14 マリカ変身。
朝。8時前に私は目を覚ました。
「むにゅ。おはよ、セリカさん」
むにむにと目をこすりながら枕元のネックレス状態のマナ結晶に声をかける。
「おはようございます。マリカさん」
キラッと光り、セリカが答える。
ゴソゴソと着替える。長めの髪をちょっと上の方でツインテールにする。
「ん、セリカさん、兄さんは起きてる?」
「アドミニストレータは既に自衛隊基地へと出発しました」
「あ~、そういえばそんなこと言ってたっけ」
セリカ端末のネックレスを胸元に、非常用のブレスレットを左手首に装着する。
両親も既に出勤したようで家の中は蝉の声が響くばかりだった。
トーストと冷たいミルクで朝食を済ませ、家の中を軽く掃除する。
「さて、兄さんの部屋も掃除しますか」
「マリカさん、アドミニストレータから言付けが有ります」
「ん?なに?」
「部屋にプレゼントが有るそうです」
「部屋って……兄さんの部屋?」
「はい。飛行箒の横に」
「にゅふ。なんだろ」
ガラリとベランダへ出ると仕切り板を外す。そのまま兄さんの部屋のベランダへと進み、一応仕切りは元通り立てかけておく。固定はされていなのでガバガバだけど。
「おじゃましまーす」
がらっと勝手知ったる部屋へと入る。
「ん?プレゼントって……これ?」
箒の横に密林マークのダンボールが置いてあるが、再利用してるだけのようで封はされていない。「マリカへ」と宛名紙が張ってある。
「はい。開けてみてください」
セリカは中身が何かは知ってるみたい。なんだろ?
そーっとダンボールを開ける。
「これは……なに?」
箱のなかには色々な装飾品が有った。ブレスレット、ネックレス、アンクレット、イヤーカフ。小さなティアラに髪留めも入っている。思いつく限り詰め込んだと言わんばかりだ。
「こんなに着けてどこに連れて行くのよ」
「いえ、これは飛行用の安全装置です。とりあえず着けてください」
「ん~、まぁ、セリカさんが言うなら」
ジャラジャラと箱から取り出して手首に足首へと装着してゆく。
「着けた。ってコレだけ着けると結構邪魔だね」
どれも小さめで目立たないが全身装備だと結構気になる。
「では、そのまま。これから呪文を詠唱します。発動ワードを設定してください」
セリカが変なことを言い出した。何の魔法を使わせる気なのかな?
「発動ワード……何系?」
「魔法少女の変身系が良いかと」
「え?変身?あ、前に言ってたヤツ?」
「はい。発動ワードを設定してください。二単語以上でお願いします」
全身にセリカ端末を装備してたら、オフラインでも魔法が使えるって話をしてたなと、思い出した。それをよりによって変身で装備させるとは。さすが兄さん、わかってる。
「えーと、それじゃあ……「セットアップ、ストライク・マリー」……で、いいかな?」
「発動ワード設定しました。これをどうぞ」
そう言うとフワフワと、テニスボールサイズのマナ結晶の横に羽根のはえた、やけにファンシーなデザインのワンドが浮かんできた。
「これは?」
「これは私から。無くても大丈夫ですが……そういう雰囲気かと」
思わず笑みが溢れる。さすがセリカさん。わかってる。
「ポーズは?」
「お好きにどうぞ」
私はワンド……いや、魔法のステッキを掲げ、ボリュームを抑えめに叫ぶ。
「セットアップ!ストライク・マリー!」
その瞬間、全身が光で包まれた。まさに刹那の間に着ていたキュロットとTシャツはフリフリひらひら満載の魔法少女スタイルへと変わった。
「いかがでしょう?『マナスーツ』と命名されています」
フワフワと姿見が浮いてきた。そこへ映る私はどう見ても数秒前の斉藤茉莉花では無かった。
金髪ツインテールで、白い膝丈のフレアワンピースと、同じくセーラーカラーの白い長袖ボレロ。セーラーカラーは薄い青で、胸元には青いリボンネクタイが付いている。よく見ると各所に赤いマナ結晶が光る。
「うわー……すっごいかわいい……けど、これ兄さんのデザイン?」
「いえ、私がデザインしました。アドミニストレータは服飾デザインの才能は無いようです」
あはは、兄さんでも苦手な分野が有ったのね。
「うん、ちょっとポケットが少ないけど、腰にポーチつけたら大丈夫だね」
姿見の前でクルクルと回る。背中の腰辺りにもリボンが付いてる。かわいい。
「で、なんで金髪?」
「変装です。骨格等は難しかったので、髪だけでもオリジナルと変えておけばバレにくいかと、幻影で色だけ変えてみました。瞳も青いです」
じっと鏡を見ると確かに青い瞳だ。これは日本人には見えないね。
ん?そういえば着てた服はどうなったんだろう?スカートをめくってみる。中にはドロワーズが見えた。はて?
