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22 就職。

「兄さん」

 マリカが横からクイッとオレの顔を覗き込む。

「ん?」

「就職おめでとう」

「勘弁してくれ……」

 クスクス笑うマリカ。だいぶ回復したように見える。



「ところで」

 相模原がタブレットをこちらに向ける。

「斉藤茉莉花さん」

「はい?」

「写真とずいぶん違うけど、本物?」

 タブレットには中学校の制服を着たマリカが写っていた。

 まったく……どこから手に入れてくるんだか。さすが情報部ってとこか?

「……あ。リリース・オリジナル」

 シュパッと光って変身が解ける。そこにはキュロットと肩紐付きオフショルダーのシャツを着た年相応の少女の姿。ツインテールはそのまま。



「……おぉ……」

 相模原がふらふらとマリカに近づく。

「この子ください!」

「やらん!」

「いきなりナニを口走っとるんだお前は」

 石動も頭を抱えてあきれている。





 行きと違って帰りは輸送機に便乗だったのでずいぶん時間がかかった。

 大津駐屯地に帰り着いた頃にはすっかり夜になっていた。



 エイジは前線に移動したので、空いた空間にパイプ椅子を並べる。

 オレは石動の正面。机は無いがまるで円卓を囲むように主要なメンバーが座る。

 マリカは別区画で再び仮眠中。

「では、詳細を聞こうか」

「えーと」



 流石にここまでやってしまったらもうごまかせないな。

「アドミニストレータ。全てを話したほうが後々楽だと思われますが」

 オレの肩に止まったキャミもセリカモードで声を掛ける。

「ふぅ……そうだな」



 オレは全てを話した。

 魔法のこと。

 マリカのこと。

 そしてセリカシリーズのこと。





「八尾君。では今稼働してるセリカシャドウは?」

 まず聞いてきたのは教授。そりゃ気になるわな。

「あれは正真正銘ただの量子コンピュータAIです。セリカ、お前の本体を幻影で出してくれ」

「了解」

 キャミがうっすら光る。伸ばした手の先に3Dモデルのクリスタルセリカ改が浮かび上がる。すでに初期の八面体ではなく十二面体にまで成長している。



「コレが……君たちが隠していた物か」

 石動の表情は微動だにしない。

「んー……なんです?これ」

 逆に相模原は首をひねって理解不能な顔を隠さない。

「クリスタル・セリカ改。OSバージョンはいくつだ?」

「現在のメインバージョンは21.85926,3。バックアップバージョンは21.85842,9。十二時間前のバックアップです」

 キャミがスラスラとバージョンナンバーを言うが、正直オレもそんなにバージョンが上がってるとは思わなかった。



「現在のセリカシリーズは、NOCーZ23とT-DAM7の旧バージョン。オレの家にあるクリスタルセリカ、それと井崎山観測点のコロナ。そして」

「私、マリカさんの魔法サポートを担当するキャミ。それと飛行箒のコントロールをするセラ」

 厳密には違うが、キャミはクリスタルセリカθのエイリアスだから別勘定でいいだろう。

「はっはっは、いつの間にか量子コンピュータだらけだな」

 黒鳥教授が笑う。実に楽しそうだ。



「で、そのクリスタルセリカとやらはどれほどの性能なんだ?」

