 千林に掴まれたイルマが小さく悲鳴を上げる。

「千林さん?」

 イルマが掴まれたまま千林を見る。千林の目はイルマを見てもナニも反応していない。

「……」

 小さくナニかをつぶやいている。

「うっ!」

 にゅるん、と風景が変わる。周囲は指揮所テントから薄っすら壁や床が光る空間になっている。天井は二〇メートルくらいは上だろうか。随分と高い。



「いやいや、まいったね。まさかフォルカスがやられるとは思わなかったよ」

 パッと手を開く千林。ポテンと床に落ちたイルマが彼を見上げる。

「千林さん……ナオヤさん?」

「んー、もう解除してもいいかな」

 その言葉が言い終わらない間に、千林はぶかぶかワンピースの少女になった。

「魔法……魔族?」

「ん、よく知ってるね。キミもあっちの世界の人かな?」

 床にへたり込んだイルマをひょいとつまんで手のひらの上に乗せる。

「……あなたは?」

「ああ、挨拶が遅れたね。僕はダンタリオン。一応魔族だけど戦闘力はあまり無いから安心していい」

「ダンタリオン……無貌の賢人とも呼ばれ、地上でもそれなりに信仰される魔族、で、合ってますか?」

 一瞬驚いた顔をしたダンタリオンだが、次の瞬間には満面の笑みを浮かべていた。



「おぉ~、地上でも人気あるんだねぇ僕って」

「ですが魔族なのは変わりありません。ナニが目的ですか?千林さんはどうしました?」

「センバヤシ?……ああ、欺瞞してた元かな?」

「そうです。というか、その体は幻術ですか?それとも憑依?」

「いやいや、ただの擬態。変身、かな?オリジナルは適当なテントに突っ込んどいたから無事……だと思うよ?」

 千林の無事を聞いてホッとするイルマ。

「さて、こっちの大体の状況は分かったから」

 ダンタリオンはトントンと踵を鳴らす。薄っすら光っていた床が一瞬暗転する。

「世界をつなごう」

「!?」

 カッと床の魔法陣が金色に輝き、それに呼応するかのように天井にも金の魔法陣が現れる。

「これは……次元転送陣!?」

 天井の魔法陣をみてイルマが声を上げる。

「おぉ~。よく知ってるね~。もしかしてキミ魔法研究者とかだったりする?」

 ダンタリオンが嬉しそうにイルマを手の上で撫ぜる。

「これ、永続術式?!あっちを完全につなぐ気ですか?!」

「せいか~い。完全に繋いだらゼブル王の軍勢がやってくるよ~」

「ゼブル……」

 その名を聞いてイルマは愕然とする。

「そう!バエル・ゼブル!偉大なる魔界の王!魔神の至高!」

 イルマを手に載せたまま、くるりくるりと魔法陣の上を回る。



「そのためのマナ吸収塔。そのためのモンスター。(イケニエ)なのに」

 回るのをやめたダンタリオンがイルマをギュッと握る。

「ぐっ!」

「五〇〇本以上の塔の内、半分が海中に沈んだ。それはいい。設計上三分の一が残れば固定転移門は完成する。だが!」

 ぐっとイルマを眼前に見据え、睨むように見つめる。

「残りの塔も一〇本以上が機能不全。あまつさえ辛うじて稼働していた海中の塔まで破壊され、とうとう内部にまで侵入してきた愚か者共がいる」

「ま、まりー……」

「それだ!!」

 パッと手からイルマを離す。

「塔を破壊し!ワイバーンを倒し!天使まで屠る!そんな存在が!」

 石畳に転がるイルマの直ぐ側にドン!と足が踏み降ろされる。

「……居ていいはずがない……そう思うだろう?」



 ゆっくりとダンタリオンを見上げるイルマ。苦しげに頭を上げ、口を開く。

「なにを言い出すかと……魔術回路の設置不備を……現地人に非難するのは……間違ってる……」

「……こっちの人が壊したんだ。責任はとってもらわないと」



 ダンタリオンがぐきぐきと首を鳴らす。

「流石にこの体じゃ魔法の同時詠唱はできないからね」

 くるっと軽快なターン。その瞬間に姿が大きく変わる。

 例えるなら体高三メートルの阿修羅。頭部に三つの顔面、三対の腕。だがその容姿はいかほどの荘厳さも感じない。

「醜悪な……」

「「「言ってくれる」」」

 三つの口がイルマの悪態に返答する。

「ナニをする気ですか?!」

「「「……すべての生物は体内に必ずマナを持つ」」」