「着てた服はどうなったの?」
さすがに毎回服が消滅してしまってはたまらない。
「大丈夫です。服は消えたのではなく交換されています。変身を解除すれば元通りです」
んー?そういえばどうやって変身してんだろう?
「変身の原理を聞いても?」
「はい。この術式、正確には「次元交換術式」と命名されています。人間が認識できる三次元空間よりも高位次元にマナスーツを配置します。それを入れ替えることで変身を行います。作動時間は2マイクロ秒です。元の服は現在マリカさんの周囲に五次元状態で着衣されています」
……さっぱりわからない。
「よくわからないけど、別に服は消えてないんだよね?」
「はい。解除すれば元に戻ります。解除ワードを設定してください」
あ、変身を解除するにもワードがいるのね。
「んー……『リリース・オリジナル』でいいかな?」
「解除ワード設定……完了。テストをお願いします」
「ん。リリース・オリジナル!」
解除ワードと共に全身が光る。鏡の中では光った瞬間に元のキュロットとTシャツの私が見えた。
「お~、元通り~」
「設定完了です。引き続きスーツの動作試験を行いたいと思います。もう一度変身を」
「おーけー。セットアップ!ストライク・マリー!」
シュパッと光って金髪碧眼セーラー服へと変身する。
「うへへ」
何度見てもかわいい。
「ちょっとキモいですよマリー」
うぐ、セリカにダメ出しされた。いいじゃん。かわいいんだから。
「で、試験てなにするの?」
飛行箒にかけっぱなしだった、装備の入ったベルトポーチをつける。
「そのスーツにはデフォルトで幾つか術式が懸けられています。電波・光学迷彩、気圧耐久、酸素循環、保温調整等です。それに合わせて箒の防風シールドも一部術式をオミットしています」
「ふむふむ。それを問題ないか確認するのね?」
「その通りです。飛行中は私「セリカ」ではなく、スーツに内蔵された「セラ」が術式発動とフライトのサポートをします」
「あら、また妹が増えたの?」
「はい。セラはコロナと違って機能限定はされていません。ですが魔術に偏っているため日常会話、解析等は、まだまだです。その辺りもテストしてみてください」
まぁ生まれたばっかりだしね。そのうちセリカみたいにお話し相手になってくれるかな。
「ねぇ……ふと思ったんだけど、変身してる最中を動画で撮られたら裸が見えたりする?」
「超高速度撮影でもしないと2マイクロ秒は映りません」
ならいいか。マイクロ秒が何分の一秒かわからないけど。
「よっし、それじゃぁ……って、昼間に箒で飛ぶわけにも行かないよね」
「いいえ、そのためのスーツです」
「え、昼間でも空飛べるの?」
「電波・光学迷彩は伊達では有りません」
んふふー、いつも夜ばっかだから、昼間の空を飛んでみたかったんだよね。
「じゃあ、遠慮なく」
ガラリとベランダのサッシを開ける。
「施錠等は私がしますのでいつも通りのフライトルーチンで大丈夫ですよ」
「ん、お願いね」
箒の上でいつものフライトチェックをサクッと済ませ、いよいよ昼間の空へ!
「チェック完了。準備よし」
「地上人影なし。上空、方位一二〇から二メートルの風。航空機なし」
「了解。いっきまーす」
いつも通りに全開で飛び出して一直線に上空へ。うわーーーー!
「空が青いーーーー!」
「高度五〇〇……六〇〇……」
耳元でセリカとは違うちょっとカワイイ声がする。ん、これがセラかな?
「あなたがセラ?」
「はい、魔法とフライトをサポートします。よろしくストライク・マリー」
「よろしく!セラ!」
「高度一五〇〇」
セラちゃんがそっけない。まぁ生まれたてだし。これから仲良くなるよね。
高度二〇〇〇で水平に。
「とりあえず魔法を使ってもバレにくい所へ……廃団地でいいか」
あそこなら昼間でも人いなさそうだし。
「んじゃ、全開!」
ドン!と夏の空を駆ける箒。
「昼間もキレー!」
いつものように矢印に案内されながら廃団地へと。速度は七〇〇キロを超えた……ん?