 士官の一人が聞いてくる。鳥が望遠鏡と鍵を持ってる胸の徽章。情報科か。



「セリカ、現在のスペックを」

「はい。全容量は一〇〇〇ゼタ。プロセッサは一.五ギガ量子ビットです」

 内部構成等、詳細は言わない。さすが。わざわざトリプルOSでそれぞれが二重動作してるとまでは言わんでも良いだろう。



「……」

 黒鳥教授と情報科士官があんぐりと口を開いて固まった。

「どうした?」

 石動はそのスペックの異常さがわからないのか真面目な顔だ。

「どうしたもなにも……一〇〇〇ゼタ?一.五ギガ量子ビット?ふざけちゃいけない。T-DAM7ですら、かなり詰め込んで1メガ量子ビットだぞ?」



 理解できる人にはこの気持がわかってもらえるようだ。

 オレもそう思う。

「ですが、事実です。今のセリカ改は巡回セールスマン問題を、遺伝的アルゴリズムを使わずに回答できますし、128ビット暗号を秒で解けます」

「256ビット暗号でも10秒以内に復号可能です」

 しれっとキャミが言う。

「マジか……」

 情報科が呆れている。

「すまん。さっぱりわからん」

 石動がお手上げポーズをしている。

 情報科士官が石動だけでなく、皆に向かって説明する。

「つまり、クリスタルセリカ……改?の前にはあらゆる暗号が意味をなさなくなります。コレはサーバーのセキュリティが無意味になるに等しい」

「マジか……」

 石動も流石に理解したのか呆れたような驚いたような顔をする。



「ああ、先に言っときますと」

「ん?」

「セリカは俺とマリカの言うことしか訊きません」

「もしマリカちゃんに無理やり命令するように仕向けたら?」

 相模原が問う。

「マリカのユーザーレベルはノーマル。一般ユーザー扱いです。セリカ自身はパワーユーザー。俺はアドミニストレータです」

「……なるほど。無駄か」

「俺にわかるように会話しろ」

 納得顔の情報科に石動がつっこむ。

「つまり、セリカに言うことを訊かせようとして、マリカちゃんを脅しても無駄ってことです。AI自体の権限が上位にあり、セリカに拒否権がある。セリカに問答無用に命令できるのは、彼だけです」

 ピッと情報科が俺を指差す。



「わかった……ような気がする」

「まあ、石動君も別に八尾君を脅したりはしないだろう?」

 教授がいうことに首肯する石動。

「なら、ナニも問題はない。だろう?」



「しかし、セキュリティ的には感心しません」

 食い下がる情報科。

「俺が自衛隊の機密情報を流出するかも?ですか」

「そう。失礼ながら、しない保証はない」

 ま、そらそうだ。

「んー……では……コロナオペレータの氷室さんにセリカのノーマルユーザー権限を割り振ります。コロナ自体はセリカの下位ノードですからアクセスは可能。しかしモニタはできない。ですので現在の氷室さんのノーマルユーザー権限をコロナのパワーユーザーに変更。これでセリカの動向は観測できます。どうです?」

 情報科士官は思案顔。



「氷室をコロナのアドミニストレータにはできないのか?」

「コロナの仕様上、上位ノードのチェックが必要です。今はコロナのアドミニは俺ですが、仮に氷室さんをアドミニにすると、コロナの自己メンテ機能がチェック不全でストップします。そうなると」