「それが?」

「そのオドを吸収すれば壊された塔の分くらいには足りるだろう?」

 返答は正面の口から。後頭部の二つの口からは呪文の詠唱が聞こえだした。

 別々の魔法を同時に詠唱している。早口は得意ではないのか早くはない。だがその呪文は長く複雑だった。

「そして僕は魔法陣を書く」

 五本の腕が空中に光の魔法陣を描く。パーツごとに書いているのか段々と空中の文様が複雑になってゆく。

「これは……」

 イルマが痛む体を起こし空中を見る。

「気づいたかい?」

 既に魔法陣は八重円まで成長し、その線の間を埋めるように古代語の文字が書かれる。

 ソレを更に繋ぎ、より複雑になってゆく。

「広域……マナ吸収……」

 それを懸命に読み取るイルマ。

「範囲……五〇〇ガフ?!この国が全部入るじゃない!だめ!そんな」

「なぜダメなんだい?」

 正面の顔が不思議そうにイルマを見る。

「所詮は異世界の住人。エンシェントエルフならいざしらず、ただの「ヒト」だ」

 一本の右手に本を持ち、ペラペラとめくりながら魔法陣を空中に描く。その間も延々と続く詠唱。ソレを苦々しく見つめるイルマ。





「さて……」

 パタン、と本を閉じイルマを見る。呪文の詠唱も止まっている。

「これで準備はできた。あとは」

 ひょいとイルマをつまみ上げるダンタリオン。

「イケニエだけだ」

 直径二メートルほどにまでなった、空中の複雑な魔法陣の中心にイルマを「置く」

「……」

 じっと魔法陣を見回すイルマ。

「どうした?」

「いえ、呪文の記述に間違いを見つけたもので」

「はっはっは。つまらない時間かせぎだ。僕がそんな間違いをするわけがない」

 イルマを一瞥もせず、ダンタリオンは塔の壁を魔法で打ち壊す。

「これで外のマナを直接吸収できる」

「させるか!」

 上方から声が響く。階段を全速で駆け下りるエイジが現れた。



「ははっ!来たねアルビオンの騎士!だが、もう遅い!」

 二本の左手で魔法陣を保持して背後に回す。正面にエイジを見据えて背中に隠す。

「……どこの誰だかしらないが、イルマを離してもらおうか」

「すると思う?」

 魔法陣をまるで光背のように背中に隠し、ダンタリオンが本を開いて、余った左手をエイジに向ける。

「言っただろ。させるかよ」

 全高六メートルのエイジが、全高三メートルのダンタリオンを直刀で打ち下ろす。

「それはさっき見たね」

「ああ!そうかい!」

 伸ばした腕に直刀が当たる。だが、まるで岩でも当たったかのように弾かれた。

「僕は戦闘は得意じゃないんでね。やる気はないよ」

「ならば、切り崩す!」

 グッと腰を下げた姿勢から猛烈な突きを繰り出すエイジ。



「お、それは見たこと無いね」

「いちいちやかましい!」

 エイジはダンタリオンだけでなく、背後の魔法陣をも破壊しようとしている。

 が、三つの顔はそれを見逃さなかった。魔法陣に当たる前に背後の手が華麗に避ける。

「今の僕のスタイルに隙はないと思うけどね?」

「ええい!めんどくさい!」

「フォルカスみたいにはいかないよ。ヤツは武人だけど、僕は人呼んで賢人。勝ちはしないが、負けたことはないんだよね」

 猛烈なエイジのラッシュをしのぎながらも背後の魔法陣には傷ひとつ無い。



「……趣味じゃないが」

 そうつぶやくとエイジの左手に火の玉と水の玉が浮かぶ。

「ほほ~う?無詠唱で対抗属性のマルチ起動。やるねぇ」

「ファランクス!」

 空中に投げ出された火の玉。そこからヴーーーーーーーと打ち出される炎の矢。

 爆発的な勢いで打ち出されたそれは秒間五〇発以上。

「うお!?」

 防御は完璧にされているが、その間は動くこともままならない。

 魔法の効果時間はおよそ二〇秒。ダンタリオンの周囲はあっという間に炎の海と化した。



「おいおい、すごいな。コレは見たことがないよ」

「そら結構!」

 エイジの声が背後から聞こえた。だが背面の顔はエイジを捉えてはいない。

「「「消えた?」」」

「どこを見ている」

 本を持つダンタリオンの右手に斬撃が当たる。刀身にまとわせた水の刃が水しぶきとなり霧になる

