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白虎、朱雀編。そして光さす場所へ……

名和はスピードを限界まで高めて、天使の力を吸収し巨大化した。


ズゴゴゴゴゴッッ……!!!???


 今や名和は天使の軍勢すべての力を吸収してビッグバンクラスの威力を秘めたジャンパーに進化していた。だが道頓堀とて負けてはいない。彼はこの間にも炎の力を高め、太陽と一体化していたのだ。

 その凄まじい姿を見た道頓堀の父親、土佐衛門がなりふり構わず叫ぶ。


 「あかん!それ以上やったらあかんで大武っ!今のお前の実力でソルグラシアス通天閣サイクロンの位まで力を高めてしまっては破滅の未来しかあらへんでっ!」


 今の今になって土佐衛門は後悔していた。己の復讐劇に自分の息子を巻き込んでしまったことを。

 しかし父の想いとは裏腹にソルグラシアス通天閣サイクロンになってしまった道頓堀は宇宙すら破壊しかねない超エネルギーを発生させてたのである。


 「お父、すまんな。わいのような出来損ないが息子で。わいは今まで自分という存在を恥じてきたんや。だからここであんたの息子として恩返しさせてくれや」


 「何を言うか、大武っ!お前はわしの自慢の息子や!そんなこと言わんといてや!」


 道頓堀大武は父親に向かって微笑みかけると最後の力を解放した。それこそが彼の最終奥義、ソルグラシアス通天閣サイクロンギガンティックフェスティバルの始まりだったのだ。

 その技は宇宙発生のエネルギーに匹敵するエネルギーを解放し、縄跳びによって新たな宇宙を創造する超奥義である。


 「これで今のわいは神を超えた存在となったんや!名和くん、さっさと降参したらどうや!?」


 道頓堀の放った炎が金属を飴細工のように溶かす。火と共に発生した熱が壁を焦がす。

 そして瞬く間に新たな力を解放した道頓堀大武は息を吐いただけで応援席の椅子や壁を焼き尽くしてしまった。

 不幸中の幸いか、名和のなる聖エネルギーの作り出したフォースフィールドによって観客は無事だった。


 「人間の力などひ弱なものよ。名和、貴様も我が軍門に下るのだ」


 道頓堀大武がフォースフィールドに向かって炎を吹きかける。

 内部は限りなく真空状態に近い名和のフォースフィールドにわずかな亀裂が生じる。

 名和は急いで念力を集めてフォースフィールドを再生する。

 今ここでこの力が無くなってしまえば、この会場も外の世界のように焼き尽くされてしまうからだ。

 今ここにいる人間たちこそが最後の人類だったのだ。


 「僕の青い地球は渡さないぞ、兄さんいやッ、炎の邪神デビルフレイム!!!」


 なんと名和と道頓堀の前世は天界の守護神として活躍した光の神シャイニングロープと神を裏切り堕天して天界に反逆した炎の邪神デビルフレイムだったのだ。

 

 今思えば彼らの出会いは宿命の邂逅だったのかもしれない。


 道頓堀の自我を完全に支配したデビルフレイムは怒りをあらわにしながら縄跳びを続ける。


 破壊の魔神の縄跳びとはどれほどの破壊力を秘めているのだろうか。


 「貴様だけは許さぬぞ、シャイニングロープ。このちっぽけな惑星ほしの命運を賭けて、縄跳び勝負だっ!」


 デビルフレイムは背中から真紅の翼を出して、縄跳びを始めた。デビルフレイムの縄跳びによって生じた灼熱の波動が地球に襲いかかる。


 その恐るべき威力によってアジア、ヨーロッパの国々が一瞬にして廃墟になってしまうほどであった。

 魔神デビルフレイムにとっては地球の人類などゴミクズでしかない。

 怒れる魔人は真紅の翼をはためかせ縄跳びを続けるのであった。


 「デビルフレイム、貴方は自分が作ったこの世界を滅ぼそうというのか!」


 名和の中にいるシャイニングロープが叫んだ。

 シャイニングロープの怒りに呼応するかのように名和に付き従っていた天使たちがデビルフレイムに襲いかかる。

 しかし、雑魚天使と魔人の戦力では雲泥の差というものであった。

 天使の軍勢は一瞬にしてデビルフレイムの放った真紅の波動によって黒焦げの炭クズと化してしまったのだ。

 名和の中のシャイニングロープは天使たちが猛火の餌食となる光景を見て、涙を流す。

 シャイニングロープの愛した慈悲深き兄は怒りと憎しみに囚われてしまったのだ。

 