「矛盾が解消できず、ループに入って停止、だね」

 黒鳥教授が横から口を挟む。

 教授はAIの専門。旧セリカもいじってたからわかるようだ。



「致し方なし、か」

 苦い顔の情報科士官がため息をつく。

「わかった。それで手を打とう」

「……解決したのか?」

 石動は首をひねる。

「まあ、解決とはいいませんが妥協点はみつかったかと」

 情報科士官の言葉に納得する石動。



「では、本題。魔法に関することだが、今までの魔法に関する言動は間違いない、と思っていいんだな?」



 魔法に関して間違った事は言ってない。いろいろと内緒は多いが。

「よろしいですか?」

 キャミが手を挙げる。

「なんだ?」

「MU班の魔法使用をモニタしていて気づいたのですが、どうも魔法には相性というか得手不得手とも思われる関係があるように見受けられます」

 幻影モニタが各人の前に現れる。



「MU班隊員の魔法使用履歴です。例えば相模原さん」

「はい?」

「相模原さんは炎や水といった放出系は不得手です。逆に重力や光といった操作系は効率よく使用できているようです」

「……すまん。まずその放出系や操作系ってやつの説明から頼む」

 石動が首をひねる。

「失礼しました。放出系とは文字通り炎や水や風といった「外向き」の力の操作のことです。操作系とは重力や光、それに音、波動などがそれに相当します」

「うむ、わからないのがわかった」

 石動はお手上げのようだ。



「続けます。この観測結果により、得意分野でチームを分けることを提案します」

「魔法攻撃班が編成できますね」

 石動の部下だろうか。ノートPCをカタカタ叩く士官。

「防御は操作系でできるか?」

「いけそうです。相模原さんのシールド実験はキャンセルされましたが、理論上は可能です」

 あっという間に魔法の活用が相談される。いかに自衛隊戦力に組み込めるかという観点なのでやや物騒だが。



「わかった。魔法の運用はMU班に一任する。責任者は八尾君」

「え?俺?」

「イルマ君以外では一番理解が深いだろう?差別する気はないがフェレットに責任者はまかせられん」

「……まぁ……ねぇ」

「なら決定だ。以降八尾君はMU班長とする。相模原は補佐」



「……給料は出るのか?」

 一応聞いておこう。

「外部協力者には一定の決まりで時間給が出る。まあ、金額はお察しだが、任務手当は別に付くし、悪くはないと思うよ」

 そう返答したのはひし形の徽章、いわゆる会計科か?

「わかりました。引き受けます」

「よし。よろしくたのむよ。ウィザード」

 石動がニカッと俺を見る。



「ウィザードは勘弁」

「コールサインだ。無線やなんかで呼ぶときに必要だからな。決定」

 マジか……言いたくねぇし、呼ばれたくねぇ。





 流石にマリカを深夜まで連れ出すわけにも行かないので、俺とマリカは先に帰ることにした。



 マリカをキャミが呼びに行ってる。その間に石動に許可を取らんとな

 どこ◯もドアの。

「石動さん」

「ん?どうした?」

「許可をいただきたい」

「……若干君からの許可申請は不安があるんだが。なんだ?」

「俺の家と、ここへの「どこで◯ドア」を設置する許可です」

 あ、流石にメジャーな固有名詞だから理解されたか。石動が目を丸くしている。



「あー……なんとなく理由はわかる。が、可能なのか?」

「キャミを北海道まで先行させたのはソレです。実証済みです」

「ここで実演は可能か?」

 うーん。試作のドールハウスサイズなら有るけど。



「兄さん」

 キャミに連れられマリカが来た。

「コウジロウ、マリーが居るからすぐできるよ」

 へ?