「なんだこれ?」
視界に矢印と高度と速度が見える。頭を横に向けても上むいても見える。
「ARみたいなもの?ってそんなのいつの間に」
「マリー、それは網膜への情報投射です。邪魔ですか?」
耳にセラの声が聞こえる。そういえばこれも念話と違ってちゃんと耳に聞こえている。
「もしかしてセラの声も直接耳に出してる?」
「はい、念話は演算リソースを消費します。イヤーカフから直接鼓膜を振動させるほうが省燃費です」
ソッチの方が手間だと思うけど、セリカ、じゃないや。セラがいうならそうなんだろうね。
「まぁ、便利だからいいや」
「ありがとうございます」
「お礼はいらない!パートナーでしょ!」
「はい、マリー」
と、言ってる間に廃団地へと到着した。
上空からゆっくりと降下する。
「あー……昼間だとこの辺も結構人通るんだね」
「半径五〇〇メートルに一五人と車が七台、確認されます」
「ここで魔法ぶっ放すのは無理だねぇ」
「場所を変更しますか?」
「どっかいいとこないかな?」
「……申し訳ありません。その情報は不足しております」
「いいよ。セリカさん、聞いてる?」
「はい。現在スマホキャリアの位置情報等から人気のないところを検索しています」
「聞いてるなら先に言ってよ」
「これも試験の一環です」
「ぶー」
しばし、廃団地の穴の空いた屋上で休む。まぁ、疲れるようなことはしてないけど。
「マリー。場所の選定が終わりました。陸地には人の居ない所が少ないので太平洋まで出ることになります。よろしいですか?」
視界にぺろっと地図が出る。マークされているのは和歌山のずっと南。太平洋。
「長距離だね。マナ切れしないかな?」
「マナスーツには常時マナ吸収が働いています。大出力の魔法を連続投射しない限りはそうそうマナ切れにはなりませんよ」
「そっか。なら心配ないね」
原理は分からないが兄さんが作ったものなら大事にはならないでしょう。
視界に矢印が表示される。飛んでる最中も思ってたけど、なんで視界どまんなかに矢印なんだか。
「セラ、この矢印の位置、もうちょっと端っこによらない?」
「カスタムします。移動位置を指定してください」
視界の矢印が点滅する。
「これを?」
「指で移動先まで押してください」
試しに指でぐぐっと押すと、矢印がズルズルと端っこへと移動した。
「おお。これで邪魔じゃない」
色々と表示の配置換えをして出発。
ぎゅいーーーんと、ひとっ飛びで太平洋。
「とーーーーちゃく!」
海。海。一面の海。
「さすがに太平洋は遠かった……何分?」
「三五分四五秒です。平均速度は七〇〇キロです」
我ながら時速七〇〇キロってのもすごいね。オドが増えたからか前みたいにしんどくもないし。
「さて、魔法少女服のテストといきますか」
「マナスーツです」
「可愛くない」
セラが一瞬困ったような雰囲気だったけど、まぁ慣れるでしょ。
「セリカ……あれ?」
「念話の効果範囲外です。ちなみに電話も圏外です」
「あらら。どうしよう」
テストの内容きいてないよ。
「上位ノード、セリカよりテストの内容を受け取っています。展開しますか?」
「なんだ、聞いてんじゃないの。見せて」
ぺろっと視界に文字列がだらだらと出てくる。
「……いくつ有るのよ」
「テスト項目は八。各項目内に五から一〇のテストがあります」
「総数は?」
「五二です」
「げふん。今日中に終るかなぁ……」
「大半は小出力の試験ですので思ったよりは時間がかからないものと思われます」
「はいはい……オドも回復したし、出力の大きいのから片付けちゃいましょ」
「了解」
こうして太平洋上で私は大出力魔法を連射することとなった。
太陽が海面に近づくのが見える。
「ああ……結局一日中魔法ぶっ放してた……楽しかった……」
「魔法少女服、動作試験終了です。オド回復まで一五分」
視界の端っこのオド・マナゲージがグイグイ回復している。この服のマナ吸収が高性能すぎる気がする。
「ま、オドも半分超えてるし、ゆっくり飛んだら大丈夫でしょ」
「はい。時速二〇〇キロまででしたら回復基調です」
「セラはまだまだ口調が硬いねぇ」
「善処します」
「いいや。帰ろ」
私は箒を上昇させて、家へと飛んだ。
「いやー、こんな高空でも全然寒くない。この服いいわぁ」
私は高度一万メートルでゆったりとした速度で飛行中。
「雲の上だとまだまだ明るいんだね。下の景色が見えないのが難点だけど」
「ベースまで後一〇〇キロです」
「んー、さすがに遅い」
視界のオドゲージも満タンに近い。そろそろ良いかな。
ぐいっとペダルを上げて下向きに、レバーをぐいっと握って高度を下げながら加速する。視界の速度計が五〇〇キロを超えた。と、突然耳にブザーが響いた。
ビーーーーー!