 大丈夫だ、シャイニングロープよ。僕は君と最後まで一緒に飛び続ける。


 名和はシャイニングロープと心を一つにして跳び続ける。


 名和とシャイニングロープの勇敢な姿に心を動かされたジャンパーたちもまた縄跳びを続けていた。

 人類の未来の為に。心を失った友の為に。彼らの生み出した愛と友情のパワーが名和とシャイニングロープに爆熱ばくあつ友情パワーという未知なる強力な力を与える。

 名和はデビルフレイムの真紅の炎に何度も身を焼かれながらも立ち直った。

 名和とシャイニングロープの不屈の闘志を見て、デビルフレイムは唾を吐き捨てた。


 「おのれ蛆虫の分際でまだ立ち上がるか、愚弟とその宿主である人間よ。ならばお前の一番大切なものを滅ぼしてくれる。殺人縄跳び術が最強奥義ダークネスフレア跳びッ!」


 翼を広げたデビルフレイムは両手を交差して跳んだ。するとデビルフレイムの額から第三の目がむき出しになり、漆黒のレーザー光線を放った。


 危ないっ!その光線の先には名和鳶益が心を寄せる(片想い)同級生の佐々木一花子の姿があった。

 だが縄跳び今は勝負中なので名和にはどうすることも出来ない。

 名和は必死の思いで佐々木一花子にその場から逃げるように言うしかなかったのだ。


 「佐々木さん。もう時間がないから一回しか言えない。だから、よく聞いてくれ。僕は高校に通ってから二年間、貴女のことを考えない日は一日たりとて無かった。あの時僕が遠足に行く時に佐々木さんの為に偶然用意したと言ってたエチケット袋だって一年前くらいから準備してあったものなんだ。だから僕は決してストーカー的なものではなく純粋に貴女のことが好きだったんだ。この試合が終わったら告白するするつもりだからみんなが帰った後に部室で待っていてくれ。ついでに言っておくけどさ、そこにいつまでもいたらデビルフレイムの攻撃が当たるかもしれないから地下の核シェルターに避難してくれると嬉しいな。それと今度の日曜日だけど一緒にホーマックに行って縄跳びを買い物に行かないかい。二人きりで」


 じゅわぁぁっ!

 そして、オーブントースターの中に入れたピザトーストの上に乗せられたとろけるチーズのように名和の仲間たちは消えた。


 こんな理不尽なことが許されてもいいのだろうか。いいわけがない。

 

 運命とは何と残酷なものだろうか。


 名和の命をかけた訴えも虚しく、デビルフレイム道頓堀大武の放った緋色の光球が佐々木たちを一瞬で蒸発させてしまったのだ。


 名和の目に映った佐々木一花子は笑顔(恐怖でひきつっていただけ)だった。

 もしかすると返事は「オッケー!つきあっちゃう!早速デートしようNE!」だったのかもしれない。


 名和の眼から後悔の涙が一気に流れ出す。


 「デビルフレイムッ!デビルフレイムッッ!!!略してデビフレッッッ!!!お前だけはッ!お前だけは絶対に許さないッ!よくも俺の彼女である佐々木さんを殺したなッ!愛する者たちを奪われた僕の気持ちがわかるか!?いいや、絶対にわかるはずがない!わかられたくもないッ!!というわけで殺してやるッ!死ねッ!!」


 怒りに身を焦がし、悲しみに打ち震える名和の姿を見て魔神デビルフレイムは邪悪な笑みを浮かべた。

 

 これでいい。


 愛や友情などといった甘ちょろい感情を持ったままではシャイニングロープは真の実力を発揮することが出来なのだ。

 復活した魔神の求めているものはかつて己を打ち破った最愛の弟への復讐ではない。

 あくまで兄と弟のどちらが優れているかをはっきりさせることだけだったのだ。

 デビルフレイムは自身ともに魔神化デビライズした縄跳びを握りしめる。


 そして、限界の限界を超えた神話領域の縄跳びバトルを再開した。


 名和も負けてはいない。

 名和は再び天使の軍勢を召喚して縄跳びバトルに臨む。

 デビルフレイムの攻撃によって殺害された仲間の魂は天使の姿になって次々と参戦しっていった。


 ありがとう。

 