「よくわからないけど、高難度魔法でしょ?できそうだと思うけど?」

「ではやってくれ。必要なものは有るか?」

「え、じゃあ、魔石をありったけ」

「よし。こっちだ」

 ぞろぞろと回収した魔石を保存しているハンガーの隅っこに移動。



「結構な量ですね」

「まあ、アレだけバカスカ討伐してたらコレくらいは貯まるさ」

 ざっくり二トントラック一杯分弱、ってところだろうか。

「ふー……セリカ」

 胸のポケットに入っているマナ結晶を手に持ち、セリカを呼ぶ。

「はい」

 キャミが居るから必要ない動作では有るが、様式美ってやつだ。

「転移門、構築準備。座標は俺の家のジャンク置き場とここ。サイズは……サブロク」

「了解」

「サブロク?」

 マリカが首をかしげて聞いてくる。その横の相模原や教授も。

「建築用語……か、どうかは知りませんが、一般的なコンパネの縦横サイズです。横三尺、縦六尺。平均的なドアのサイズですな」

「何でそんな尺貫法なサイズに指定したんだ?」

 一人の士官が聞いてくる。

「だってねぇ、部屋の中に置いておくのに、変なサイズだと目立つでしょう?」

「ああ……なるほど」

 納得していただけたようだ。



「アドミニストレータ。転移門、構築準備できました。マリーの端末に転送してあります」

「ん」



 マリカが胸の結晶を握り、半目に閉じる。

「んー……あ、これかな?D-00ってやつ?」

「はい」



 魔石の山を前にマリカが立つ。ぼんやりとマリカの結晶が光を放つ。

 右腕を伸ばして手のひらを下に。

 ゆっくりと口を開く。

「D-00、展開……構築、開始」

 その言葉と共に、マリカの右手が光る。



 マリカと魔石の山の間に直径二メートルほどの円が映し出される。

「魔法陣?」

 士官の声が聞こえる。

 その金色の光の魔法陣は、外周に三重円。

 外周の内側には四角形が二つ組み合わさった八角形。

 その円と円の間に細かい文字が刻まれている。



 そして中心には。

 赤い、血のように赤い、光の球体。

「マナ結晶?」

「いえ、生のマナです」

 相模原の声に答えるように別の声。イルマだ。ちょろりんと俺の肩に上がってくる。

 ギュルギュルと回転しているマナの球体。

 それに引き込まれるように魔石が吸い込まれていく。

 回転するマナ球体に触れるたびに粒子に分解され、薄っすらと外形を形作っていく。



「しかし、改めて見ても、すごいオド量ですよねぇ」

「そうなのか?いや、数値的には知ってるけども」

 んー、と目を細めるイルマ。

「アレ、難度十なのはご存知でしょうけど」

 ご存知です。

「普通、私レベルの魔術師が三人位で開通作業するんですよ?」

「え?」

「しかもその後は二~三日寝込みます」

「え?大丈夫なのか?……ちょいと聞くが、普通の魔術師ってそんなにオド少ないのか?」

「私レベルで中の上くらいです。相模原さんで上の中くらい。マリカさんだと文句なしに最上位です。っていうかあんなに膨大なオドを持った魔法使いは見たことないです」

「ほ~」

 イルマの解説に周りの隊員も感嘆の声を上げる。



「あ、終わりますね」

 いつの間にか魔石の山が半分くらいになって、代わりにガラスのような薄い青色の門が出来ていた。

 ゆっくりと回転の速度が落ちていくマナ球体。

 すっと、回転が止まると同時に霧散する。

 ガラス質に見えた門が停止と共に、その質感が木のようになった。



「ふぅ……」

 流石に緊張したのか、オドを使いすぎたか、ため息をつくマリカの額には汗が浮かぶ。

「マリカ、一番をどうぞ?」

「いいの?」

「作った者の権利だよ」

「やった」

 じわじわと消えていく魔法陣。その中心に佇む門。

 ソレだけを見るとかなり異様。



「開けますよー」

 そっと扉に手をかけ、開く。



「うわ……兄さんの物置部屋だ」

「ジャンク置き場だ」

 それはまるで切り取られたように、背景の魔石の山に中に俺の部屋が見える。

「大丈夫っぽい?」

 マリカがゆっくりと腕を伸ばす。



「……」

 特に何も起こらず、普通に通り抜けたマリカ。

「成功のようですね」

 肩のイルマもにこやかに笑う……笑っているような雰囲気。フェレットの表情は分からんからなぁ。



 両開きの門扉を全開に開く。

「おぉぉぉ……」

 そこには確かに俺のジャンク部屋が有った。

「おっと」

 部屋に入る前に靴を脱ぐ。

「あ」

 部屋の中でマリカが「しまった!」て顔で靴を脱いでいる。

「あー……掃除頼む」

「あい」

 ピシッと敬礼するマリカ。



「おー……すごいな」

 俺に続いて石動も入ってきた。