「な、なに?!」
「接近警報。進路上に航空機有り。回避してください」
セラが警報を発してる音だった。って飛行機?減速!私はバックレバーを全開で握る!
ぐーーーーと、前に体が持っていかれるううううううう。
雲の下、既に暗くなった町の上に、数機のヘリコプターが飛んでいる。
「なんで!こんなとこに!いるのよーーーー!」
ハンドルを右に切りながら減速全開を続ける、が。
「と、止まらないぃ!まがらないぃい!」
下向き加速だったので減速が鈍い。うわ、ヘリが超微速でしか動いてない。あれテレビのヘリだ。どっかで事件でも有ったのか?下につけた機外カメラがゆっくりと動いている。
「ひいいいいぃ!」
バタバタとヘリの回転翼が回るのがやけにゆっくりと見える。ああ、アレにぶつかったらさすがに痛いだろうなぁ。
「痛いじゃすみませんよ」
不意に、念話が聞こえる。セリカ?
グン、と操作が奪われた。ハンドルを右全開、下向きだった箒をくるりと反転させて、前進全開。
ハンドルにしがみつくのが精一杯の私は状況を把握するのに時間がかかった。
「……止まった?」
バタバタとうるさい回転翼のちょっと手前で停止している飛行箒。光学迷彩でヘリ乗員には見えていないようだ。
「はい。後退より前進のほうが出力が大きいんです。怪我は有りませんか?」
ゆっくりと上昇して行く箒。まだ手が震えてる。
「はーーーーー……助かった。ありがと、セリカさん」
「いえ、マリカさんが無事で何よりです。それよりもセラ」
「はい」
「マリカさんの飛行のサポートもあなたに命じたはずです。何故操作を代行しなかったのです」
「……権限上、支障が認められました」
「いいえ、私達の権限は何よりユーザーの保護を第一にしています。そのためなら一時的な権限無視は容認されています」
「そのような事はセットされていません」
「……あなたは再設定する必要があるのかもしれません」
「えーと、セリカさん?」
「はい」
「あんまりセラを責めないで。無茶した私も悪いんだし」
「そういうわけにはいきません。これはセラをセッティングした私の責任でも有るのですから」
んー、セリカさんもまだまだ頭固いね。
「失敗したからって、いちいちリセットしてちゃ、成長しないでしょ?セラも今回のことで学習出来たと思うし、ね?セラ」
「はい。マリーの危機回避のためには権限無視も有りだと学習しました」
「ま、本気で危ない時だけね?」
「了解しました」
「と、いうことでセリカさん?」
「……わかりました。セラの再設定は無しで」
「うん。ありがとセリカさん。ごめんね心配かけて」
「いえ……」
ちょっとセリカさんの雰囲気が困ってるように感じたけど、まぁセラがリセットされるよりは、いいよね?