「なに?!」

 切られこそしないが衝撃で本を取り落とすダンタリオン。

「こっちだ」

 左から声が、聞こえたと思ったら背後の魔法障壁に衝撃。

「くっ!」

「こっちだよ」

 正面から直刀が突出される。が、姿は見えない。



「ふぅ……いやいや、すごいね」

 防戦一方なダンタリオン。嬉しそうに息をつく。

「そらどーも」

 正面から声が。

「ふん!」

 ダン!と足を踏み鳴らしたダンタリオン。正面に無数の氷の柱が生える。だがエイジはその氷柱林には見当たらない。

 パリン、とガラスの割れるような音。

「イルマは返してもらう」

 背後の魔法陣に「置かれた」イルマをエイジの大きな手がつまみ上げていた。



「むぅ」

 唸るダンタリオン。エイジはトンとバックステップで後退する。

 ガバっと胸を開き、イルマを操縦席に入れる。

「キミ……操縦騎士はどうした?」

「そんなもんはいない。俺はオレだ」

「はは……ははは!すごい!精霊回路にゴーストを焼き付けたのかい!?」

「知らん。戻せるものなら戻してくれよ」

「ははは!無理だね!原理も作用も分からないものをどうやって元に戻す!」

「は、役に立たん賢人だ」

「まあ、そう言うなよ。どうだい?僕に研究されないか?」

「断る。とっとと去れ」

 シュボ!っとダンタリオンの背後から音がする。







 ☆

「ん?」

 階下へ続く階段から、猛烈な勢いで炎を吹きながら何かが飛んできた。

「「「な!?」」」

 ダンタリオンは四本の腕を広げて多重防御を展開する。

 だが、その弾頭にはイルマとセリカが、念入りに防壁破りを掛けたマナ結晶が弾頭に組み込まれていた。

 軽MAT(01式軽対戦車誘導弾)は四重の魔術防壁を越えて、ダンタリオンに正面から当たる。



「効果有!」

 M3の報告が車内に響く。

「総員降車。エイジを援護。イルマさんを確保」

「「「「「了解!」」」」」

 車長たる班長の声に隊員が散らばる。

「イルマは俺が確保してる!魔法陣を壊してくれ!」

 エイジの声が響く。

 タタタタタ!と89式の連射音。ダンタリオンを挟んで対面に居るエイジは当たらないように射線から横へずれる。

「ええい!」

 ダンタリオンの三つの顔が面倒くさそうに歪む。





「M3が会敵しました」

 指揮所にコロナの声が聞こえる。

「敵の詳細はわかるか?」

「不明。解析中」

 コロナのリソースモニターが全開で稼働しているのを示す。

 さてさて。エイジがどうこうなるとは思わないが、状況がよくわからんな。



『エイジ。余裕があるなら状況報告してくれ』

 俺は念話で呼びかける。

 ……ヘンジガナイ。タダノシカバネノヨウダ。

 いやいや、冗談言ってる暇はない。エイジから遅れること数分。エイジに追随させていたマナドローンがやっと到着した。指揮所モニタと俺の視界モニタに戦場が映る。


 M3の撃つのはマナハイダーでエンチャントされた弾だ。それを防ぐのはシールドだろうか。見えない障壁で弾いている。

「効いてないっぽいですね」

「うーむ」

 石動が唸る。

「報告では軽MATは効いたそうです」

 氷室がコロナのログを読み上げる。

「火力……か?」

「エンチャントが足りてないのかも?」

「「はい?」」

 俺のつぶやきに氷室と石動が反応する。

「通常弾にマナをまとわせただけじゃあのシールドは突破出来ない。なら」

「そうか!マナ弾にエンチャントすれば!石動さん!M弾を!」

 氷室は流石に気づいたようだな。

「よし、弾種変更!M弾!」

「CP、M3。弾種変更。M弾。おくれ」

「……M3、CP。一式、二式、どちらだ。おくれ」

 無線の声が落ち着いているように聞こえる。



「どっちだ!?」

 俺に聞いてくるな。いや、提案したの俺だけどさ。

「魔石の方で」

「よし!M弾一式に弾種変更!」

 即座に現場のM3に伝えられる。


 ちょっとは効いてくれたらいいんだけどな。

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