「……靴」

「あ」

 一旦戻ってゴソゴソと半長靴を脱ぐ。その間にスニーカーを脱いだ相模原が入ってきた。

「これ門の裏側ってどうなってるんですかね?」

「んー?」

 部屋の中に屹立する門の裏を覗く。

 ……ただの木の板だな。

「杉板みたいですね」

「ですなぁ」

 案外面白いものではなかった。つーか部屋のど真ん中って邪魔だな。

「コレ動かしたらダメなのか?」

 肩のイルマに聞いてみる。

「んー、大丈夫だと思いますけど」

「よし」

 門を裏側から持ち上げる。

「お、軽い」

 そのまま壁にくっつける。

「……異様だな」

 壁に空いた空間の向こうは駐屯地のハンガーが見える。



「ふむ。コレはいいな」

 石動が行ったり来たりしながらつぶやく。

「コレ、もういくつか作れないかね?」

 イルマが、「んー」と考えながら石動を見る。

「……今の魔石の量だともう一つ位ですよ?」

「結構。駐屯地と井崎山を繋げれたらかなり楽だ」

「まあ、気持ちはわかりますが」



 通勤は楽になったが仕事が増えた気がする。

「でも実際やるのは私だよね」

 マリカが、にへっと笑いながら俺の顔を見る。

「あ-……そうなるか……」



 ひとまず全員駐屯地に戻る。

「それはそうと」

 半長靴を履きながら石動が俺に声を掛ける。

「はい?」

「八尾駐屯地に車を回収に行ってくれよ?」

「あ……」

 しまったー!置きっぱなしだー!



「あー……クソめんどくさい……」

「送ってあげようか?箒で」

 満面の笑みのマリカ。微妙に腹立つな。

 しかし。

「背に腹は変えられん、か」

「そうそう」

 ニコニコのマリカ。

「なあ、なんでそんなに俺と飛びたがる?」

「ん?だっていつも兄さんの車の隣じゃない?一度私の運転で、って訳にはいかないから」

「せめて箒の後ろに、ってか?」

「ん」

 その心情はよく分からん。が、気分はわかる。



「んじゃ、明日からはこっちから来ますんで」

「井崎山の方も早い目に頼むよ」

 ソレも有ったな。

「マリカの夏休み中には終わらせますよ」

「セットアップ!ストライクマリー!」

 背後から閃光が光る。

「お?」

 石動が目を細める。

「マリーへの変身。別にしなくても飛べるんですが」

「ソレは様式技ってやつですよ~」

 相模原さん……目つきが危ないです……。



「兄さん!」

「へいへい」

 ウキウキ顔のマリーに呼ばれてスタンバイ状態の箒に近づく。

 俺は箒の後方に手を置き、フレームにピリオンシート(小さい後部座席)を作る。ついでにステップも。

 ヨッコラせと、またがって……よし、壊れないな?

「では、お先に失礼しま~す」

「じゃーねー」

 ふわっと浮き上がる箒……イルマは帰らないのかな?ちらっと見ると千林の肩の上で手を振っている。

 ああ……そういえば飛行箒の経験者だったか。

「いっくよー!」

「まて!ゆっくり!」

 静止の言葉を言い切らないうちに暴力的な加速Gが俺を襲う。

 あっという間にハンガーを飛び出して上空へ。

「こ、れは……つら、い」

「あははは」

 マリーは実に楽しそうだ。俺は必死にマリーの細い腰にしがみついているだけだ。

「セラ!テレメーター見せろ!」

「了解」

 俺の視界に現在の箒の状態が表示される。

「げ!亜音速じゃねぇか。マリー!音速は超えるな!」

「えー?なんで~」

「いいから!衝撃波がでる!」

「ぶー」

 高度五〇〇〇位で水平になる。

 加速も止まったのでなんとか息をつける。

「ふぅ~」

「ねー、何で音速超えちゃダメなの~?」

 振り向いて聞いてくるマリー。

「あー、音速を超えるとソニックブームって、衝撃波が出るんだ。かなりやかましいし、下手したらソレで家くらい壊れる」

「ホントに?」

「マジ」

「結構……中高度で音速超えてたかもしれない……」

「……ま、被害の噂は聞いてないから大丈夫なのかもしれん」

「これからは……気をつける」

「ん」

 とはいえ、琵琶湖からだと亜音速でも、八尾駐屯地まではすぐだ。



「アレかな?」

 川沿いの住宅街に飛行場が現れる。

「東側のハンガー前に降りてくれ」

「あい」

 飛行場の西寄りは一般軽飛行機の駐機場だ。陸自は東側。

「ねえ」

「ん?」

「陸上自衛隊なのに空港にくっついてるんだね」

「ああ、元々は飛行学校だったんだが、戦時中に陸軍第一一飛行師団が置かれてな。戦後は陸自のヘリ運用拠点だ」

「ふーん」



 興味はなさそうだ。

 ま、ね。

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