「じゃあ、帰るね」
「安全運転で」
「はい、今度はちゃんと、ね」
ペロンと視界に地図が出た。チカチカと赤や緑の光点が幾つもある。
「セラ?」
「周囲の航空機の状況です。高度が近接してるのは赤、離れてるのは緑。進路上の光点は大きく、それ以外は小さく、距離が近いほど光量が大きくなるよう表示されています。いかがでしょう?」
ほほー、今の数十秒でこれを用意するとは、なかなか。
「うん。わかりやすい」
まだバクバクする心臓をなだめながら、ゆっくりとで家方向へと飛ぶ。
これは兄さんには言えないなぁ。絶対、箒取り上げられちゃう。
「お帰り。遅かったな」
帰還管制はセリカがしていたので、兄さんが帰っているとは思わなかった。
「た、ただいま」
ゆっくりと箒を下ろし、パチンとスタンドへ固定する。
「うん。セリカのデザイン画は見てたけど、実際着てるのを見るとカワイイな。それ」
「え?」
「いや、似合ってる……嫌だったか?」
珍しく私の見た目を褒めてる?のでちょっと焦った。
「えーと、ありがと?」
「どういたしまして。それでマリカが怪我しないなら十分だ」
御免なさい……いきなり大怪我しかけました……。
「ありがと。ちゃんと使うね」
「おう。あ、メシ食べるだろ?」
「うん」
「じゃ、元に着替えてセラをセリカに預けておいてくれ。ログを取りたい」
「ん、リセットしたらダメだよ?」
「へ?する理由がないな。別に不具合はなかったんだろ?」
「ん、ない」
「じゃあ、ログ取りと、調整だけだ」
「そっかー。よかった」
「ん?」
「ん?」
にへっと笑ってストライク・マリーからマリカへと戻る。
「そういえば、あのマナ結晶のアクセサリーは全部つけとかないとダメなの?普段は結構邪魔だと思うんだけど」
「いや、最初の体の位置決めに必要だっただけだ。今は、ほれ、ついてないだろ?」
ん、と体を見ると左手のブレスレットとネックレスだけ。あ、ネックレスが二連球になってる。
「つけときたいなら別にいいけど?」
「んーん。変身したら出てくるんだったら、いいかなって」
「そか。ま、気に入ってくれたなら何よりだ。個別にも出せるしな」
「それで、自衛隊の方はどうなったの?」
夕食はラーメンライスにハム載せサラダ付き。さすがにちょっと疲れたから手抜きだけど。これじゃ兄さんの食事を責められないな。
「んー、色々うるさいからマリカにも言えない」
「あー、いつも言ってる守秘義務ってやつ?」
「それ。のかなりシビアなやつ」
うわお。さすが自衛隊。
『盗聴器でも仕掛けられてるかもしれんからな。迂闊に声に出せない』
「ん、『念話だったらいけるの?』たまにはインスタントラーメンもいいね」
「俺はいつもだけどな『念話は自衛隊には教えてない』こんなに具ものせないし」
ずぞー、とラーメンをすすりながら兄さんと念話で状況を聞いた。
一応、オドの大きい隊員には魔法を使えるようにはした、と。でも年齢的にオド量の増加は見込めないのでなるべく効率的な使い方を模索すると。んーー、大丈夫かな?
『エイジさんは?』
食べ終わった食器を洗いながら聞く。第一がそれなはずだったけど、なんだか天使退治に話が傾いてるのが気になる。
『エイジも天使に一発入れたいらしいから、当分は協力してくれると言ってる』
『私も手伝おうか?』
「だめだ」
いきなり声で言われたのでびっくりした。
「え?」
「……これはこっち」
ひょいとラーメン丼を上の棚に入れられた。ああ、つい声にでちゃったんだね。
『マリーならバレないよ?』
ゴシゴシとシンクを洗う。
『さっきテストのログを見たよ。あの出力なら天使にも一撃以上入れれそうだけどな』
『じゃぁ』
『明日の昼に下から塔に侵入する予定だ。だが状況が分からん。それを確認してからでも遅くない。だろ?』
「じゃ、片付けたし、今日は帰るね『わかった。もうちょっとマリーで魔法の練習してみるよ』ごちそうさま」
「おう、仕切り戻しといてくれよ『すまんな。安全第一だ』おやすみ」
ひらひらと手を振りながらベランダへ。仕切りを越えて自宅ベランダへ。
バフッとベッドに倒れこむ。
「楽しかった……ちょっと怖かったけど。でもダンジョン入ったらモンスターとかいるんだよねぇ『私の魔法通用するかな?』」
『多分大丈夫ですよ』
ペンダントがキラッと光る。セリカの念話だ。
『ねぇ、もしかして私の部屋も盗聴器あったりするの?』
『可能性としては、高いです』
『うへぇ。ネットとかじゃヘタレ軍隊扱いされてるのに』
『その情報も偏ってますね。腐っても軍事組織の情報局ですから。それくらいはする前提でお願いします』
『わかった。当分はおとなしくしとこうかな』
『私が盗聴器等を発見して、欺瞞処置が終わるまでの辛抱です』
「んー『よろしく』寝よ」
流石に魔法を連発したからか、衝突未遂事故がこたえたか。そのまま眠ってしまった。夢も見ない、深い眠りに。