 友たちよ。

 

 もう僕には感謝の言葉も無い。

 今はただ縄跳びを続けようと思う。

 残り時間ギリギリまで跳び続けて、このバトルに勝つことが僕のすべきこと。


 この時、名和はシャイニングロープと一体化して聖光天上神としての姿と力を取り戻すのであった。

 名和は十六枚に増えた翼をはためかせ、天空を舞うようにして縄跳びで跳ぶ。


 ピィィィーーーッ!!


 そしてついに終焉の時が訪れた。


 開始から120分の時が経過し、審判が終了のホイッスルを鳴らしたのである。


 「両者そこまでっ!これから両選手が何回くらい跳んだか機械を使って測定しますので10分くらいお待ちくださいっ!」


 四人の審判が集まり、集計用の機械からプリントアウトされている紙をじっと見ている。

 流石のデビルフレイムもこの時ばかりはおとなしくしていた。


 「それでは発表します。まず大阪県代表の道頓堀大武君、合計二千九百九十九億九千九百九十九万九千九百九十七回ッ!」


 デビルフレイムは満足そうに腕を組んで笑っている。現時点における天界魔界の最高記録はおおよそ二千億回。回数、質ともに圧倒的なまでにう上回っていた。一方のシャイニングロープの顔色は悪かった。


 「対して大分県代表の名和鳶益君は合計二千九百九十九億九千九百九十九万九千九百九十九回ッ!よって二回の差で、名和鳶益君の優勝となりますッ!」


 会場から観客の大歓声が聞こえる。

 光と闇の兄弟対決が今ここに集結したのだ。

 自らの敗北を知って崩れ落ちるデビルフレイム。

 まさかたった二回の差で敗れるとは。もはやこの世に止まる道理などない。


 「殺せ、名和鳶益。予はお前の愛する者たちの命を奪ったものだぞ?さっさと殺してスッキリするがいい」


 これが悪の限りを尽くした者の末路か。


 デビルフレイムのあれほど自信に満ちていた態度は失われ、すっかり敗北に打ちひしがれてしまった様子は情けないものになっていた。


 正義を名乗る者がここで追い打ちをかけるような真似はしない。名和は目を閉じて首を横に振った。


 「止めてください。たとえここで貴方を屈服させて殺しても誰も帰っては来ない。僕はただ縄跳び部のみんなと一緒に跳びたかっただけなんだ」


 ちょっと頼りない部長。


 憧れの少女。


 級友、先輩。恩師。


 名和は彼らとともに過ごした時間を思い出していた。


 大切なのは記録がどうとかじゃない。

 心と心の交流だったんだ。


 こうして二柱の魔神の激突によって銀河系が崩壊してしまった今だからこそわかることがある。


 争いはよくない。

 名和はデビルフレイムに右手を差し出し、

 握手を求めた。


 「名和鳶益。貴様は予を許すというのか。馬鹿な、それでは予は一体何の為に戦っていたというのだ」


 名和の慈愛の心を目の当たりにしてデビルフレイムは悶え苦しんだ。


 人間とは欲望のためなら何でもする利己的な生き物のはず。

 かつてデビルフレイムは大自然の驚異にさらされ苦しむ人類を憐れに思った。

 そして少しでも多くの人類が生き残れるようにと思って縄跳びを教えたのだ。

 結果、人類は縄跳びというチート能力を得ることによって生き延びることが出来たという。

 しかし、数億年後には縄跳びというチート能力を使って殺人や破壊活動といった悪さをするようになってしまったのだ。

 そこでデビルフレイムは自らの失敗に気がつき、人類を抹殺することを考えた。


 もう一度デビルフレイムは差し出された手を見つめた。

 

 あの時、名和のような人間と出会っていればこんな争いにはならなかった。

 

 失われた命を元に戻すことはできない。だが過去の過ちをただし、未来に進むことはできる。


 ならば今なすべきことはただ一つだろう。


 「今度の週末に、予が一緒にホーマックへ行ってやろう」


 こうして二人は縄跳びを新調するためにホーマックへと出かけることになった。


 全ての命に祝福あれ!

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